一級建築士の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
建築士を目指している方なら憧れの資格の「一級建築士」。
非常に難しいですが、その分建築設計という仕事の幅が広がるため、受験希望者は毎年非常に多くいます。
建築士の資格は主に木造建築士・二級建築士・一級建築士の三つの資格に分かれますが、建築士の資格の最高峰の一級建築士の給与や年収はどんなものなのでしょうか。
今回の記事では、この一級建築士の気になる年収や収入状況について解説していきます。
これから一級建築士を目指す皆さんは、是非参考にしてみてください。
一級建築士の平均年収は650万円~750万円が相場
まず、一級建築士の平均年収は650万円~750万円が相場です。
しかし、この年収は経験の浅い建築士から経験豊富な建築士をまとめて平均にした年収になり、今現在自分の年収クラスが妥当かという目安にはなりませんので注意してください。
一級建築士の年収・給料の構成要素
一級建築士の年収は、「基本給」「能力給」「ボーナス」の構成になっている場合が多くあります。
会社の業務形態によっては、ここに「歩合」という要素も加わってきます。
ここで言う一級建築士の歩合とはハウスメーカーなどで、「顧客と何件打合せをして契約に結びついた」や、契約後の設計打合せで「何件着工させたか」というのが歩合の考え方になります。
大手ゼネコン関係の職種であれば主にチームでプロジェクトをすすめていきますので、「歩合」という要素はなく「業績給」という項目になってくるでしょう。
基本給・能力給などはどうなっているの?
基本給は一級建築士でも二級建築士でも大きな差はありません。
最低賃金法で定められている金額に、会社規模や考え方によって金額が上乗せされます。
一方、能力給に関しては、建築士としてこれまでどんな経験をして、どのような業務をこなしてきたかが反映されます。
ここで注意したいのが、これまでの経験を活かした職種に就かないと能力給は高くならないことです。
例えば、一級建築士の資格を持っているものの業務経験はCADだけの場合の人が、顧客との打合せや行政手続き関係がメインの職種に就いたとしても、未経験として能力給が低く設定されてしまうということです。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
一級建築士の賞与については、会社の規模によって様々です。
最近の会社では年俸制をとっている会社も多いので、毎月の給与は高いがボーナスなどはなく、「決算賞与」という名目で年に1回ほどボーナスのような形で支給される会社も数多くあります。
ボーナス制の場合は基本給の1.5倍や2倍という考え方が一般的ですので、毎月の給与の1.5倍や2倍などではないことに注意してください。
決算賞与としてボーナスを支給される場合は、文字通り会社の利益に関して社員への還元という形になりますので、正直会社の「さじ加減」で金額が変わってきます。
各種手当てはどういったものがある?
一級建築士の各種手当としては、主に「資格手当」と「責任者手当」というものが多くあります。
「資格手当」は、一級建築士として会社に登録して会社の業績や業務に貢献する手当となります。
一方「責任者手当」ですが、これは様々な呼び名があります。
多くあるのが「監理建築士手当」という名目でしょう。
この場合一級建築士としてだけではなく、より責任の重い監理建築士として会社の代表扱いになります。
その分手当も高く支給されますが、責任も非常に重くなります。
違法行為を行うと直接自分に跳ね返ってきますので、日々の業務にも慎重に対応しましょう。
一級建築士の雇用形態別の年収を見る
一級建築士の雇用別の年収はどうでしょうか。
雇用形態としては正社員・契約社員・アルバイト・個人事業主があります。
それぞれ年収にどのような違いがあるのかを解説していきます。
正社員の場合の一級建築士の年収
正社員の場合の年収は、20代で約300万円~350万円前後が多いでしょう。
一般的な20代と比べて比較的高収入が見込まれます。
30代になってくると、経験などにもよりますが、400万円~500万円前後となってきます。
40代、50代になると管理職になる方も多いので、700万円~1000万円ちかくまで年収は上がってくるでしょう。
しかしその分、業務に関しては一級建築士の責任が非常に重くなっていますので、気軽に休暇を取れないことも覚悟しておく必要があります。
契約社員の場合の一級建築士の年収
契約社員の場合の年収は二極化されます。
