漁師の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
「将来、自分も漁師を目指したい!」
「脱サラして漁師の仕事に転職したいと考えている」
海の男・漁師の職業は、かっこ良くて憧れますよね。
しかし、仕事を選択する時に気になることの一つは給料や年収ではないでしょうか。
漁師っていくら稼げるものなのか?家族を養えるくらいのお給料がきちんと貰えるのか?
漁師の給料は一般人からするとイメージしづらいものですよね。
今回は漁師さんの年収を細かく解説していきます。
漁師の平均年収は約210万円~800万円ほどが相場
漁師の年収は、漁業形態によって大きく差があることが特徴です。
漁業形態は大まかに分類すると、沿岸漁業・沖合漁業・遠洋漁業の3種類に分けられます。
近場の海へ出航し、日帰りできる範囲で漁を行う「沿岸漁業」平均年収は約230万円~となります。
沿岸漁業では、漁業だけでは儲けが少ないため、漁に出ていない合間に農業や民宿・ホテル経営など兼業をしているところも多いのが特徴です。
また同じく近場の海に出航し2日~3日又は1ヶ月以内で帰れる範囲で漁を行う「沖合漁業」は「沿岸漁業」より若干高めの約400万円~。
そして、世界の海へ出航していき、拘束時間も長く危険を伴う過酷な遠洋漁業は、漁師の仕事の中でもトップクラスの平均600万円~800万円となっています。
しかし、漁業は自然を相手にしている商売で、その年の自然災害や漁獲量、取り扱う水産物の種類などによって年収が左右される為、この数字はあくまでも目安と考えておきましょう。
四方八方を海に囲まれて水産資源が豊かな日本は、漁業の種類がなんと数百種類も存在しています。
同じ漁業形態であったとしても、取り扱う漁業種により年収にはかなりの差があります。
選ぶ漁業形態や漁業種によって「儲かる」「儲からない」がピンキリなのが漁師のお仕事の特徴です。
漁師の年収・給料の構成要素
陸地で普通に働いている企業勤務の会社員と違い、漁師のお給料の内訳もまた特殊なものです。
多くの場合は、
この2パターンが圧倒的な数を占めています。
今から60年ほど前の一昔前では、「完全歩合制」のみをとっていることが多かったようです。
しかし、賃金の最低保障額を定めなければいけなくなったことや、若い船員たちのやる気をアップさせるために、「歩合制」+「固定給」の形を取るところが増えています。
例として、沿岸漁業の内訳の一例を挙げましょう。
沿岸漁業は、ほとんどが個人経営となります。
企業と違って個人経営では、給与額や待遇などは事業主の取り決めによって様々なので一括りにはできませんが、多くの場合は「固定給」+「歩合制」をベースとしており、それに付随する形で「賞与」「各種手当」の構成になっていることが多いです。
基本給・能力給などはどうなっているの?
漁業組合に入っている会社や大型船で働く場合は、月の基本給は約20万円~としているところが多いです。
一般的な企業の初任給と大きな差はありません。
しかし、個人経営の船で働く場合はその限りではなく、基本給を月25万円~と高めに設定しているところもあれば、約17万円~と設定しているところもあります。
本人の頑張りや一定の水揚げ量があればその分「歩合制」に反映され、「歩合制」が「基本給」を大きく上回るケースなどもあるようです。
また、昨年度の実績などを「能力給」として設けているところもあります。
しかし、乗る船やその年や時期の漁獲漁により変動の影響を受けるので、必ず基本給以上の「歩合制」が貰えるというわけでもありません。
賞与(ボーナス)や各種手当ては?
どこで働くかによってボーナスの支給がある場合とない場合に分かれます。
大型船や大きな会社では、賞与は年1回〜2回としているところもありますが、一年を通して漁獲高が少ない年はボーナスを行わないところもあります。
船員への思いやりが強い個人事業主のところは、漁師の仕事にやりがいが保てるようにと「水揚げ奨励金」として約10万円ほど出しているところもあります。
各種手当はどういったものがある?
