臨床心理士の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
人の心と向き合う仕事、臨床心理士。
臨床心理士はどのくらい稼げる仕事なのか興味がありませんか?
割と非常勤が多いとは聞くけど、生活は不自由なくできるのか、大学院まで行くからにはそれ相応に貰えるのか、など、気になりますよね。
今回は臨床心理士の年収などお給料事情について紹介いたします!
臨床心理士の平均年収は300万円~400万円が相場
臨床心理士の平均年収は300万円~400万円くらいが相場であると言われています。
ただし、臨床心理士の年収は、個人によって非常に幅があります。
というのも、非常勤が多く、結婚後は週に2日~3日程度働いているという臨床心理士が割と多いことが一つの理由として挙げられます。
臨床心理士の平均年収を出すときには、そのような常勤で働いていない臨床心理士の年収も含まれての計算になりますので、どうしても低く出てしまいがちです。
また、臨床心理士が活躍する分野は非常に多岐にわたります。
例えば大学教授をしている臨床心理士もいますが、そういう人はやはり年収が高くなります。
一般的には教育分野の臨床心理士のほうが年収は高い傾向にあり、福祉分野の臨床心理士は年収が低くなりがちだったりします。
非常勤勤務が多いこと、分野が多岐にわたることから、平均年収は300万円~400万円程度ですが、実際もっと稼いでいる人もいますし、逆にそれ程さえ貰えていない人もいるのが現状です。
臨床心理士の年収・給料の構成要素
臨床心理士の年収は、「基本給」「能力給」「歩合」「ボーナス」の構成になっている場合が多くあります。
専門知識や資格を必要とする職業ですので、基本給だけでなく、大概は能力給などが加算されます。
そういった加算に関しては、どの分野に勤めていても通常つけてもらえるものです。
基本給・能力給・歩合はどれくらい?
臨床心理士の初任給は、常勤で月18万円~24万円の間くらいが相場となります。
そこに、資格を持っている、もしくは大学院を出ている、という理由で月に1万円程度の能力給がつくところが多いでしょう。
公立の施設であれば、大学院卒の給与体系と同等であることが多いです。
また、臨床心理士は非常勤が多く、時給制や歩合制となっていることがよくあります。
時給制の場合1,200円~5,000円と非常に幅があります。
臨床心理士は薬剤師や医師とは違い、目安となる給与が決まっていません。
そのため、雇い主が自由に決めることができ、結果どうしても時給に幅が出てしまいます。
ただし、時給が高いということは、それなりに責任が重い仕事であったり難しい仕事であったりするのは事実です。
また、スクールカウンセラーは臨床心理士の中では時給が高いことで有名ですが、夏休みは仕事がないためお給料が出ない、時間外手当はつかない、賞与もないということで、年収にすると実はそれほどいかなかったりもします。
歩合制となるのは、私設心理相談室などです。
こういったところは、クライエントが支払うカウンセリング料から手数料などが引かれた額を受け取ることができます。
歩合制の場合は経験値などにより額が変わりますので、一概にいくらとは言えませんが、カウンセリング料の半額程度を貰えることが多いようです。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
非常勤勤務が多い臨床心理士ですので、賞与をもらっているのは常勤職である一部の臨床心理士になります。
臨床心理士で常勤職というと、大概は病院もしくは児童相談所などの公的施設となります。
つまり、一般的な大学院卒の給与体系に則った賞与が出ます。
公的施設であれば公務員の扱いですので、それなりに賞与は出してもらえるというわけです。
各種手当はどういったものがある?
一般的に貰える時間外手当や住宅手当、通勤手当などは、雇っている会社によるところがあります。
大きな病院や企業、公的機関などに勤めている臨床心理士は、他の職種と同等に手当を貰っている人が多いです。
ただ、時給制や歩合制の臨床心理士は時間外手当もつかないとか、通勤手当もつかないなんていうことが割とあります。
また、資格手当という形で加算してくれる場合もありますが、実際はそういった名称での加算はないところも多いです。
臨床心理士の年収を新卒や雇用形態別に見る
臨床心理士の年収をもう少し具体的に見ていきたいと思います。
新卒や雇用形態によってどのように違ってくるのでしょうか?