社員としての福利厚生や保証などは受けられない分毎月の給与が高いケースと、定年退職後に資格を活かして建物の検査などの業務だけを行う業務があります。
前者の場合の給与は高めで年収が400万円程度になるケースもありますが、後者の場合は年収も250万円~300万円位が多いようです。
いずれにしても、一級建築士としての資格が活きてくる業務になりますので、一般職よりは給与は高くなります。
アルバイトの場合の一級建築士の年収
最近副業も認められつつありますが、一級建築士もアルバイトでの業務もできます。
この場合、本格的な設計以外では、毎月5万円前後が妥当かもしれません。
アルバイトの内容としては、プラン作成や建築物のボリュームチェックなど、インターネット上で多数見受けられます。
しかし、単価が非常に安いので、本業とはせずに趣味の延長程度に考えておいた方が無難と言えるでしょう。
また、CADなどのアルバイトもありますが、いずれも一律の時給になっている場合がほとんどですので、一級建築士として時給が上ることは少ないと言えます。
しかし、育児や子育てにてパートなどをする場合は、資格を持っていると採用率がグンと上がります。
個人事業主の場合の一級建築士の年収
一級建築士で個人事業主の場合の年収はバラバラと言えます。
設計事務所を個人で構えた場合では、入ってくる仕事の量や質で収入も変化します。
住宅や施設などの意匠が主な仕事なのか構造計算がメインなのかによっても収入は変化します。
著名な建築家やデザイナーとなれば、設計料として数百万円の収入が1物件で手に入れることができますが、一握りの建築士のみが対象となっているのが実情です。
実際では建築士として独立した場合、定期的な仕事が入ってくるのであれば、年収としては450万円~550万円前後が現実と言えるでしょう。
一級建築士は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
一級建築士の年収は最高でどれくらいになるのでしょうか。
前述したような著名なデザイナーともなれば、年収は数千万円になる可能性があります。
しかし、皆さんが知りたいのは、現実的に会社勤めとした場合の一級建築士の年収でしょう。
会社勤めの一級建築士の年収は、最高でおおよそ1500万円前後が最高年収と言えるでしょう。
しかし、この年収は一級建築士の資格だけではなく、実務・経験・管理能力・危機回避能力・提案力・コミュニケーション能力などあらゆる面で有能と認められた場合になります。
これから一級建築士を目指していくのであれば、建築のことだけではなくあらゆる分野についても勉強するつもりでいた方が、年収を上げるコツと言えます。
一級建築士はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
年収が高くなる勤務先とは、どのようなところでしょうか。
これが分かれば皆さん苦労しないと思います。
しかし、残念ながら「必ず年収が高くなる会社」は存在しません。
ここでは会社の規模や職種で年収が高くなる可能性について解説していきます。
求人募集は会社の良いところしか記載しません。
最近では転職サイトの口コミなどを参考に勤務先を選ぶケースもありますので、様々な面から就職先の情報を入手するようにしましょう。
ゼネコン関係で働く場合の年収
ゼネコン関係ですと、一般職の想定年収が700万円〜800万円になります。
一級建築士は様々な建物の設計が可能な資格です。
その分大規模な商業施設や官公庁などの施設もあるでしょう。
このように大規模な建築物を扱う職種の場合は利益も大きいため、年収も高くなりやすいと言えます。
また、一級建築士の資格が存分に発揮できる環境とも言えます。
しかし、チーム制が多い為にスタンドプレーは禁物になりますので、自分で納得がいかないデザインでも協力し合う「妥協の心構え」が必要とも言えます。
住宅メーカーで働く場合の年収
住宅メーカーの場合、一般職の想定年収が700万円前後となります。
住宅メーカーで働く場合は物件数も多く、自分好みのデザインや設計ができると言えます。
それだけ個人の裁量権があるのが住宅メーカーの設計の特徴です。
しかし、1棟あたりの単価は大型建築物と比べると利益も少ないため、年収はゼネコン関係の会社より少なめと言えるでしょう。
また、住宅の場合は二級建築士でも設計できるため、一級建築士としての活躍の場は少ないと言えます。
住宅メーカーでの一級建築士は資格手当も少なめになりますので、高年収を目指すには不向きかもしれません。
