国家一般職の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
「公務員の給料は高すぎる」「公務員の給料も民間の水準に合わせるべき」など、公務員の給与についてはよく議論されます。
ニュースなどで国税庁長官の年収は2000万円超などと報道され、そのイメージで公務員の給与は高いと思うかもしれません。
しかしながら、役所の窓口で働いている一般的な公務員の年収は、実はあまり知らないかもしれません。
この記事では、国家一般職の年収や給料の内訳について解説します。
ちなみに、一口で国家一般職と言っても、定義によって内訳は変わってしまいます。
総理大臣や各大臣と比較して、霞ヶ関の官僚についても一般職と呼ぶ場合と、国家公務員の採用試験である国家一般職に合格した職員を国家一般職と呼ぶ場合に分かれます。
今回の記事での国家一般職は、国家一般職試験に合格した公務員についての解説になりますので、霞ヶ関の官僚など(いわゆる国家総合職)については除いています。
なお、国税庁長官などは国家総合職試験に合格した人ができる仕事で、民間企業で言うところの大企業の役員などの立場になります。
ほとんどの公務員はたどり着けないポストなので、彼らの年収はあまり参考にしない方が良いかもしれません。
国家一般職の平均年収は600万円弱
実は、国家一般職の平均年収、正確な年収は公表されていません。
人事院より行政職俸給表(一)毎月の給与平均額は公表されていますが、この平均には国家総合職も含まれており、国家一般職との年収とは実態が異なります。
なぜなら、国家総合職は国家一般職の倍速以上のスピードで昇給するため、勤務年数を経るごとに両者の差は大きくなるからです。
ちなみに、平成31年4月における行政職俸給表(一)の平均給与月額は約41万円となっており、この平均給与月額から年収を計算するとおおよそ670万円になります。
(人事院(国家公務員給与関係):https://www.jinji.go.jp/kankoku/r1/pdf/1sankou_koumu.pdf)
また、人事院が公表しているモデル年収を見ると、40歳の係長でおおよそ500万円となっています。
(人事院(給与勧告の仕組みと本年の勧告ポイント):https://www.jinji.go.jp/kankoku/r1/pdf/1point.pdf)
この金額には各種手当は考慮されていないことから、だいたい40歳前半で550万円~600万円程度が平均になります。
国家一般職の平均年収はこのモデル年収に手当を加味した550万円~600万円程度が、実態に近くなります。
国家一般職の年収・給料の構成要素
国家一般職の年収や給料はどのように決まるのでしょうか。
まず、毎月の給料については基本給に手当を加算したものが支給されます。
そして年収は、この毎月の給料に民間企業のボーナスにあたる期末手当と勤勉手当が加算された額になります。
基本給・能力給などはどうなっているの?
公務員の給料は俸給表と呼ばれる表によって決定されており、大卒なら俸給表のこの部分から、高卒なら俸給表のこの部分からと機械的に決定されます。
民間企業のように営業能力の高い人については他の人の給料に上乗せして支給する、という制度はありません。
また民間企業から公務員に転職した場合は、民間企業の勤務年数に応じて、新卒から勤務年数分に応じた俸給表が適用されます。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
国家公務員の賞与は民間企業の平均額に合わせて推移します。
最新の数値は令和元年分になりますが、年間4.5ヶ月分が支給されます。
令和元年分は年間4.5ヶ月のため夏と冬で等しく2.25ヶ月分が支給されますが、4.45ヶ月分など綺麗に割り切れない場合は冬の支給割合が若干高くなります。
ここ数年は民間企業、特に大企業のボーナスが増加傾向にあったため、公務員のボーナスもプラス査定が続きました。
しかしながら、リーマンショックなどの不況で民間企業のボーナスが減った場合や、東日本大震災の復興に向けて財源を捻出する必要がある場合は、減額される場合もあります。
各種手当はどういったものがある?