新卒の場合の臨床心理士の年収
臨床心理士で新卒の場合、公務員でない限りは非常に厳しい年収となります。
というのも、臨床心理士の資格が得られるのは、最速でも卒業した翌年の春です。
そこまでは資格取得見込みという扱いになります。
そうなると資格による手当もつきませんし、スクールカウンセラーなどですと時給が大きく下がる場合があります。
新卒の公務員の場合、年収300万円程度が相場になります。
少し高めの年収を狙うのであれば、法務技官の心理職を受験し国家公務員となることです。
国家公務員であれば新卒の年収でも400万円程度になります。
また、病院に常勤で入った場合は300万円程度が年収相場となってきます。
多くの臨床心理士は新卒の時に非常勤を掛け持ちして生活していることが多いです(例:病院勤務2日、スクールカウンセラー1日、市役所2日等)。
実際、新卒で非常勤を掛け持ちしている人でも年収250万円~300万円程度と、常勤と非常勤にそれほど差がなかったりします。
社会人が転職する場合の臨床心理士の年収(正社員)
すでに臨床の経験がある臨床心理士が正社員として転職する場合は、年収は450万円~600万円程度になります。
これは入社当初の年収ですので、更に少しずつ年収アップが見込めます。
また、正社員ですので、非常勤勤務とは違い安定して長期的に働くことが可能になります。
手当や賞与などがつくことも特徴です。
臨床心理士は経験値やスキルが重要視される仕事です。
募集に関しても、意外と新卒よりも経験者を求められる方が多いのが特徴だったりします。
求人情報を見ると分かりますが、採用条件には大抵「○年以上病院勤務経験があること」や「臨床心理士の資格を保有していること」などという文言が書かれています。
そのため、新卒の時に非常勤を掛け持ちして経験値を積んだ臨床心理士が転職して正社員になる、ということはよくある話です。
パート・アルバイトの場合の臨床心理士の年収
臨床心理士は女性の方が多く、結婚して子育てが一段落した後パートやアルバイトの形で仕事復帰する人が多いのも事実です。
パート・アルバイトの場合の年収というのは、どのくらいの日数働くかによって違ってきますので、一概には言えません。
パートやアルバイトの場合、時給制や日給制を取るところが多く、時給は1,200円~5,000円、日給は9,000円~30,000円程度までと、かなり幅があります。
パートやアルバイトの場合は週に2日程度、勤務時間は6時間~8時間が多いです。
扶養から外れないために限度額内で働いている人もいますが、中には週2日~3日のパートで年収300万円程度稼いでいる人がいたりもします。
心理検査や発達検査をとることがメインの仕事は割と低めの時給となり、カウンセリング業務や他職種へのコンサルテーション業務などが入ってくると高めの時給となる傾向にあります。
臨床心理士では、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
臨床心理士でも一部には非常に高収入の方もいます。
例えば大学院の教授ともなれば、少なくとも年収1000万円以上は見込めます。
大学院の教授になるためには、修士課程卒業後更に博士課程に進み、論文を出して実績を積む必要があります。
また、教授になるには時間と労力がかかるのも事実です。
それでも臨床心理士として高収入を目指すのであれば、一番おすすめのルートと言えるでしょう。
着実に高い年収を求めるのであれば、国家公務員となって鑑別所などに勤める方法です。
新卒の頃から年収が高い傾向にありますが、年を重ねるごとに年収が確実にアップしていきます。
最終的には年収1000万円には届く職種です。
また、自分で心理相談室を開設している人も、人気がある心理相談室であれば年収1000万円以上稼ぐことも可能です。
ただし、臨床心理士のカウンセリング業務は保健適用がありませんので、自費診療となります。
1日の間に受け持つことができるカウンセリング件数は多くても8ケースです。
かなり有名で名の知れた臨床心理士であれば1回に15,000円程度の料金設定も可能ですが、それくらいの金額が毎回出せるとなるとクライエントも限られてきます。
本を出したりテレビに出たりすることで知名度が上がりますので、知名度を上げてから私設心理相談室を開設するというのも一つの手段です。
どれも高年収ですが、やはり私設心理相談室の開設が一番高い年収を見込むことが可能です。
リスクが大きい分、当たった時の見返りも大きいのです。
臨床心理士ではどういった勤務先だと年収が高くなるか?