大手建築会社で働く場合の年収
大手建築会社で働く場合は、一般職の想定年収が600万円〜700万円前後で、非常に安定していると言えます。
また、会社によっては歩合制も導入しているので、やりがいも感じるでしょう。
場合によっては年収で1000万円前後になるケースもあります。
しかし、大手建築会社の場合は業務内容がシステム化され分業となっていることも多いので、自分好みの設計やデザインはある程度妥協することも必要でしょう。
また、一つの業務に集中するので、建築に必要な他のスキルを吸収することも容易ではないと言えます。
中小建築会社で働く場合の年収
中小の建築会社で働く場合、一般職の想定年収は700万円前後と高めですが、福利厚生や安定性などはイマイチと言えます。
また、月収は高めですがボーナスがないこともあります。
しかし、建築全般のことに非常に詳しくなるため、一級建築士としてのスキルは非常に上がると言えます。
一級建築士としてのスキルを磨き将来に役立てることを考えるのであれば、中小の建築会社の業務内容は過酷ですがその分様々な経験ができるので、「学びの時期」と捉える環境としては最適です。
これから一級建築士になる人へのアドバイス
一級建築士になる為には2パターンあります。
一つは専門の建築学校を卒業して最短で2年・最大4年以上実務を経験することで受験資格が得られます。
もう一つは、二級建築士などを取得後、4年以上の実務経験が必要になります。
一見すると大卒以上でないと受験資格がないと思われがちですが、中学校卒業のみでも受験資格は発生するので安心してください。
世の中には学歴がない建築士も大勢いて活躍しています。
これから一級建築士を目指そうと考えている方は、自分がどんな建築士になりたいかをイメージしてください。
イメージすることで、どんな経験や知識が必要か見えてきます。
世の中には、一級建築士の資格を持っていても「宝の持ち腐れ」となっている方も多くいます。
そのようにならない為にも、建築士としての将来設計を行いましょう。
一級建築士の年収の決まり方や、年収が高い人の条件・スキル・特徴は?
一級建築士の年収の決まり方はどうでしょうか。
資格を持っていれば年収が高いというわけではありません。
経験や知識などのスキルが非常に重要になってきます。
一つのことだけに特化することも重要ですが、その仕事以外のことには対応できないため思う様に年収が上らないこともあります。
これらを踏まえて、建築士の仕事に従事してください。
それでは、どんな人が年収が高くなる傾向にあるか解説していきます。
1.合理的に物事を考えられる人
建築はコストというワードが課題になることが多い職業です。
そのため、ある程度合理的に考え無駄を省く設計ができる人が重宝されます。
そのような人物は仕事も合理的に進めるため作業速度も速いので、少ない時間で大量の業務ができます。
そのため会社からの評価に繋がり、年収が上がるのです。
2.想像力豊かな人
建築設計は想像力が非常に大事です。
今描いている設計の部分が実際にはどのようになるかを立体的にとらえる想像力は、必須と言えます。
想像力が豊かな人はミスも少ないため周りから信頼され、重要な仕事も任されます。
それが年収のアップに繋がるのです。
3.協調性がある人
建築士の仕事はデザインと切っても切れない部分があります。
そのため、意固地な人は自分の設計やデザインの訂正をされると気分を害し、チームの和を乱したりクライアントの機嫌を損ねる可能性があります。
妥協精神ということではありませんが、周りをよく見て「なぜ否定されたか」を考え、協力体制をとるという考え方も必要でしょう。
このような協調性がある建築士はチームリーダーや部課長に抜擢されますので、必然と年収も上がるのです。
4.提案力がある人
一級建築士の資格を持っていてどんなに優れた良いデザインの設計をしても、世の中に出なければ「絵に描いた餅」になってしまいます。
提案力が高い建築士はクライアントとの打合せもスムーズで物件の受注にも繋がりやすく、結果的には会社の利益に貢献していると考えられます。
そのため年収が高くなるのです。
さいごに
一級建築士は建築士の資格の最高峰です。
その分様々な建築の設計やデザインができます。
「設計」という作業が好きな方には最高の仕事だと言えます。
しかし、その分クライアントの財産や命を預かる業務になりますので、その覚悟も必要です。
年収が上がるということは、建築士としての仕事も充実しますが責任も伴うということを忘れないようにしましょう。
最終更新日:2020年6月12日