国家公務員総合職の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
○○事務次官や○○局長など、テレビや新聞などで耳にすることはありませんか。
彼らは国家公務員の中でもトップに立つ一握りのエリート達です。
国家公務員総合職は国家公務員総合職試験に合格し採用された職員のことですが、将来的には各省庁の事務次官や局長など、国の幹部候補となる職員になります。
世間一般ではキャリア組と呼ばれる人達が国家公務員総合職です。
長官や局長など幹部の退職金についてはマスコミでも報道されますが、多くの職員の年収などはあまり報道されないと思います。
この記事では、国の行政を支える国家公務員総合職の初任給や年収について徹底解説します。
国家公務員総合職の平均年収は約680万円
国家公務員総合職のみの平均年収は残念ながら公表されていませんが、国家公務員行政職(一般的な事務職員)の平均給与は人事院より毎年公表されています。
最新の調査である平成31年4月の数値は、毎月の平均給与は411,123円となっており、ボーナスは年間4.5ヶ月分支給されるため、年収を計算すると約680万円となります。〔令和元年人事院勧告:https://www.jinji.go.jp/kankoku/r1/pdf/1sankou_koumu.pdf〕
先ほど説明した通り、この数値は国家公務員総合職のみの平均ではなく国家公務員一般職の給与も含んでいるため、国家公務員総合職のみの平均年収はもう少し高くなります(国家公務員総合職と一般職の関係は、就職活動の総合職採用と一般職採用の関係に似ています。総合職は将来的な幹部候補、一般職は現場での実務がメインになります)。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
賞与は夏、冬それぞれ2.25ヶ月分、合計年4.5ヶ月分支給されます。
毎月の平均給与から計算すると、925,000円ほどです。
なお、人事院勧告により公務員の給与は見直され、基本給や賞与についても民間給与の実態に合わせて変動します。
賞与については、現状夏、冬同額ですが、年間合計が2で割り切れない場合は冬の賞与額が少し多くなります。
また、人事員勧告は4月時点の数値を夏頃に発表するため、基本給や賞与の増額については年末に追加支給される場合がほとんどです。
なお、最近はあまりありませんが、減額の場合は冬の賞与額で調整が行われます。
各種手当はどういったものがある?
国家公務員総合職にも国家公務員一般職と同様の各種手当てが支給されます。
多くの職員が支給される手当としては、住居手当、扶養手当、通勤手当の三つです。
賃貸住宅を借りている場合は、家賃の額に応じて最高月額28,000円の住居手当が支給されます。
配偶者や子供を扶養する場合はそれぞれ、6,500円、10,000円(16歳から22歳までの子については5,000円追加)の扶養手当がつきます。
通勤手当は、公共交通機関を使用する場合は定期券代、自家用車を使用する場合は距離に応じて支給されます。
定期券代については6ヶ月単位で支給されるので、1ヶ月や3ヶ月の定期券を購入した場合は手出しが必要になります。
〔人事院国家公務員の諸手当の概要:https://www.jinji.go.jp/kyuuyo/index_pdf/teate_gaiyo.pdf〕
国家公務員総合職の大卒初任給は186,700円
国家公務員総合職の大卒初任給は186,700円です。
この基本給に、東京都特別区内に勤務する場合は20%の地域手当、賃貸住宅を借りる場合は家賃の額に合わせて28,000円までの住居手当などが支給されます。
なお、東京都特別区内の地域手当20%を加算した初任給は224,040円です。
地域手当がない場合と比較すると、37,000円ほど高くなります。
国家公務員総合職の業務別の年収を見る
国家公務員の多くは各省庁で事務作業を行う行政職です。
しかしながら、何らかの研究を行う研究職や、国際情勢の分析を行う分析官など行政職以外の業務もあります。
また車の運転や現場作業を行う技能・労務職員もいます。
ここでは、行政職以外の業務を行う職員の年収についてご紹介します。
航空管制官・特許庁の審査官等の場合の年収(約735万円)
航空管制官や特許庁の審査官等には専門職となり、専門行政職俸給表が適用されます。
その場合の平均給与月額は445,706円となり、ボーナスを加味した年収は約735万円になります。
一般的な行政職の平均年収が約680万円ですので、年間で50万円ほど、月額で3万円ほど行政職よりも給与が高くなります。
研究職の場合の年収(約920万円)