臨床心理士で年収が割と高めの勤務先は産業分野です。
昨今、企業が復職プログラムなどのために臨床心理士を雇っているケースが増えてきています。
仕事内容はリワークプログラムの作成や上司へのコンサル、メンタルヘルスの研修、カウンセリングなど多岐にわたりますが、非常にやりがいのある仕事です。
大きい企業ともなりますと複数名の臨床心理士を雇っていますので、先輩臨床心理士の知識を借りながら経験を積むことができる恵まれた環境になっています。
また、非常勤で働く場合に年収が高くなるのは教育分野です。
スクールカウンセラーは、臨床心理士の中でも時給が非常に高く設定されています。
仕事内容としては公立学校へ週1回6時間~8時間おもむき、生徒や保護者のカウンセリング、アセスメント、教師へのコンサル、自殺や事故が起こった場合の緊急対応など、こちらも多岐にわたります。
ほとんどの臨床心理士が3校ほど受け持ちます。
スクールカウンセラーの時給が高いのは、基本的に一人職場でその場での判断を自分でしていかなければならないことが挙げられます。
ベテランの臨床心理士が各市町村に配属されていますので相談などは可能ですが、その場にいるのは一人です。
そういったことから教育分野は年収が高めに設定されているのです。
3校掛け持ちして年収は400万円程度です。
夏休みなど長期休業中はお給料が出ませんが、週に3日働いて年収400万円は、割と高い年収となるでしょう。
市役所で働く場合の年収
子育て支援の関係で、市役所が臨床心理士を雇っていることがあります。
市役所の場合、ほとんどが臨時職員として非常勤での採用になります。
給与は日給制を取るところが多く、だいたい9,000円~15,000円の間程度です。
年収にすると130万円~200万円程度となります。
仕事内容としては、乳幼児健診での発達相談業務や窓口での子育て相談、電話対応やグループ療育、他職種へのコンサルも含まれてきます。
市によっては乳幼児の巡回相談や発達検査なども業務に含まれる場合があります。
市役所は、相談に来た人を適切なところと繋ぐことが仕事の中心となりますので、高いアセスメント力が求められます。
病院で働く場合の年収
病院の場合、年収に非常に大きな幅があります。
常勤募集も割とあるため、臨床心理士の中で最も多くの人が勤めているのが分野が医療分野でしょう。
病院と一口に言っても、様々な病院があります。
個人経営のメンタルクリニック、精神科単科の病院、総合病院、リハビリセンターのような病院などがよく募集を出しています。
年収もそれぞれ大きく違ってきますが、公立ですと公務員と同じ扱いになりますので、長く正規雇用で勤めていれば最終的に年収800万円以上にはなります。
非常勤ですと時給制や日給制が多く、その場合は年収は100万円~500万円とばらつきが出ます。
病院はどういう病院かによって仕事内容が変わってきます。
基本的にはカウンセリング、心理検査、アセスメントなどがメインとなります。
ただし、精神科単科病院ですと、デイケアのグループカウンセリングなども仕事内容に入ってきます。
リハビリセンターのような病院では心理検査や発達検査がメインとなり、カウンセリングはやらないところもあります。
総合病院となると、身体疾患により抑うつとなった人のカウンセリングやアセスメント、小児科での不登校相談、緩和ケア、発達障害児の子育て相談、グループカウンセリング、他職種へのコンサル等、仕事内容が幅広くなります。
刑務所で働く場合の年収
少年院や刑務所などでも臨床心理士の活躍の場があります。
年収としては、常勤ですと新卒でも400万円以上。
これは国家公務員の試験に合格し、公務員としての採用の場合です。
非常勤の場合は週に2日、1日2時間程度と短い仕事時間となる場合が多いようです。
そうなると年収としては60万円程度になります。
仕事内容としては、薬物依存の方への心理教育やグループカウンセリングのファシリテーター、他職種へのコンサル、受刑者へのカウンセリングなどです。
児童養護施設で働く場合の年収
事情があって親と一緒に生活することができない子どもたちの住む児童養護施設は、大抵1名程度は心理担当職員として臨床心理士を雇っています。
児童養護施設で働く場合の年収は、新卒で300万円半ば程度のところが多いです。
非常勤で時給制や日給制をとっているところもあり、時給ですと1,200円~1,500円程度、日給ですと8,000円~13,000円程度が相場です。
仕事内容としては、入所している子どもたちへのカウンセリングやグループカウンセリング、他職種へのコンサルが主ですが、子ども達と遊ぶことも仕事の内です。
