助教の年収を徹底解説|給料・賞与(ボーナス)・各種手当
現在、日本の大学の研究職員には教授、准教授、講師、助教という職があります。
准教授や助教という立場は比較的新しく作られた名前です。
そのため馴染みのない方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介する「助教」の仕事は、自らの研究と学生への教育がメインになります。
実績を積みながら将来的には准教授、教授を目指します。
ここでは助教の平均年収や福利厚生、雇用形態別の年収について解説をしていきます。
将来、大学での仕事を考えている方は参考にしてみてくださいね。
助教の平均年収は550万円~600万円が相場
大学によって給料の差はありますが、全体的な平均年収は約550万円~600万円になっています。
ボーナスは平均で約120万円とされていますが、大学によって大きな開きがあります。
- 国立大助教―平均650万円(2014年度のデータより)
- 公立大学助教―550万円~
- 私立大学助教―500万円~600万円
- 大学病院の助教―550万円~650万円
助教の平均月額は?
2016年の政府の統計によると、2016年9月の給料月額の平均はこのようになっています(諸手当、調整額を除いた本俸になっています)。
- 助教全体の給料月額:約36万円
- 国立大学の助教の給料月額:約37万円
- 公立大学の助教の給料月額:約36万円
- 私立大学の助教の給料月額:約32万円
国立大学の助教の月額が一番多いことが分かります。
大学によって諸手当の種類も異なるので、実際に支給される月額とはやや相違があるかもしれません。
助教の年収・給料の構成要素
助教の年収は、「基本給」「能力給、諸手当」「ボーナス」の構成になっている場合が多くあります。
各大学の「内部規約」に給料の取り決めがあります。
就職をした際に確認をすることになりますが、役職と社会経験の年数によって金額が決まります。
国公立大学の多くはインターネット上に内部規約を開示していますが、私立大学の多くは情報を開示していません。
基本給・能力給などはどうなっているの?
働く大学が国立、公立、私立のどこになるかによって給料は大きく変わってきます。
- 国立大学:各大学で俸給表が設定されていますが、大学による差はほとんどありません。公務員の俸給と同じように役職を表す「級」と勤続年数や能力によって変動する「号俸」によって基本給が決まります。
- 公立大学:法人化をした際に独自の賃金体制を導入した大学もあるため、大学によって給料に差があります。
- 私立大学:大学の規模や経営状況によって給料に差が出ます。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
平均的には120万円と言われていますが、大学によって大きな違いがあります。
一般的に、有名大手大学は手当や賞与も多く、中小規模の大学はあまりないと言われています。
大学によって月額の2ヶ月分というところもあれば4ヶ月分というところもあるので、支給額には大きな差が出てきます。
各種手当てはどういったものがある?
私立・国公立によって手当の種類も異なり、また大学ごとに異なる手当もありますが、主に下記のような手当てがあります。
- 住宅手当:持ち家などの場合を除き支給される
- 通勤手当:電車やバス、車で通勤している職員に支給される
- 扶養手当:配偶者や子どもがいる場合に支給される
- 地域手当:「都市手当」とも呼ばれる。地域によって支給される割合が異なる。
- 入試手当:センター試験や二次試験で試験監督をした場合に支給される
- 期末手当・勤勉手当:いわゆる「ボーナス」
- 外部資金獲得手当:科研費(※)などの外部資金を獲得し間接経費を得た場合、獲得額に応じて報奨金が支給される
専攻する分野に関する調査・研究を遂行する上で必要な研究費として設置されている「個人研究費」がありますが、年度末までに使い切らなかった場合、余った分を教員の収入として調整される場合が多く、この金額も年収の一部になります。
「入試手当」や「外部資金獲得手当」といった手当は、アカデミックな世界ならではの手当てと言えますね。
(※)科研費とは「科学研究費補助金」の略。人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野における優れた研究を発展させることを目的とし、大学等の研究者、グループが計画する基礎的研究に対して選考の後、補助が行われるものです。
助教の雇用形態別の年収を見る
助教という職は2007年に新たに作られた立場ですが、多くの場合とても不安定な身分です。
助教は大きく分けて5つの雇用形態があります。
この内1の「任期無し助教」のみが安定した立場ですが、半数以上の助教は「任期あり」の雇用形態で働いているのが現実です。
- 1.任期無し助教:雇用契約を切られる心配がないので安定している
- 2.任期あり助教(再雇用の回数制限無し):再雇用があるため、長期で働ける可能性も
- 3.任期あり助教(再雇用無し):3年~5年の任期が一般的。再雇用なしのため職探しが必要
- 4.テニュアトラック助教:一定の任期(5年)付雇用だが、任期終了後のポストが用意される
- 5.特任助教(特定助教、特命助教、特別助教):特定のプロジェクト用に雇用
多くの大学が3年~5年の任期制の雇用形態をとっています。
「5年契約、更新は1回まで」というのが一般的な助教の雇用形態であるため、任期は約5年~10年になります。
1~4までの助教の場合の平均年収は約600万円ですが、特任助教(特〇助教)の給料は他の助教の給料の7割程度(400万円~450万程度)と言われています。
また、助教の仕事は1年ごとに給料が上がりますが、特任助教/特〇助教の場合にはそれがありません。
特任助教/特〇助教は、特定のプロジェクトを遂行するために雇用されることが多いため「1年契約、最長3年任期」という短い期間の雇用になります。
- 助教の場合の年収:550万円~650万円(1年ごとに給料が上がる場合が多い)
- 特任助教/特〇助教の場合の年収:400万円~450万円程度(給料は上がらない)
助教は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