国家公務員に支給される手当は、細かく数えると20以上あります。
その中で多くの職員に支給される手当は、住居手当と通勤手当になります。
住居手当は賃貸住宅に住んでいる職員に支給され、最高月額28,000円の手当が支給されます。
具体的な支給額については、計算方法がややこしくなるのですが、おおよそ家賃の半額に近い金額が支給されるイメージです。
例えば家賃55,000円の場合、月額25,000円が支給されます。
通勤手当は、名称の通り通勤に要する費用に対する手当で、月額最高55,000円が支給されます。
公共交通機関を使用する場合は、55,000円以下の場合には基本的には全額が支給されます。
ただし通勤手当額の算出には6ヶ月分の定期券代を案分して計算しますので、1ヶ月や3ヶ月定期を更新すると自己負担が発生するので注意が必要です。
また、地域手当と呼ばれ民間給与の高い地域に勤務する職員に支給される手当もあります。
最も高い地域は東京都特別区に勤務する場合で、基本給に20%の手当が加算されます。
例えば基本給が20万円の場合、東京都特別区に勤務する職員には4万円が加算され、月額24万円が支給されます。
この地域手当は地域ごとに支給割合が変動するため、基本的には東京や大阪、名古屋など、大都市に勤務する職員に支給されます。
最後に、配偶者や子供など扶養家族がいる場合は扶養手当も支給されます。
配偶者には6,500円、子供には1人あたり10,000円が支給され、16歳から22歳までの子供がいる場合は5,000円が更に上乗せされます。
国家一般職の大卒初任給は182,200円
国家一般職の大卒初任給は月182,200円です。
これに住居手当や地域手当が加算されます。
東京都特別区勤務の場合、182,200円に住居手当28,000円と地域手当20%を加算すると246,640円になります。
手取り額としてはおおよそ支給額の8掛けになるため、月20万円ほどになります。
また、住居手当や地域手当がない場合は月15万円程度になります。
更に、年収としては地域手当がない場合は300万円ほど、東京都特別区では360万円、福岡市の場合は330万円になります。
なお高卒の場合は150,600円からのスタートとなるため、実家暮らしではない場合、就職後数年間は生活するだけで精一杯の状況が続きます。
国家一般職の業務別の年収を見る
国家一般職の年収は基本的には同一ですが、業務や勤務する省庁によって若干変わる場合があります。
一部の職種では国家一般職として採用されても公安職として見なされ、公安職の俸給表が適用されます。
このため、他の職員(主に受付や事務作業がメイン)の職員と比較して年収が高くなります。
一般的な行政職の場合の年収
一般的な行政職の職員は、ハローワークで働いている職員や法務局で働いている職員が該当します。
これらの職員については、先ほど説明した住居手当などの一般的な手当のみが支給されるため、年収についても600万円前後になります。
公安職の場合の年収
公安職の職員は麻薬取締官や公安調査官などが該当します。
これらの職員については、一般的な行政職の職員よりも2割ほど高い給与が支給されるため、年収についても700万円前後になります。
よくテレビで見る検察事務官(検察官のアシスタント)にもこの俸給表が適用されます。
税務職の場合の年収
確定申告などで税務署に行かれた方もいるのではないでしょうか。
税務署で働く職員は、国税専門官という専門職になり、給与についても公安職などと同様に2割ほど高い給与が支給されます。
なお、税務署で働く職員は国家一般職の試験ではなく、国税専門官という別試験を受験します。
国家一般職は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
国家一般職の最高年収は900万円程度です。
人事院が公表しているモデル年収だと、50歳の地方機関課長で675万円程度となっています。
国家一般職の場合、地方機関で定年を迎える職員が圧倒的に多いですが、地方機関課長以上のポストは二つ~三つ程度です。
モデル年収に地域手当などを加味しても800万円に届かない程度で、地方機関課長より二つ~三つ程度のポストに昇進したとしても劇的な昇給はありません。
