農家の年収を徹底解説|業種別の年収・ボーナスなどを紹介します
農業という仕事には様々な働き方があります。
自分一人で働いたり、家族と一緒に働いたりする人もいれば、個人事業主や法人として人を雇ったり、会社員として働く人もいます。
私自身は、4年前から農業生産法人で会社員として働いています。
業務を通じて様々な人とお話をする機会があるのですが、働き方は千差万別で、逆に言うと自分に合った働き方ができることが農家の魅力でもあると思います。
例として、年間を通して業務量を平均的にして働く農家もいれば、1年間の内の限定された期間で多く働き、それ以外の期間をゆったりと過ごす農家もいます。
今回の記事では、皆さんが知っているようで知らない、農家のお金事情について解説していきたいと思います。
農家の平均年収は500万円が相場
農林水産省のデータのよると、平成30年の販売農家総所得の平均が511万円となっています。
販売農家とは、経営耕地面積が30a以上又は農産物販売金額が50万円以上の農家のことです。
分かりやすく言うと、農作物を栽培する土地の面積が30a(3000㎡)以上で、その農作物で50万円以上の売り上げがある農家です。
しかし、この販売農家の中にはいわゆる兼業農家の方も含まれているので、本業で農業をやっている方にデータを限定すると、平成30年で総所得が801万円になります。
一方で会社員として働く場合は、普通のサラリーマンと同じように毎月給料を貰うことになります。
農業求人サイト「農家のおしごとナビ」に掲載されている求人情報に目を通すと、月給20万円〜というのが相場だと感じました。
しかし、農家の仕事は生き物を扱うため土日祝日が休みということはあまりなく、週休1日や4週6休の所も多くあります。
農家の年収・給料の構成要素
農家の収入は、農作物を栽培しそれを販売することが主な収入源となるのですが、それ以外にも地方自治体から受け取ることのできる様々な補助金が存在します。
農家の年収はどうやって構成されている?
多くの農家にとって主な収入となる農産物の生産額は、その農家によって大きく異なります。
収入を増やそうとすると様々な設備や機械を購入していくことになるのですが、その時に地方自治体から受け取ることのできる様々な補助金があります。
農業次世代人材投資資金はその代表的な補助金です。
これは45歳未満の方が一定の研修を受けて就農する場合、自治体を通じて最長5年間にわたって年間最大150万円受け取ることができるものです。
農業を始めて間もない時期は農作物を栽培する技術が未熟なことも多くあり、安定的な収入を得ることが難しくなる場合があります。
そんな時、5年間で最大750万円を受け取ることができる農業次世代人材投資資金は、就農したばかりの農家にとっては心強い補助金となります。
その他にも、経営体育成支援事業という制度があります。
これは、地域や農地の発展を目指す農業法人などの団体に、ビニールハウスなどの補修や田畑などの改良・造成に掛かる費用の1/2(最大4000万円)、農業機械の導入に掛かる費用の1/3を補助する制度です。
農業を本格的に始めようとすると、とにかくお金がかかります。
設備、機械を導入しなくても農産物を栽培することができますが、農作業の体への負担を減らしたり作業効率を高めようとする場合は、設備、機械を導入することになります。
ボーナスはある?
会社員として働く私の経験から話すと、ボーナスはあります。
ただやはり農業は天候に左右されることが多いため、業績が落ちることもあり、ボーナスはその業績によるということもあると思います。
また、業績と共に個人の能力などが反映されてその額は変動します。
その点で農業は実力主義と言えると思います。
その他の収入は?