施設によっては保育士が不足していることもあり、保育士の業務も兼ねて心理職として働く場合もあります。
その場合は食事作りや寝かしつけなど子育ても仕事の一環となってきます。
都会と田舎で年収に差が出る
臨床心理士の年収は、他の職種同様、都会へ行くほど高くなる傾向にあります。
同じような業務内容であっても、都会では日給15,000円でも田舎では日給7,200円なんていう倍近く差が出るような職もあります。
また都会の方が臨床心理士の募集が多いのも特徴です。
高い年収を望める仕事を選びたいのであれば、都会での就職が有利です。
ただし、臨床心理士は普段から研修に参加したりすることが義務付けられています。
研修は大概都会でありますので、都会に住んでいる臨床心理士というのは非常に多いです。
臨床心理士の分布を見ても、東京や大阪など大都市には非常に多くの臨床心理士がいますが、田舎へ行くほど数が減り2桁程度しか臨床心理士がいない場所もあったりします。
つまり、都会のほうが職も多く年収も高いものが望めますが、その代わり臨床心理士が沢山いるため採用が激戦になることが多いです。
経験値やスキルが高いほど採用されやすい職種ですので、新卒の人は割と就職難となることもあったりするのです。
一方で、田舎の方は採用も少ないですが、臨床心理士の数自体も少ないため、それほど激戦にはなりません。
年収は都会に比べると下がりますし、非常勤職が多いので掛け持ちとなりますが、生活に困るほどではないのが現状です。
ただし、田舎の方へ行くと、臨床心理士の採用は初めてというところも多いです。
また臨床心理士を沢山雇うほど予算がないところも多く、大抵は一名のみの採用だったりもします。
そうなると、一人職場で先輩臨床心理士に相談などができないという状況になりがちです。
都会のほうが年収は高いですが、都会も田舎も一長一短です。
自分にとってどちらがメリットがあるか充分に考えて勤務地を選ぶことをおすすめします。
臨床心理士でも別の仕事をする人も多い
実は臨床心理士の資格を取っても、別の仕事をしている人も多かったりします。
一番多いのは教員や施設職員です。
臨床心理士の常勤職が非常に少ないことも一つの原因です。
ただ、そもそも別の仕事をするつもりで、臨床心理士の知識を得るために資格も取る人もいます。
どういった分野においても臨床心理士の知識というのは役に立ちます。
教育分野や福祉分野は当然ですが、例えば営業職なんかも臨床心理士の知識というのが役に立つ仕事です。
人と接することがある仕事であれば、臨床心理学が使える部分が少なからずあるものなのです。
臨床心理士になりたいけど不安定な年収が気がかりという人は、臨床心理士の資格が生かせるような別の職種に就くこともおすすめです。
そうすれば安定した収入を得ることが可能になります。
最後に
臨床心理士は、大学院まで出て取得する資格にしては年収が低いということで有名です。
臨時職員で2年間だけの採用なども多く、不安定な生活を強いられることもあります。
とは言え、臨床心理士の中には正規雇用で安定した年収を得ながら生活している人もいます。
かなりの高年収の臨床心理士も一握りですが存在するのも事実です。
必ず高年収が得られる仕事ではありませんが、臨床心理士としての自分を磨いていくことが直接的に年収に結びつく仕事でもあります。
またそうすることで、心的支援をより適切に行うことができるようになり、多くのクライエントの力強いサポート役ともなることができます。
臨床心理士になる人は、年収よりもやりがいを大切にして仕事を選びます。
自分がどういった臨床をしたいのか、どういったクライエントと関わりたいのか、どういう臨床心理士になりたいのか、そういったことを第一に考えて働く場を探しています。
年収は高いに越したことはありません。
臨床心理士を維持するために行かなければならない研修はどれも高額です。
勉強のために読みたい本も割と高額なものが多くなります。
しかし、年収以上に大切なのが仕事内容なのです。
同じ資格を持つ臨床心理士同士でも、やはり得意分野がそれぞれ違います。
カウンセリング業務が得意な人もいれば、心理検査が得意な人もいます。
また他職種とのやりとりが楽しい人もいれば、そういったことがストレスに感じられる人もいます。
自分が臨床心理士の仕事の中でどういった分野を得意としているのか、どういったことが楽しいと感じられるのかをよく考えて、働く分野を選ぶ必要があります。
その上で、年収を考えることが大切なのです。
精神力を使う仕事ですので、向かないことをし続けるのは厳しいです。
ぜひ自分に合う臨床は何かを考えた上で、年収に目を向けるようにしてください。
最終更新日:2019年10月15日