検察官の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の一つである検察官は、犯罪捜査や刑事事件の公訴、裁判執行の監督などを行う国家公務員です。
司法試験に合格後、司法修習時に本人の適性と希望などを考慮した上で検察官を選択し、採用試験に合格する必要があります。
旧司法試験時代に比べると敷居は低くなりましたが、今でも司法試験を突破するのは非常に大変です。
そんな難関をくぐり抜けた検察官の年収はどのくらいなのでしょうか。
この記事では、検察官の平均年収や給料構成、勤務先やポスト別の年収などを徹底解説していきます。
検察官の平均年収は600万円が相場
階級や勤務地、諸手当によって差がありますが、検察官の平均年収(基本給)は約600万円です。
検察官はトップの検事総長から最も若手の検事20号まで細かくランク分けされています。
そして、国家公務員である検察官の給与は「検察官の俸給等に関する法律」で厳格に定められているのです。
検察官は年齢ではなく、階級で変化する給与体系となっています。
検察官の年収・給料の構成要素
続いて、検察官の年収・給料の内訳を見ていきましょう。
検察の年収は「基本給」「諸手当」「期末手当」で構成されています。
基本給は階級ごとに規定されいる給料です。
それに加えて、通勤手当や住居手当、扶養手当などの諸手当を得られます。
また、期末手当は賞与(ボーナス)を指し、年2回支給されます。
一般企業や通常の公務員であれば残業代が支払われますが、検察官の場合は階級に関わらず残業代は支払われません。
基本給・能力給などはどうなっているの?
検察官の基本給は、前述の「検察官の俸給等に関する法律」で各検察官の階級ごとに厳密に決まっています。
新人の検事20号で月給23万4,900円、一般的に検察官になって11年目で達すると言われている検事8号は月給51万6,000円、検事1号になると月給117万5,000円です。
更に検事総長や次長検事などの上級役職に就けば、基本給だけで約120万円以上の月収が見込めます。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
基本給に加えて支給される期末手当(賞与)は、一般的な公務員や会社員同様に夏・冬の年2回支給されます。
気になる賞与額は、1年間で基本給の約4ヶ月分です。
新人検事でも90万円以上、中堅である検事8号の場合は年間約200万円以上の賞与を受け取れるので、基本給や各種手当と合わせれば高収入であると言えます。
各種手当はどういったものがある?
支給される各種手当は、通勤手当・住居手当・扶養手当・寒冷地手当・単身赴任手当です。
寒冷地手当と単身赴任手当に関しては、一部の役職以上の者に対して支給されます。
また、検察官も一般の公務員と給与体系は異なりますが、公務員の一種であることは変わりありません。
そのため、先に紹介した手当のほかに公務員宿舎の利用などといった福利厚生も充実しています。
検察官で年収が高い人に条件や特徴はあるの?
検察官の年収は全て法律で規定されていることが分かりましたが、検察官の中でもどのような人が高収入を得られるのでしょうか。
ここでは、高給を得ている検察官に共通する条件や特徴などをチェックしていきます。
1.出世コースに乗っている
同じ法曹界でも公務員ではない弁護士やサラリーマンとは異なり、検察官の収入は法律で規定されている階級ごとの金額が全てです。
裏を返せば、どれだけ上のポジションに行けるかどうかが、検察官として高収入を得られるかに密に関わっているのです。
検察官は検察庁に勤務するイメージがありますが、実は法務省の各局部や外務省などの省庁、法科大学院や弁護士事務所への派遣があります。
検察官には「赤れんが組」と「現場組」の出世コースがあり、このどちらかに入れば出世コースに乗れたと言えるのです。
赤れんが組は法務省本省での勤務期間が長い者を指し、現場組は特別捜査部に配属された特捜検事が当てはまります。
検察官は東京や大阪などの大規模な地検(A庁)に任官された後である5年目から10年目に、A庁検事明けの時代を迎えます。
この時期に、今後自分がどの組になるのか、出世街道を進むのかが見えてくるのです。
ですから、この時期の経験や成果が重要となってきます。