農家で土地を持っている方は、他の農家に土地を貸すことで得る賃借料も収入になります。
その土地の立地条件によって賃借料は変わりますが、不労収入を得られるという大きなメリットがあります。
最近では耕作放棄地が太陽光パネルで埋め尽くされている光景もよく目にするようになりました。
農家の年収を業種別に見る
一口に農家と言っても、経営形態によってその年収は大きく異なります。
同じ農作物を作っていても、その販売先によって年収には差が出てきますし、同じ年収でもそれにかけるコストが違うと手元に残るお金も違ってきます。
また、農業は出費がとても大きく、年収の半分が生産コストとしてなくなってしまうことも珍しくありません。
年収だけでは見えないところも多いのですが、一つの判断基準としていただきたいです。
今回は、農家を大きく4つに分類して年収とそれに関する解説を書いていこうと思います。
米農家の場合の年収
米農家は年収が高いとイメージを持つ方もいると思いますが、実際の平均年収は200万円~300万円程度と言われています。
日本人の平均年収が420万円前後なので、それに比べるとかなり低くなっているのが現状です。
また米農家になるには数種類の大型機械を購入しなくてはいけないので、1から始めるにはとてもハードルが高いです。
ただ、自分で作ったお米をブランディングして付加価値をつけていくことで利益を得ることは可能だと思います。
日本の米は甘くて美味しいと世界中で評価されているため、海外の顧客に販売するルートを確立できれば、利益を多く上げことも夢ではありません。
露地野菜農家の場合の年収
露地野菜農家の平均年収は約600万円程度で、米農家と比べるととても高く感じます。
しかし米農家は、栽培面積にかける時間が野菜農家と比べてとても少なくて済むので、一概に比較することはできません。
野菜は大きく施設野菜と露地野菜の2種類に分けることができます。
露地野菜とは野外の畑で栽培した野菜の事を言います。
後述する施設野菜と比べて、露地野菜は寒暖差や雨風にさらされやすいのですが、太陽の光をいっぱいに浴びた露地野菜は食べた時にその野菜が本来が持っている味を感じることができます。
露地野菜の中でもピーマンやナスのような成り物野菜と呼ばれる果菜類は、面積あたりの収入が高くなる傾向にあります。
それは大根や人参などの根菜に比べ、果菜類の方が単価が高くなるためです。
露地野菜農家も大規模な面積で経営しようとするとそれに相応した機械を購入する必要になるので、その分の出費も増えます。
施設野菜農家の場合の年収
施設野菜農家の平均年収は約1200万円で、これまで紹介した米農家、露地野菜農家と比べるとかなり高額です。
施設野菜で代表的なものはトマト、イチゴ、スイカなどです。
その他にも、ピーマン、ほうれん草など様々なものがあります。
施設野菜を露地で栽培することもできるのですが、前述したように露地での栽培には自然災害などのリスクがあるので、施設内で育てることにより、安定的に栽培できるというメリットがあります。
また、夏に施設内の気温を下げたり、冬に施設内の気温を上げたりすることができるので、年間を通して施設内で作物を栽培することができます。
ここまで聞くと、施設野菜が一番魅力的に感じるかもしれません。
しかし、施設野菜を10a栽培するためにかける労力はトマトで約1000時間、イチゴで約2000時間かかるのに対して、米農家が10aで約25時間と大きな差があります。
施設野菜は手作業で行う業務が多く、労働時間が多くなります。
また施設野菜を栽培するには、温度や水の管理をするために様々な設備を導入する必要があります。
畑作農家の場合の年収
畑作農家の平均年収は約850万円です。
畑作の主な農産物は小麦、トウモロコシなどの穀類、豆類、イモ類です。
畑作は主に、北海道などの広大な土地で大規模な機械を駆使して行われています。
施設野菜とは逆の栽培形態で、多くの業務を機械作業で完結できるため、10aあたりにかける労力も50時間程度と少なく済みます。
しかし大規模な機械を揃えるには多額の資金が必要になってくるため、新規で参入することが難しいかもしれません。
農家は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
農家は戦略次第でいくらでも高い年収を目指すことができると思います。
例えば高原野菜で有名な長野県川上村の農家の平均年収は2500万円です。
これは、川上村の高原野菜(レタスが有名)がブランドとして確立していることが大きな理由でしょう。
販売先を新たに開拓し、様々なアイデアで自分が作った野菜に付加価値を付ければ、更に可能性は広がります。
それに加えて効率的な栽培方法を確立することができれば、より少ない労力でより広大な土地で農作物を栽培し、販売することができます。
そのためには、自身の住む地域や経済状況を踏まえて適切な営農計画を立てていく必要があります。
現在の農業従事者の平均年齢は67歳と高齢化が進んでいます。
それに伴い生産人口も減少しています。
このピンチをチャンスと捉える発想と行動力も必要になるでしょう。
