図書館司書の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
図書館というと、地域の公立図書館を思い浮かべる方も多いと思います。
そこで働いている図書館司書は、公務員なのだから安定して高収入の職業と思われるかもしれません。
落ち着いて知的なイメージのある図書館司書ですが、実際の年収はどれくらいになるのでしょうか?
図書館司書として働くには、勤務先も公立図書館だけでなく、民間が運営する図書館や学校の図書室、企業の図書室など多岐にわたり、雇用形態にもあらゆる形があるため、年収もその形態に応じて様々です。
図書館司書の平均年収は300万円前後が相場
図書館司書は、雇用形態に応じて年収にも大きな差が出てくるため、平均年収200万円~400万円程度と幅があります。
正規職員の場合は、300万円~400万円と、ある程度の年収が見込めます。
しかし、嘱託職員・契約職員・臨時職員・パートなど、非正規雇用の場合は時給も低く、ボーナスや各種手当などがなかったり、昇給もほとんど望めなかったりするため、年収が低くおさえられる傾向にあります。
図書館司書の年収・給料の構成要素
図書館司書資格というと、文部科学省が所管となる国家資格です。
資格を取得するにも大学や短大に通って決まった単位を修了しなければならず、お金と時間も必要になるため、資格手当のようなものが大きいのでは?と期待されるかもしれません。
しかし、地方公務員としては図書館司書は一般事務としての扱いを受けることが多く、給与も同水準となります。
基本給はどれくらい?
地方公務員として公立図書館に勤務する場合は、一般事務職の地方公務員と同水準の給与を見込むことができます。
昇給もあり、長く勤めることによって、給与も上がっていきます。
そのため、安定した雇用と年収が期待できます。
民間企業では残業によって月収を増やしたりということもありますが、図書館は開館時間が決まっているため、時間外勤務手当による年収の増減はあまりないでしょう。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
地方公務員の場合は、年2回×約2ヶ月分と考えると、新卒でも年70万円以上になると考えられます。
民間の企業の場合は会社の業績によって大きくボーナスの査定も変わってきますが、公務員は安定したボーナスが期待できると言えましょう。
一般の景気動向などを考慮する場合もあるようですが、民間企業においての業績によるボーナスの増減ほどは変化がないでしょう。
各種手当はどういったものがある?
図書館司書資格は、採用において必須であるとは限りません。
そのため、資格によって手当が増えるといったことはあまりなく、地方公務員の場合は一般的な地方公務員としての住居手当、扶養手当、通勤手当など、諸手当のみとなるでしょう。
契約社員など、非正規雇用の図書館スタッフの場合は、時給にして900円~1,000円程度のところが多いのですが、司書資格があると時給が30円程度上がるようです。
月給の場合は、15万円~18万円と幅があり、資格により5,000円程度のアップを見込むことができます。
図書館司書の年収を新卒や雇用形態別に見る
ここでは、さまざまな雇用形態のある図書館司書の年収を、新卒や雇用形態別に見ていきます。
新卒の場合の図書館司書の年収
新卒で地方公務員として採用された場合、15万円~18万円の月収を見込むことができます。
2019年度の静岡県清水町の募集要項では、大学卒:180,700円、短大卒:161,300円、高校卒:148,600円となっています。
ボーナスや各種手当もあるため、年収は300万円前後になるでしょう。
社会人が転職する場合の図書館司書の年収
転職して公務員採用試験に合格した場合は、それまでの経験や年齢などが考慮されます。
一般行政職として基本給が定められているため、平均給与は40万円前後になります。
勤務先にもよりますが、年収500万円~600万円を目指せるかもしれません。
しかし、図書館司書は採用枠が非常に少なく、募集がない年も多いのです。
社会人経験者が図書館司書に転職するというのは、厳しい場合が多いでしょう。
非正規雇用の場合の図書館司書の年収
嘱託職員・契約職員・臨時職員・パートなど、非正規雇用の場合、勤務先にもよりますが、時給は1,000円程度のところが多いようです。
非正規雇用であるためボーナスや各種手当もつかない場合が多く、年収は200万円前後と言われています。
非正規雇用ですので、雇用も不安定です。
勤続年数を重ねることができたとしても、昇給もほぼないという場合が多いため、年齢を重ねても年収はそのまま上がらず・・・ということになります。
新しく入ってきた人と経験のある人の給与がほとんど変わらない、ということもあるようです。
学校の図書館に採用された場合の図書館司書の年収
小・中・高等学校の学校司書は、専門的な知識・経験を有する学校図書館担当の事務職員を指し、学校に制度上の設置根拠はありません。
また、制度上の資格の定めもなく、それぞれの地方公共団体の実情に応じて司書資格や教諭免許状、実務経験などの募集要項が決められ、学校司書が募集されます。
こちらも、給与としては一般事務と同水準となり、非常勤での採用となる場合が多いようです。
そのため、年収は300万円未満となるでしょう。
学校司書のメリットとしては、一般の図書館が土日開館しているため司書も土日出勤が基本(シフト制)となりますが、学校の場合は土日祝が休暇となることです。
また、一人で学校図書館を担当し、学生が来館する時間も限られているため、一人時間が多くあります。
一人で過ごすのが好きな方には向いているでしょう。
一方で、同じ環境の仲間が身近にいないため悩みなどを共有できる相手がいない、といった面もあります。
図書館司書は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
地方公務員として勤めた場合、最高年収は700万円程度まで目指すことができるでしょう。
しかしその場合、図書館の企画や運営などの経営面での業務が増えたり、勤務先がずっと図書館というわけではなかったり、一般的なイメージとしての図書館司書の業務においての年収とは言えないかもしれません。
図書館司書はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
勤務先や雇用形態によって大きく変わってくる図書館司書の年収ですが、それではどのような勤務先だと高い年収を目指せるのでしょうか?