2.著名事件の解決で一気に出世コースに乗れる可能性も
仮にA庁検事明けの時点で出世コースに乗れなくても、一気に逆転できる可能性もあります。
例えば、シニア検事時代に著名事件を担当して解決したり、有名政治家などの逮捕にこぎつけられるような成果を出した場合です。
そのままであれば地方検察庁を転々として定年まで出世することなく終わるはずであった検察官でも、なんとかしてチャンスをものにできれば一気に赤れんが組や特捜部のエリート組に抜擢されます。
3.異動先の意向打診を断らない
特定の勢力と検察官の間に癒着が起きないよう、検察官は大体2年を目途に赴任地が変わります。
これが検察官に転勤が多い一番の理由です。
そして、この異動も検察官の出世と関わってきます。
異動がある場合、対象の検察官は一般的に1月中旬に意向打診を受けることになります。
意向打診なので確定ではなく、この際に異動を拒否することもできます。
しかし拒否した場合、代わりに期が近い他の検察官が異動することになって迷惑をかけることになり、次の異動時には前回拒否した異動先よりも条件の悪い勤務地に配属されるのが一般的になっています。
出世コースから外れると言っても過言ではないので、滅多に意向打診を断る検察官はいません。
検察官はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
前述の通り基本的に検察官は短期間で繰り返します。
階級が給料を左右し、出世コースを歩むことが検察官として高収入を得る方法ですが、勤務先によっても年収に差が出てくるのでしょうか。
ここでは、勤務先ごとにどのくらいの年収になるのかを見ていきましょう。
検察官は勤続年数や階級、役職で大体の勤務先が決まっているので、勤務先ごとの年収は階級ごとの年収とリンクしています。
新任検事として東京地検本庁で働く場合の年収
1年目の新任検事は、基本的に東京地検本庁に勤務となります。
本庁で講義を受けながら、1年目から実際に事件を受け持って実務経験を積んでいくのです。
新任検事は一律で誰もが検事20号なので、基本給だけだと約280万円です。
しかし、俸給以外の賞与や各種手当を含めると500万円超と言われています。
検察官はロースクールで学んだ後、司法修習を経て任官しているため、一般企業の新入社員に比べると採用時の平均年齢は27歳前後と高めです。
しかし、27歳の平均年収が男性で400万円弱、女性で約350万円なのを見ると、高収入であると言えます。
地方の小中規模検察庁で働く場合の年収
東京地検本庁での1年の勤務が終了すると、新任明け検事として2年~3年目の検察官が地方の小中規模検察庁に勤務します。
検察官は、11年目までは基本的に勤続年数と共に昇進していくと言われています。
個人差はありますが、仮に任官3年目で検事17号の場合、基本給のみの年収が300万円以上です。
これに加えて新任検事同様、賞与や各種手当を受け取ります。
基本給だけを見ると新任検事と大差がないように見えますが、ボーナスや手当に差が出てくるので、同年代よりも高給取りなのは確かです。
都市部の大規模検察庁で働く場合の年収
地方検察庁での2年程度の勤務後は、東京や大阪の大規模検察庁(A庁)が勤務先になります。
検察官歴が4年~5年目となっており、A庁検事と呼ばれるのがこの時期です。
A庁検事は検察官としての育成期間の最終段階と位置付けられており、様々な案件を通して経験値を積んで検察官としての能力を大成していきます。
検事13号の場合、基本給のみの年収は400万円弱、ボーナスも130万円弱となるので、新任明け検事と比較すると結構な収入アップと言えるでしょう。
三席検事として地方検察庁で働く場合の年収
三席検事は各地の検察庁でシニア検事としてキャリアを積んだ後、地方検察庁において三番目の地位にある検事です。
その上のポストである検事正と次席検事は個別案件を受け持たないので、実際に事件を担当する検事の中で最も上位にあります。
検察官に任官されてから15年目で三席検事という実例があり、そこから推定すると少なくとも検事8号以上なので、年収は基本給のみで約620万円です。
40代前半の男女平均年収が約460万円ですから、基本給だけで600万円を超える検察官は高給取りとなりますね。
検事正または次席検事として地方検察庁で働く場合の年収