農業を始める方が年収を上げるには
ここまでの記事を読んで、農業に興味が出てきて自分で農業を始めたいが、分からないことが多くて不安だという方もいらっしゃると思います。
どのようにして年収を上げていったら良いか、例を紹介していきます。
会社員として農家に勤める場合
農業生産法人で就職して、経験を積んでみる
農業生産法人の数は年々増加しています。
農業の求人に特化した求人サイトも増えてきていて、日本全国様々な条件を指定して検索することができます。
インターンや農業体験を受け入れているところもあるので、そういったところで農業に触れてみるのも良いと思います。
就職する際には、せっかくなら良い条件の会社で働きたいと思うでしょう。
また就職後も、多くの方がより多くの業務を任せてもらえるような人材になるよう努力しましょう。
ここでは自分をアピールできるスキル、また適性などについて話していきます。
中型自動車免許、大型特殊免許を取得する
まず、軽トラックなどを運転する機会があると思うので、普通自動車免許を持っているとより良いと思います。
欲を言えばそれ以外にも、大きな車を運転するための中型自動車免許やトラクターなどの大きな機械を公道で運転するために大型特殊免許などがありますが、それを持っていないと採用してもらえないということはほとんどないと思います。
私自身も今の会社に就職する前は普通自動車免許しか取得していませんでしたが、就職後、必要に応じて上記の免許を取得していきました。
また、就職先によっては、業務上必要な資格を取得する際に、それに必要なコストを負担していただくこともあると思います。
コミュニケーション能力を上げる
また、農業に関わらずどんな仕事でもそうですが、一緒に働く人、自分の周りの人と円滑なコミュニケーションをとることも大切です。
農業は天候などの原因により、その都度臨機応変に行動する必要が出てきます。
マニュアルがあって無いような仕事なので、現在の作業状況について周囲の人々と密な報告、連絡、相談をし合う関係性を築いていなければ、適切で効率的な行動をとることができづらくなります。
自営業の農家の場合
栽培面積を大きくする
自営業の場合、働けば働くだけ年収が上がります。
やればやるほど見返りがあるのが、自営業で農家をする大きなメリットの一つです。
体力に自信がある方は、農作物の栽培面積を広げることで売り上げが上がるため、それに比例して年収があがります。
新しい販売先を探す
スーパーやレストラン、直売所など中間流通を経由しない様々な出荷先を確保することによって、販売単価を向上させることが期待できます。その要因として、中間流通への手数料を省略できることや、価格交渉を行うことで自分の希望する販売単価で取引ができる可能性があることなどがあげられます。
新たな販売先を確保する際には営業のスキルが必要となるので、自分が栽培する農作物の魅力を語ることができるようにしましょう。
農作物に付加価値をつける
スーパーなどで売っている農作物の説明に、”有機栽培” ”産地直送” ”糖度○%”と書かれているのを目にすることがあると思います。
購入者側からすると、糖度5%のイチゴより糖度10%のイチゴの方が買いたくなると思います。
外国で生産されたものより日本で生産されたものの方が信頼感が湧くのではないしょうか?
他の生産者がつくった農産物と何かしらの”差”をつけることが大きな強みになるでしょう。
これから農家になる人へのアドバイス
農家の年収は、年によって大きく変動する場合があります。
近年頻発に発生する自然災害によって、大切に育てた農作物がダメになってしまうこともあります。
一方で、作物が上手く作れても、他の農家も同様に上手く作れていた場合は作物の相場が下がり、収入が下がってしまうこともあります。
ただ、どんな時でも工夫し続け、常に先のことを考えていると、その時に今しなければならないことが見えてくると思います。
それが結果に繋がり、農作物を安定的に栽培することに繋がっていきます。
農業は力仕事が多く、始めたばかりの頃は体力的に疲弊することもあると思います。
しかし自然の中で働いていると気持ちが安らぎ、ふとした瞬間に自然の素晴らしさを感じることがよくあります。
晴れが続いていると雨のありがたさを意識しますし、逆もまた然りです。
自分が蒔いた種が芽を出して、日を追うごとに成長し、最後それを収穫する瞬間は何事にも代えがたい達成感があります。
普段の生活では感じることのあまりない、人間の本来持っている本能のようなものを感じることができます。
さいごに
知っているようで知らない農家の年収について解説していきました。
農家には今回説明した以外にも様々な働き方がありますし、農家の種類も多種多様です。
有名なところでは果樹農家、花き農家、きのこ農家などなど。
農業は本当に奥が深く、毎日新しい発見があります。
昨日まで気付かなかったことでも、目を凝らし耳を研ぎ澄ますことで気付けることが沢山あります。
この記事を読んで農業への興味が深まっていただけていたら幸いです。
最終更新日:2020年2月13日