各種手当としては、「出漁手当」「食料手当」「住宅手当」などが挙げられます。
漁師は早朝や夜中に漁に出る必要があることや、そこの地域の漁村に馴染むためにも漁港の近くに住むことが望まれるため、住宅手当や食料手当が出るケースが多いようです。
また、独身寮や家族寮を完備してくれているケースもあります。
漁師の雇用形態別の年収を見る
漁師の仕事は、学歴や年齢など関係なく、「漁業形態」「経験」「勤続年数」「資格」により年収に大きな違いが出てきます。
遠洋漁業・新人クラス(1年~2年)の船員の年収
船に乗り始めてまだ1年クラスで、且つ資格も持っていない新人の場合は、年収は約350万円~400万円となります。
1年以上経ち「員級A」に昇格すれば、約450万円~500万円に昇給していきます。
遠洋漁業・1等航海士の場合の漁師の年収
遠洋漁業で海技士の資格を取得した航海士となると、年収は約570万円~690万円になります。
海技士の等級が高くなるほど大きな船に乗ることができ漁獲高も増え、年収アップが見込めます。
沿岸漁業・漁業組合の乗組員として働く場合の漁師の年収
漁業組合に入って沿岸漁業を行う漁師の場合、年収は約300万円となり、決して高額とは言えません。
近海で漁を行うために体力的には楽な部類には入りますが、その分規模が小さくなるため年収は低くなる傾向にあります。
しかし、年功序列で給料がアップすることや、安定したお給料が毎月見込めることはメリットと言えます。
沿岸漁業でアルバイトとして働く場合の漁師の給料
沿岸漁業の中では、養殖・定置網漁・釣り漁などはアルバイトを定期的に募集しているところもあります。
アルバイトの日当は約9,000円前後。
休日や稼働時間などは天候や海の状態により変動することが多いです。
まずは見習いとしてアルバイトから働き、その後正式な船員に上がれるパターンをとっている場合もあります。
漁師は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
漁業形態・漁業種の違い・漁獲高によって大きな差が出る漁師の年収。
漁師さんの中には、1000万円~1500万円も稼ぐ強者たちも存在します。
その多くが海外の遠くの海で漁をする遠洋漁業の、カニ漁・マグロ漁・カツオ漁です。
しかし年収が高い分仕事内容は大変過酷なもので、一度出航すれば一年の半分以上を海の上で過ごし、家に帰れることもできないので家族にも思うように会えません。
急な悪天候に見舞われ荒波にさらされるため、常に危険と隣り合わせとなります。
将来的に船の責任者まで上り詰めれば、年収1500万円以上も可能です。
その次に漁師の世界で高い年収が見込めるのがサンゴ漁です。
中国においてサンゴは宝石や装飾品として重宝されており、高品質なサンゴを獲った漁師の中には年収1000万円以上を稼ぐ人も存在しています。
ただし、高品質で高値で売れるようなサンゴは誰でも簡単に獲れるものではありません。
海の中に落とした指輪を探し出すくらい難易度の高いものと言えるでしょう。
知識や経験が必須なことはもちろん、大穴狙いの一攫千金要素もあるので、運や覚悟も必要になります。
漁師はどんな勤務先だと年収が高くなるか?