厚生労働省所管の国立感染研究所や防衛省の管轄である防衛装備庁など、各省庁には政策立案等に必要となる研究活動を行う機関があります。
そのような機関で働く職員、採用された職員で研究業務を主な仕事として行う職員には、研究職俸給表が適用されます。
その場合の平均給与月額は558,786円となり、ボーナスを加味した年収は約920万円になります。
しかしながら研究職の採用は各機関多くても数名程度で、応募の要件も修士や博士の学位が必要な場合も多くあります。
行政職やその他の職と比較すると採用されるまでのハードルは高いですが、特定の研究をどうしても行いたい人には最適な職かもしれません。
政策情報分析官の場合の年収(約990万円)
各省庁には、その省庁にとって必要な情報を収集・分析する政策情報分析官と呼ばれる職員が配置されています。
専門スタッフ職と呼ばれる職員ですが、専門スタッフ職俸給表が適用され、平均給与月額は600,866円となり、ボーナスを加味した年収は約990万円になります。
他の職種と比較するとかなり年収が高くなっていますが、国家公務員総合職の中で局長や事務次官にはなれなかった職員が、長年培った知識や経験を活かすために創設されたポストでもあります。
そのため、専門スタッフ職俸給表が適用される職員の平均年齢は56歳とかなり高く、その分平均年収も高くなっています。
国家公務員総合職は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
国家公務員総合職は国の幹部となる職員です。
一番出世した場合、事務次官という官僚の最高ポストまで出世することができます。
事務次官の年収は内閣人事局からモデル給与として発表されており、23,473,000円となっています。
毎月の給与は1,410,000円です。
ただ、事務次官のポストは各省庁一つしかないため、同期の中で一名のみが就けるポストという認識が必要です。
国家公務員総合職の場合、各省庁の課長までは横並びで出世できると言われています。
先ほどの内閣人事局から発表されている資料によると本府省課長の場合、年収は12,642,000円となっています。
例え事務次官まで出世はできなくても、年収1000万円以上は目指せるということです。
〔内閣官房内閣人事局国家公務員の給与:https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/r02_kyuyo.pdf〕
国家公務員総合職はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
国家公務員総合職は勤務先で年収に多少の差が出ますが、最初に説明した通り、国家公務員総合職のみの年収は公表されていません。
基本的には国家公務員一般職を含んだ給与が公表されています。
そのため、国家公務員一般職よりも初任給が高く、昇給も早い国家公務員総合職単体の年収は、今回ご紹介する年収よりも実際は高くなります。
そして、公表されている給与を参考にすると、国家公務員総合職に関しても、公安職や税務職など専門職については一般的な行政職よりも高い年収になります。
また、国家公務員総合職の場合、自治体や在外公館に異動になることはよくあります。
特に若い職員は、自治体などに配属されることも多々あります。
自治体では出向先の自治体の俸給表で給与が支給されるため、自治体によっては国家公務員の給与よりも高い額が支給される場合もあるようです。
また、在外公館に転勤する場合は、住居手当などの手当も増額されるため給与額はかなり高くなります。
法務局やハローワークなどで働く場合の年収は約680万円
法務局やハローワークで働く場合には、最初に国家公務員総合職の年収で解説した行政職の年収が適用されます。
その場合の年収は先ほど説明した通り約680万円です。
検察庁や海上保安官として働く場合の年収は約680万円
検察庁や海上保安官として働く場合は、公安職の俸給表が適用されます。
行政職の俸給表よりも少し高い金額が設定されていますが、平均年収では行政職とほぼ同額の年収になります。
若い内は検察庁や海上保安官として働く場合の年収が一般的な行政職よりも若干高くなりますが、役職が上がるごとに行政職の給与も高くなるため、給与の差は少なくなります。
税務署で働く場合の年収は約720万円
税務署で働く場合は国税庁の採用になりますが、その場合は税務職の俸給表が適用され行政職よりも高い年収が支給されます。
特に採用からの年数が少ない期間に行政職よりも高い給与が支給される税務署は、年収としては魅力的な職場です。
国家公務員総合職の年収の決まり方や、年収が高い人の条件・スキル・特徴は?