なお先ほど紹介した公安職については基本給が高くなるため、地域手当や扶養手当を受給し、一般職で就ける限界まで昇進できた場合は1000万程度の年収が見込まれます。
国家一般職はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
国家一般職で勤務する場合、年収を高くする一番早い方法は、なるべく多くの手当を貰うことです。
特に民間企業での残業代にあたる超過勤務手当は、勤務先によって支給割合が異なる場合が多くあります。
なぜかというと、公務員の超過勤務手当は予算額が上限となっており、省庁の力関係によって予算配分に差があるためです。
例えば同じ50時間残業を行った場合でも、50時間分満額支給される勤務先もあれば10時間分しか支給されない勤務先もあります。
基本的に国家公務員は財務省を頂点とした力関係があるため、年収アップを目指すなら他省庁より予算が潤沢なところに勤務することが高年収を目指す秘訣です。
また、勤務する地域によって東京都特別区のように20%手当が支給される地域手当や、僻地に勤務すると最高25%支給される特地勤務手当もあります。
地域手当と特地勤務手当を併給することは通常は難しいですが、地域手当が支給される地域から支給されない地域に異動した場合、1年目は満額、2年目は8割の地域手当が支給されます。
東京都特別区から離島などに異動すると地域手当と特地勤務手当が併給され、最高45%の手当が支給されます。
法務局やハローワークなどで働く場合の年収は500万円~600万円
法務局やハローワークでは働く場合は国家一般職の基本的な年収になります。
勤務する地域によって地域手当に差がでますので、おおよそ年収500万円~600万円程度になる場合が多くなります。
検察庁や海上保安官として働く場合の年収は600万円~700万円
検察庁や会場保安官として働く場合は公安職の俸給表が適用されるため、他の一般職よりも2割ほど高い年収になります。
税務署で働く場合の年収は600万円~700万円
税務署で働く場合は、税務職という行政職とは別の俸給表が適用されます。
行政職の俸給表と比較すると2割ほど高い俸給表となっているため、平均的な年収は600万円~700万円程度になる場合が多くなります。
国家一般職の年収の決まり方や、年収が高い人の条件・スキル・特徴は?
国家一般職の年収はまず勤務先、そして上司の評価により決定されます。
勤務先は最初の就職時に決まってしまい、上司の評価は半年ごとに行われます。
高年収を目指す場合は就職の時に人気官庁を志望し、且つ配属先で他の職員よりも目立つことが必要になります。
また、霞ヶ関や外国の大使館で働くと、地方で働くよりもハードな仕事をこなしたと見なされるため、他の職員よりも出世が早くなります。
なるべく仕事が大変な職場で働くと、自動的に評価が高まるので年収アップの早道になります。
なお、勤務先にもよりますが、霞ヶ関や大使館で2年以上勤務すると次の人事異動は自分の希望が他の職員よりも優先されます。
霞ヶ関勤務後、続けて大使館などに配属を希望し、同期と一気に人事評価上での差をつける職員もいますので、出世したい方にはこのルートもオススメです(霞ヶ関の勤務はかなりの激務なため、地方で優秀と言われていた人でも体を壊す場合があるので注意が必要です)。
今回は上司に評価されやすい人の特徴を三つご紹介します。
1.コミュニケーション力が高い
公務員は民間企業として比較して、独特な正確の人が多い傾向があります。
一つの仕事に集中し、文書での仕事がメインとなるため、自分の意見を変えない人も多くいます。
しかしながら、住民とのやりとり、同僚、上司とのやりとりは常に発生するため、スムーズに周囲とコミュニケーションを取れる人は評価が高くなる傾向にあります。
特に公安職などは複数で仕事を行うことも多いため、周りと呼吸を合わせられる人は信頼を置かれます。
2.語学など何か特化したスキルがある
国家公務員の場合、海外で勤務する場合もあります。
勤務する職員を選抜する場合、少しでも語学力があるとプラスに働きます。
先ほども説明しましたが、大使館などの勤務は人事評価を上がる近道になります。
また、ITスキルなどシステムに強い人も重宝されます。
公務員の職場は民間企業と比較してITの側面では遅れている場合が多くあります。
多くの職員がパソコンなどの使い方で困っている時にさっと助けてあげると、かなり重宝されます。