漁師になって高収入を目指したい場合は3通りの道があります。
- 独立して自分の船を持つこと
- 大型船に乗って世界の海へ漁をしに出る遠洋漁業の船長を目指すこと
- 遠洋漁業の乗組員として働く
肉体的にもハードですが、漁師で年収を上げたいとなるとやはり遠洋漁業に挑戦するのが一番です。
遠洋漁業の中でも高年収の業種の内訳を紹介します。
独立して自営業として働く場合の年収
雇用から独立して自分の船を持ち自営業として漁師をする場合の年収は約600万円以上を目指すことができます。
自営業で総トン数20トン未満の小さい船の漁師を目指す場合は、自前の漁船・無線・魚群探知機などを準備するための費用の準備や、小型船舶操縦士免許・海上特殊無線技士免許などの資格取得も必須となります。
漁をするための漁業権を得るには、漁業組合に入り他の組合員に漁業権取得を認めてもらう必要があるので、地域での人脈作りは大切にしていかなければなりません。
しかし、昨今の漁師不足の為に行政や漁業組合が新規就業者をサポートする体制も整ってきているので、独立を目指す道は難しくないでしょう。
遠洋漁業の船長や漁労長として働く場合の年収
漁師の中でも高い年収が見込める遠洋漁業の船長・漁労長クラスとなれば、年収1000万円以上を手にすることも夢ではありません。
しかし、数年でなれるわけではなく、最低でも10~15年間は甲板部や機関部の乗組員として経験を積む必要があります。
それに加え、航海士・機関士などの資格を取る必要があります。
遠洋漁業マグロ漁船の乗組員として働く場合の年収
キツイけど儲かることでよく知られているマグロ漁船の乗組員の平均年収は約600万円~800万円となります。
日本から離れた海に行きマグロを取りに行くため、一度海に出れば半年~1年程は帰ってこられません。
そのため、通常の家に帰る生活をしていればかかるような食費や光熱費などはほとんどかからないため、独身者の場合は給料の使い道がなくお金を沢山貯めることができるようです。
遠洋漁業カニ漁船の乗組員として働く場合の年収
日本近海で行うカニ漁船の乗組員として働く場合の年収は約1200万円~1500万円となり、遠洋漁業の中でもかなり高水準になります。
カニ漁は期間が限られているため、漁解禁の数ヶ月の間でこの年収を稼ぎだします。
期間が限られている分、一度漁に出ると1日中ほとんど休むことなく動き続けるのでやる気と体力が必要で、非常に過酷なものになります。
これから漁師になる人へのアドバイス
日の出と共に動き出し、エサや仕掛けの準備。
海に出て漁を終えた後は、魚の水揚げや機材のメンテナンス・点検を行い、再び明日の漁の準備を始める。
忍耐が必要なとてもハードなお仕事です。
漁師を目指す上で大切なことは、何よりも「体力」。
そして次に重要なのが「船酔いしない」こと。
1年も経たず去っていく人の多くは「船酔い」が原因だそうです。
完全に船酔いしないようにすることは体質などもありベテラン漁師でも難しいようですが、慣れるように努力することが必要です。
漁師を目指す若者が10人入ってきても1人生き残れるかどうかという厳しい世界。
海の上で過ごすことが多い漁師は、「魚がどう動くか?」「波のうねりや潮の流れ」を読み取る力も鍛えなければいけません。
海という大自然を相手にするので常に危険と隣り合わせです。
一歩間違えれば事故などのアクシデントが起こる危険性もあるので、自分の身は自分で守る必要もあります。
慣れるまではキツいですが、その分、毎日が刺激的でエキサイティング。
海の上から見る水平線を上る朝日や満点の星空などの素晴らしい景色。
大漁を目の前にした時の感動は一度体験すると病みつきになる、と漁師さんの多くが皆口を揃えて言います。
寿司や刺身をはじめとする日本の食文化を支えてくれているのは、自らの命を張って漁をしてくれている漁師さんたちがいてこそ。
これまでは親族や家族代々で引き継ぐ形が多かった漁師の仕事も、少子高齢化社会・地方の過疎化が進んだ現在では引き継いでいく若者達が確実に減ってきており、後継者不足に悩まされています。
漁業就業者を確保するため各地方の漁業組合では、「脱サラして漁師になりたい」など地方外にいる漁業就職希望者に対して『相談会』や『研修』など様々なサポート体制を強化し始めているところも増えました。
また、若い乗組員たちがモチベーションを上げられるように、給与面や待遇面などを工夫してくれたりと、船員思いの船長さん・社長たちも多いです。
閉鎖的だった昔と比べると、漁師になれるきっかけの間口が広まってきている為、自分のやる気次第で夢の漁師の仕事に就ける可能性は高くなってきています。
気になる方は、最初の第一歩として自分が希望する地方や、漁業形態・漁業種を調べてみてください。
相談会や研修などが行われているなら、一度参加してみることをおすすめします。
さいごに
漁師という職業は、海や魚などの自然を相手にする仕事。
漁獲量や漁師さんの年収は環境や場所によって変動のふり幅が大きいので、決して安定しているとは言えません。
体力勝負でキツい仕事ですが、頑張った結果が目に見えて分かりやすく、大きなやりがいを感じられる仕事でもあります。
「海が好き」「釣りが好き」という人にとっては、まさに天職と言えるお仕事でしょう。
今回の記事が、漁師の仕事に就職・転職を考えている方の参考になりましたら幸いです。
最終更新日:2020年2月19日