検事正と次席検事は三席検事までとは異なり、管理職扱いです。
これまでの役職とは違い、個別案件を担当することはありません。
検事正は地方検察庁のトップ、次席検事はナンバー2です。
重責を担うポジションですが、若手やシニア検事の頃のように休日返上で激務にあたることはほぼなく、収入も増えます。
検事正ともなると、賞与と各種手当を含めた年収は2000万円ほどと言われています。
検事総長や次長検事、検事長として高等検察庁・最高検察庁で働く場合の年収
検事総長は全検事のトップに立つ最高責任者で、次長検事はその次にあたるポストで各1名ずつです。
勤務先は最高検察庁となります。
一方、検事長は全国8箇所にある高等検察庁のトップで、勤務地は札幌市・仙台市・東京都・名古屋市・大阪市・広島市・高松市・福岡市のいずれかです。
年収は、東京都以外の検事長と次長検事の基本給が約1400万円、東京高等検察庁検事長は更に高額で約1550万円となっています。
ポストは次長検事の方が東京高等検察庁検事長よりも上ですが、基本給は逆転しています。
気になるトップの検事総長の年収は、次の項目で見ていきましょう。
検察官は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
検察官のトップは、前述の通り検事総長です。
検察官の年収は、次長検事と東京高等検察庁検事長のように階級と収入が逆転する場合も稀にあります。
しかし基本的に収入は階級に比例するので、検事総長の年収が検察官の最高額となります。
検事総長は月給(基本給)が146万6,000円で、基本給だけで年間約1750万円にもなります。
そして、賞与は夏冬合わせて600万円ちかくに達します。
それだけでもかなりの高額ですが、加えて各種手当が支給されるのです。
手当の額により多少の差はありますが、年収の総額は約2900万円とされています。
検察官の一種である副検事とは?年収はいくらなの?
検察官には、ここまでですでに紹介している検事総長・次長検事・検事長・検事の4種類のほかに副検事があります。
この副検事は、検事と同様に検察官の職務にあたります。
しかし、検事が司法試験合格~司法修習終了~検事採用面接を経て任官されるのと違い、副検事は国家公務員試験一般職合格~検察事務官や警察官などを経験~考試合格を経て任官されます。
司法試験合格者がなる場合もありますが、稀です。
また、司法試験を通過してなった検察官と同等の権限を持つ特任検事に昇任するケースもあります。
特任検事になるには副検事として3年以上在職し、更に検察官特別考試をパスしなくてはなりません。
副検事は1号から17号まであり、新人副検事である副検事17号の基本給は月給21万5,700円、副検事1号でも57万4,000円です。
収入面から見ると検事との差は大きいと言えます。
これから検察官になる人へのアドバイス
若手の間は休日返上で職務にあたるのが日常の検察官ですが、自らが重責を担っていることがそのままやりがいに繋がる仕事です。
的確な判断力と素早い決断力が重要となるので、感情の起伏があまりなく常に冷静さを失わない人、常にあらゆる物事を客観視できる人が向いています。
新人検事の間は、時給換算するとファーストフード店やコンビニバイトと変わらないような額です。
しかし20代で検察官となった場合、30代後半から40代前半には有名企業のサラリーマンと同じくらいか、それを上回る収入を得られます。
定年である満63歳まで勤めあげれば、検察官の生涯年収は高額の部類です。
新人検事には若手なりの激務という辛さ、上級職検事になると更なる重責を負います。
そのため精神的に追い詰められる場合もありますが、それすらも検察官の仕事の面白さと捉えられるポジティブさが大切です。
さいごに
検察官は新任検事でも同世代に比べて高収入を得られ、一定以上の階級に達すれば日本人の平均給与から見ても高給取りであることが分かりましたね。
更にトップの検事総長まで昇りつめれば3000万円ちかくの年収が約束されますが、一席のみのポストのため、かなりの資質と努力が必要とされます。
検察官の存在は、民主・法治国家において欠くことのできないものです。
新人から中堅までは激務ですが、その分やりがいも充分ある仕事で、高収入はそれに見合った報酬であると言えます。
最終更新日:2020年5月12日