県立図書館で働く場合の年収
前述の通り、市区町村が運営する図書館の場合、短大卒の給与は月収16万円程度となっていますが、茨城県立図書館(2019年度)の場合は短大卒でも177,232万円となっており、市町立よりも県立図書館の方がやや高い年収を見込むことができます。
学校図書館で司書教諭として働く場合の年収
小・中・高等学校の司書教諭は、司書教諭の講座を修了していなくてはなりません。
司書教諭となるには、教諭の免許状を有する者、もしくは大学に2年以上在学して学校経営と学校図書館などの決められた科目・単位を修得した者と定められています。
司書教諭は学校図書館法により、12学級以上の学校には必ず置かなければなりません。
一般的な教師としての採用になるので、給与も同程度ということになります。
一般的な教育職の平均月収は40万円であり、勤続年数でも大きく変わってきますが、年収にすると600万円前後となります。
国立国会図書館で働く場合の年収
国立国会図書館は、東京に2館、京都に1館あります。
そのため、勤務地の選択肢が限られています。
そして、国家公務員であるため、東京~京都間の異動・転勤があります。
2018年度の初任給は、資料保存専門職員、および一般職の場合、180,700円(地域手当加算後は、216,840円)となり、地方公務員と同水準です。
しかし、総合職の場合は、185,200円(地域手当加算後は、222,240円)となります。
資料保存専門職員は、各種図書館資料の保存修復業務等を行います。
総合職および一般職は、調査業務、司書業務、一般事務等となっています。
国家公務員ですので、年収や昇給もその身分に応じた水準となるでしょう。
年収が高くなる可能性のある条件は?
年収を高めるには、どういった条件やスキルが必要になるでしょうか?
正規雇用を目指す
やはり、非正規雇用の給与はなかなか上がらないのが現状です。
どれだけスキルを上げて現場では評価されたとしても、雇用先の待遇は変わらないことが多いのです。
非正規雇用から正社員への登用も難しい場合が多いでしょう。
となると、正規雇用での採用を目指すのが一番です。
年齢制限が設けられている場合もありますので、図書館司書になることを目指すのならば、最初から正規雇用を狙いましょう。
図書館司書資格は必要なの?
図書館司書資格は、司書として採用されるのに必ずしも必要ではありません。
しかし図書館司書資格を保有していれば、非正規雇用の場合でも多少給与が上がる可能性があります。
また、採用の際に、ある人とない人だったら、ある人のほうが有利になることは間違いありません。
そして、勤務する上で、図書館司書資格を取る際に身につけた知識は、きっと役立つことでしょう。
認定司書
認定司書とは、一定の基準に達したと日本図書館協会が認定する司書のことを指します。
認定司書制度は、「司書全体の研鑽努力を奨励すると共に、司書職のキャリア形成や社会的認知の向上に資すること」を狙いとして2010年度に開始された制度です。
2018年4月までに、全国で150名の認定司書が誕生しています。
まだ歴史の浅い制度であるため、これにより手当が増えるなどといった給与面でのメリットは今のところないようなのですが、将来的に管理職としてのキャリアを見込むことができるようになることが考えらえます。
レファレンスライブラリアンを目指す
レファレンス(利用者への調べもののお手伝い)は一般的な図書館司書の業務の一つですが、レファレンスライブラリアンはその能力が特に優れた司書のことです。
得意分野、不得意分野関係なく、利用者の質問に応えてどこまでも追求する姿勢が必要となります。
システムライブラリアンを目指す
図書館の業務も、資料の登録や情報検索などコンピュータ化が進んでいます。
システムライブラリアンは、図書館情報システムに特化した司書です。
認定制度は特になく、システム関連分野の自主学習が必要となります。
基本情報技術者、マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)などの資格を取ると良いでしょう。
専門性を高める
「サブジェクトライブラリアン」は、特定の主題について専門知識を持った司書のことです。
特定の専門分野において深く知識や経験を積むことにより、人の追随を許さないほどの専門性を身につけ、論文などを発表するなどすると、他の図書館から講演の依頼がくることもあるかもしれません。
「メディカルライブラリアン」は、その中でも医療に特化した知識を持った司書です。
医学部のある大学図書館や、製薬会社の図書室などに在籍しています。
日本医学図書館協会が、ヘルスサイエンス情報専門員という認定制度を実施しています。
高度な知識と経験が必要になる司書です。
まとめ
図書館司書は本好きにとって憧れの職業ですが、その年収は他の職種と比べて低いと言わざるを得ません。
ただ憧れるだけで職に就いても、非正規雇用ではあまりの年収の低さに挫折して図書館司書を辞めていく、という人も少なくありません。
そうならないためにも、もし図書館司書を目指すのであれば、最初から正規雇用を目指しましょう。
また、公務員としての採用枠は非常に少なく、奇跡的に採用されたとしても、それほど高い年収とは言えないかもしれません。
その中でキャリアを重ねて年収をアップさせていくためには、専門性を高めたり、図書館の運営、経営、社会との関わり、広報などに力を入れていく必要があります。
図書館がより多くの人に利用されるようになるための活動です。
そうした方面に力を入れることにより、自らの図書館内でのポジションも変わっていき、年収も上がっていくでしょう。
まだまだ給与面では待遇の低い図書館司書ですが、専門性が高く、やりがいのある仕事です。
待遇の改善が望まれます。
最終更新日:2019年9月18日