国家公務員総合職の年収はポストによって決まるため、年収を上げるためには出世するしかありません。
1.上司の評価が高い人
公務員の人事評価は直属の上司が決定する場合がほとんどです。
幹部職員については内閣に人事権がありますが、実質的には各省庁の意向が強く反映されます。
仕事ができる人や何らかの特殊スキルがある人はもちろん評価され、出世する確率も高くなります。
しかしながら、国家公務員総合職の場合、採用される職員は有名大学の卒業生ばかりであり、その中で突出した能力を示すのは容易ではありません。
そのような中で出世コースを勝ち抜くには、上司に好かれることや上司の希望を上手く結果で出す必要があります。
公務員の出世は、若い内はスキルによるものもありますが、最終的には何となく上司のお気に入りの人が選ばれる場合も多くあります。
2.頭の回転が速い人
国家公務員総合職の多くは霞ヶ関で働いており、かなりの激務をこなさなければなりません。
政策の立案、国会での対応など、多くの仕事を抱えながら適切な判断を行う必要があります。
日々起きる問題についてすばやく論理的な解決策を導ける人は、周りにも評価され、出世する確率も高くなります。
3.体力のある人
仕事のスキルやコミュニケーションスキルも重要ですが、評価されるためには仕事を続けることが最低条件です。
国家公務員総合職は将来の幹部候補のため、若い内はかなりの仕事を割り振られます。
国家公務員総合職だけではなく、霞ヶ関で働く官僚全てに当てはまることですが、毎日の激務をこなさなければなりません。
どれだけ優秀でも、体を壊したり、仕事に燃え尽きてしまうこともあります。
激務な毎日を10年以上続ける体力も重要になります。
国家公務員総合職の年収査定で大事なのは、上司の評価
公務員の年収査定は一にも二にも上司の評価で決まります。
毎期ごとの人事評価や昇任など、人事評価を行う上司の評価がなければ、誰も評価してくれません。
どれだけ優秀な人物でも、上司と仲が悪く出世できないなんてことはよくあることです。
人事評価を高めるためには、上司に良い印象を持ってもらうことは最低条件です。
なお、仕事ができることや熱心に働くことは、国家公務員総合職にとっては当たり前のことです。
優秀な同期の中でより良い評価をもらうためには、仕事の結果や上司へのアピール力、上司に好かれる性格など、総合的な人としての魅力も重要になります。
国家公務員総合職として年収をアップさせたい人にやってほしい3個のこと
国家公務員総合職として年収をアップさせるためには、とにかく上司からの評価を高め出世することになります。
上司や政治家とコミュニケーション(飲み会など)をとってみる
公務員の世界は人間関係が意外に重要です。
顔の広い人やコミュニケーションを上手く取れる人は評価されます。
特に何か大きな政策を推進する際は、多くの関係部署や政治家などの協力も必要になります。
そのような時に知り合いに連絡を取り、着々と事業を進捗できる職員は、周囲や上司に評価されます。
日頃の人間関係が予想以上に仕事にもプラスになります。
ミスを減らす
公務員の人事評価はマイナス評価の場合が多くあります。
大きな事業や前例のないことに積極的に取り組み失敗するよりも、小さなことを確実にこなした人が評価される場合も多くあります。
ミスを恐れて消極的になることが将来の幹部として本当に正しいことかは疑問ですが、目の前の出世や年収アップを実現するためには重要かもしれません。
ちなみに、何かの失敗があった場合、部下や同僚に責任を押しつけて自分自身の評価に影響を与えないように上手く立ち回る人もいます。
同僚が躊躇するような仕事をしてみる
先ほどとは真逆になりますが、何か問題が起きたときに大胆な方法で乗り切ることも、周囲の評価を得る手段になります。
国家公務員総合職は皆優秀で、努力を惜しまない人も多くいます。
目の前の仕事を頑張ることや堅実に仕事を進めることは重要ですが、周りの職員も同じような姿勢で仕事をします。
その中で頭一つ抜けるためには、周囲の人が躊躇することや考えつかないことを、キャリアのどこかでやってしまうことも重要かもしれません。
これから国家公務員総合職を目指す人へのアドバイス
国家公務員総合職は、国の幹部候補となる職員です。
将来は国家の政策を立案する立場になります。
事務次官や局長など、幹部職員になればそれなりの年収を得ることはできますが、20代、30代の内は普通のサラリーマンと変わらない給料です。
それにも関わらず、何日間も職場に泊まったり、毎日のように日付が変わるまで仕事をする必要があります。
コストパフォーマンスだけ考えると、普通のサラリーマンの方が余程高くなるかもしれません。
お金ではなく、国家を良くしたい、そのような人が国家公務員総合職を目指せばより良い国作りができると思いますし、就職した後も仕事を続けることができると思います。
さいごに
国家公務員総合職の年収や手当などについて解説しました。
幹部職員の年収や退職金がマスコミなどで報道されると、かなり良い待遇を受けているように感じます。
しかしながら、下積み生活も長く、その間は激務に耐える必要もあるため、本気で国の行政に携わりたい方に目指してほしい職業です。
なお、先ほども少し説明しましたが、国家公務員総合職の勤務先は霞ヶ関だけではなく、国の地方局、各自治体、更には在外公館に勤務することもあり、転勤の頻度や範囲は一般的なサラリーマンとは比べものになりません。
最終更新日:2020年8月5日