2016年度の統計によると、平均給与月額が65万円以上の助教が全体の0.8%弱(40,530人中309人(国立117人,公立14人、私立178人))いることが分かっています。
65万円の場合でも65万円×12ヶ月=780万円になります。ボーナスを加味すると年収は1000万円近くになると考えられます。
ただし、これは全体の1%にも満たない数値です。
助教はあくまでも短期雇用が多いため、ほとんどの場合は450万円~650万円といったところでしょう。
助教はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
大学教員は公務員または会社員という立場になります。
国公立大学で仕事を得た場合は公務員、私立大学の場合は会社員となります。
研究費や予算が潤沢にある私立大学は年収が高くなることも考えられます。
一般的に私立大学の方が国公立大学よりも年収が高いと言われていますが、あくまでも大学によります。
国立・公立・私立大学の年収を以下に挙げます。
平均の金額ではなく年収額の幅になっているのでご注意ください。
国立大学で働く場合の年収
400万円~700万円程度
一言で「国立大学」と言っても、助教の給料は大学によって大きな差があります。
2014年度の統計データによると、最低年収は新潟大学の「390万円」、一方最高年収は佐賀大学の「973万円」でした。
東京大学は「405万円」京都大学は「472万円」でした(四捨五入してあります)。
有名であれば年収が高いというわけではないことが分かります。
公立大学で働く場合の年収
350万円~650万円程度
2016年の給与月額の平均が36万円(諸手当除く)なので、平均年収は550万円程度と考えられます。(36万円×12ヶ月+ボーナス(月額給与約2ヶ月分)+諸手当)
大学によって異なりますが、俸給制を取り入れている大学であれば給与体系が明確です。
長崎県公立大学法人の場合は、助教の初任給は月24万円です。
この場合は年収は350万円程度になります。
同じ公立大学でも、小松大学は年収450万円、大阪府立大学は1号~11号までの号数によって年俸が「400万円~約620万円」となっています。
私立大学で働く場合の年収
350万円~700万円程度
国立より給料が良いイメージのある私立大学ですが、給料の幅がとても大きいことが分かっています。
大谷大学(京都)文学部の助教の年収は「350万円」です(2006年)。
一方、神奈川大学理学部、工学部の助教の年収は「約1000万円」でした(2007年)。
国立の場合と同様に、知名度が高い=年収が高いわけではないことも分かっています。
立命館大学「574万円/経営学部」「580万円/生命科学部」、千葉科学大学「687万円/薬学部」「712万円/危険管理学部/2008年」
私立大学の中にはデータ開示していない学校も多いため全てのデータを見ることはできませんが、大学、学部によって「350万円」から「1000万円」もの差があることが分かります。
助教として年収をアップさせたい人がやってほしい4つのこと
助教の年収は職を得る大学によって大きな差が出ることは先ほどお伝えしました。
一番良いのは高い給料の出る大学に就職することですが、大学のポストは非常に狭き門です。
まずは待遇の良いラボに入れるように、そして助教になってからは院生指導や論文の執筆を頑張る必要があります。
ポスドク・博士課程の間に強いコネをつける
助教のポストは常に空いているわけではありません。
ポスドクや博士課程の学生の数に対して助教の枠がとても少ないのが現実です。
そのため、多くの学生やポスドク生が助教の仕事を待っている状況です。
助教の仕事は公開で募集することが少なく、大半は研究所の教授の内々で適任者探しをしています。
そのため、力のある教授のいる研究所に在籍していることが有利になります。
博士課程、ポスドクの間に教授や上の人たちとの間に強いコネを作っておくことで、ポストが空いた時に紹介してもらえるのです。
大学院生指導を行う
実際に助教の仕事を得た上で「収入をいかにして増やすか」という問題が出てきます。
助教の仕事の一つに学生指導がありますが、大学院生を指導することで「大学院指導手当て」が付きます。
この手当は月1万円程度ですが、3ヶ月以上出張をした場合は支給されないので注意が必要です。
入試の時期には「試験監督」を
センター試験の試験監督をした場合は、翌月に「入試手当」が支給されます(2万円弱程度)。
2日間での金額になりますので、あまり割が良いとは言えませんが収入にプラスにはなります。
論文を書く
一般的に助教という立場は最長10年が雇用期限になっています。
5年前後で次の仕事を探さなければならないため、非常に不安定です。
そのため、助教の仕事をしている間にできる限り多くの良質な論文を書くようにしましょう。
再雇用されないことが判明している場合は、別の大学の助教か講師の仕事を探す必要があります。
学生指導に時間を取られて自分の研究時間がない、という事態にならないようにしましょう。
これから助教になる人へのアドバイス
大学を卒業して、修士、博士と長い時間自己投資をした先のポストとしては、助教のポジションは少し不安定に感じる方も多いでしょう。
残業手当も出ないことがほとんどのため、働いている時間に対しての報酬は多いとは言えません。
同年代の友人たちの方がはるかに年収が高い場合も多いでしょう。
助教は、給料よりも自分のやりたい研究をしたい、学問の世界に身を置きたいという方にオススメです。
助教になるためには、大学教授や力のある人たちとの間の円滑なコミュニケーション能力も必要となる仕事なので、将来のために人間関係を上手く築く練習も大切です。
さいごに
助教の年収は大学によって大きく異なるということが分かっていただけたでしょうか。
助教の多くは数年で次の職場を探さなければなりません。
自分の研究に学生指導、と非常に忙しくやりがいのある仕事ではありますが、将来が不安な立場です。
そのため時間を作って論文を書いたり、ネットワークを広げて次の仕事探しへの道もきちんと立てることが大事です。
テニュアトラック助教や講師への道を進むことができれば安定しますので、じっくりと好きな研究をすることができます。
大学教員のスタート地点でもある助教から、講師、准教授を目指してみてくださいね。
最終更新日:2020年2月13日