3.常に自己投資している
公務員の給料は横並びが基本です。
努力しなくても、勤務年数が長くなると自動で給料は高くなります。
そのため職場と家の往復になり、職場ではあまり積極的に仕事をしない職員も一定数います(もちろん熱心に仕事をする人も沢山います)。
最初は使えないと言われている職員でも、職場で求められる知識を自分なりに勉強したり資格の勉強を続けている職員は、次第に能力を発揮していきます。
新人の頃は一番評価が低かったのに、最終的には一番出世した人も多くいます。
国家一般職の年収査定で大事なのは、特に「勤務場所」
年収を上げるためには努力している姿勢を見せることが重要です。
そのためには仕事が多くあるところで熱心に仕事をすることが一番の近道です。
公務員の職場はかなり暇な職場と忙しい職場とに極端に分かれます。
暇な職場では何かを身につけようとしても雑用以外に仕事はなく、結果としてスキルアップができない場合も多くあります。
忙しい職場では日々勉強になるので、そのような職場で働いている人はどんどん知識を増やしていきます。
結果として上司の評価も高くなるため、出世も早くなります。
特に大変な職場は霞ヶ関(中央官庁)ですので、地方局で採用されても、霞ヶ関(国家公務員は本省と言います)への転勤を希望し続けることが年収査定には重要になります。
国家一般職として年収をアップさせたい人がやってほしい3個のこと
国家一般職として年収をアップさせたい人にやってほしいこと三つご紹介します。
上司に熱意をアピールする
上司も人です。
配属先を考える場合は、日常の仕事ぶりのみならず、部下が何を考えているかを考慮します。
日々の仕事でやる気をアピールすることも重要ですが、中には数十人の部下を抱えていて日々の仕事を細かく見られない上司もいます。
飲み会の席や人事評価の面談時に自分のやりたいことや希望異動先を伝えると、意外に配慮してもらうこともありますよ。
積極的に仕事をする
積極的に取り組む人には周囲も色々と応援したくなります。
自分の仕事が終わって他の人の仕事を手伝うと、意外に評価されたりします。
ただし単なる便利屋として扱われる場合もあるので、頑張っても報われない場合は無理に他の人の仕事をする必要はありません。
人事交流を積極的に活用する
先ほど説明しましたが、国家公務員には人事交流制度があります。
特に外国の大使館や領事館に勤務すると、外務省からの給料と自分が所属していた省庁からの給料が併せて支給されます。
最低でも年収は倍になりますので、年収アップを希望する人には最短ルートになります。
ちなみに、海外に勤務する場合は地域に応じて住居手当も変動します。
治安が悪い地域に勤務する場合、安全な地域に職員が住む必要があるため、住居手当のみで20万円ほど支給される場合もあります。
命がけにはなりますが、お金を貯めるには良いかもしれません。
これから国家一般職を目指す人へのアドバイス
国家一般職を目指す場合、筆記試験を突破した後に希望する勤務先にそれぞれ面接に行きます。
また税務署の職員や航空管制官を目指したい場合は、別の試験を受ける必要があります。
勤務先によって年収が違うことは説明しました。
国家公務員の多くは、キャリア官僚を除いて意外に低い給料で働いている場合が多くあります。
特に、30歳前後までは自分の生活でいっぱいいっぱいの職員がほとんどと言っても過言ではありません。
基本給は生活費に消え、残業代が貯蓄や遊行費に使えるとイメージすると実態に近いと思います。
やりたい仕事と給料のバランスを考えてから何処の勤務先を志望するのか考えると、お金で困ることも少なくなります。
さいごに
国家一般職の年収や給料について説明しました。
年収が全てではありませんが、同じ試験を突破しても勤務先によって50万円~60万円ほど年収が変わる場合はよくあります。
国家公務員には、人事交流と言って他の勤務先に2年~3年ほど勤務する場合があります。
その際に、場合によっては年収が50万円~60万円ほど上がったり下がったりします。
年収で100万円違う場合、ボーナスを加味すると月額3万円~4万円ほどの差が発生します。
生活してみると意外に大きな差のため、高年収を目指したい方は有力な官庁を目指すと良いかもしれません。
最終更新日:2020年6月16日