放射線技師の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
世の中には数多くの職業がありますが、それぞれの分野で資格を取得して働いている人たちを資格職と呼ぶことができます。
取得資格は様々ありますが国家資格のことを指す場合が多く、看護師や薬剤師など医療系資格のほとんどが国家資格です。
今回は、そんな医療系国家資格の一つである診療放射線技師に注目し、年収やどのような給与形態なのかなどを紹介していきます。
診療放射線技師の平均年収は約500万円が相場
診療放射線技師は、病院などの医療機関において、医師または歯科医師の指示に基づき放射線機器などを使用した検査を実施する職種のことです。
各医療機関では1名から数名、大学病院や公的病院のような大きい病院では十数名が勤務しています。
専門学校や大学を卒業し、国家試験に合格することで資格取得が可能となります。
医療資格ですので、取得者のほとんどが医療機関で勤務しますが、中には放射線機器関連の企業などへ就職する人もいます。
今回は、医療機関で働く診療放射線技師についての記事となります。
診療放射線技師の収入ですが、平成30年の賃金構造基本統計調査によると、平均年収は約513万円となっており、男性が約532万円・女性が約455万円という結果です。
他の医療系国家資格と比べても、同程度の年収です。
このデータは、診療放射線技師は男性が多いこと、放射線を扱うという危険性、医療機関以外に勤務している診療放射線技師との収入差など、実際の診療放射線技師の状況とは異なる実情があり、医療現場の声より少し高めのデータになっていると考えられます。
診療放射線技師の年収・給料の構成要素
診療放射線技師の年収は、基本給+職務手当+残業や当直等の変動給+ボーナスという構成になっていることが多いです。
その中でも年収に大きく影響する部分が、職務手当と変動給の部分となります。
資格取得に対してや役職について支払われている手当が職務手当、残業や夜勤、当直やオンコール対応など時間外勤務に関して支払われている給料が変動給となります。
これらの部分、特に変動給に関しては時間外の勤務数に比例しますので、年収に直接影響します。
基本給・職務手当・変動給はどれくらい?
ここでは毎月の給料である月給についてです。
月給の基本となるのは、基本給・職務手当・変動給となっていて、ここに医療機関ごとの諸手当が付随しています。
では診療放射線技師の基本給の相場はというと、平均は月20万円~25万円となっており、専門学校卒業・大学卒業や地域によって異なります。
職務手当は、診療放射線技師関連の資格を取得していたり、役職などがあると数万円程度支給されています。
また変動給にあたる残業手当・夜勤手当・当直手当・オンコール対応手当などは基本給との相関関係もありますが、相場を紹介しておきます。
- 残業手当:時給1,800円~2,500円
- 夜勤手当:1回15,000円~20,000円
- 当直手当:1回5,000円~8,000円
- オンコール対応:1回3,000円~5,000円
このようになっており、回数によって月給が大きく変動することもあります。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
ボーナスについては、基本給の3ヶ月分~5か月分という医療機関が多く、支給回数は夏・冬の2回がほとんどですが、夏・冬・年度末の3回の支給がある医療機関もあります。
金額換算すると、トータルで60万円~120万円というのが相場になっています。
ただ、この金額差は民間病院と公的病院との差によって生じているもので、公務員となる公的病院は民間病院に比べて支給額が多くなる傾向があります。
各種手当てはどういったものがある?
上記で触れた時間外手当の他に、診療放射線技師ならではの手当を言うと、危険手当というものがあります。
放射線を扱うということで、リスクを考慮した手当となっています。
しかし、この危険手当を基本給や職務手当に含んでいる場合もあり、給料明細等に項目として該当がない場合もあります。
診療放射線技師の年収を新卒や雇用形態別に見る
診療放射線技師全体の年収や手当についてご紹介してきましたが、ここでは新卒の場合や転職する場合、またパートなど時間給で働きく場合などに分け見ていきます。
新卒の場合の診療放射線技師の年収
新卒の初任給は、基本給月17万円~19万円、その他の手当などを合わせたトータルで月給23万~25万円程度が相場となります。
まだ経験が少なく夜勤や当直などの時間外勤務に対応できないので、変動給にあたる手当がつかず、年収は300万円程度となります。
新卒時より経験を積み、独身で時間的に余裕のある若年層の放射線技師は、夜勤などの回数が増える傾向にあります。
その結果、変動給部分が増え2年目以降の年収が数十万円以上増えることもあります。
社会人が転職する場合の診療放射線技師の年収(正社員)
新卒から働き始めて転職を検討することが多い30歳前後となると、診療放射線技師としての経験が8年~10年となります。
新卒から8年程度勤務していた場合の基本給は月23万円~25万円、手当などを含めるとトータルで月給30万円~40万円程度となります。
年収で見ると、400万円台前半となります。
この状況を踏まえて転職する場合、現状よりも条件の良い勤務先を目指すこととなるので、30万円台後半~40万円台後半の月給となり、年収では400万円後半以上の条件が見込まれます。
パート・アルバイトの場合の診療放射線技師の年収
正社員ではなく、パートやアルバイトでの収入を見ていきます。
診療放射線技師がパートやアルバイトとして勤務する場合は、午前中だけや夜間診療だけ、週に3日などといった勤務体系が多く、パートやアルバイトの年収は時給×年間時間数となります。
様々な働き方があるので、モデルケースとして週5日4時間勤務を想定すると、月に20日間の勤務した場合80時間勤務となり、年間960時間となります。
診療放射線技師の時間給の相場としては1,800円~2,200円程が考えられるので、年収換算すると約170万円~約210万円となります。
パートやアルバイトでこれだけの収入があれば、正社員にこだわらずに働くという方法も想定可能です。
放射線技師は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
それでは、診療放射線技師の資格を取得することで、どこまでの年収を目指すことが可能かというところを見ていきます。
平成30年の賃金構造基本統計調査によると平均513万円で、その多くは350万円~550万円であり、管理職であれば500万円~700万円となっています。
では最高年収はどれぐらいかというと、データからピーク時の年収を見てみると約750万円となっています。
その人物像としては以下のような条件があります。
- 管理職であること
- 経験年数が30年以上
- 年齢が50歳代
放射線技師はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
診療放射線技師として資格を活かしながら働くことが可能な場所を、公務員・民間病院・企業の3パターン挙げてみました。
それぞれの勤務形態などの違いから、同じ資格であっても年収は変化します。
業務内容は、事務的業務・検査業務・開発業務などのようにそれぞれ異なり特徴があります。
公的病院や行政職員など公務員として働く場合の年収
保健所職員や公立病院で働く診療放射線技師は、勤務先の公共団体の規則などで給料表により定められた給与があります。
傾向としては、新卒時は低く設定されていますが昇給がほぼ約束されており、経験年数と共に年収も増加します。
またボーナスに関しても、民間より支給額が多い傾向です。
長く働き続けることで年収が高くなります。
民間病院で働く場合の年収
民間病院で勤務する場合は、即戦力としての採用ということもあり、3パターンの中では新卒時から高めの年収であります。
しかし、公務員のように決まった昇給がないところもあり、年収の増加はあまり期待ができません。
しかし、民間病院には公務員のような給与規定が少ないので、資格を取得したりするなどのスキルアップを材料に、個々での賃金交渉も可能です。
上手く交渉し、平均年収を上げることで生涯収入をアップさせましょう。
民間企業で働く場合の年収
放射線機器関連企業などで働くことが可能な診療放射線技師ですが、この場合は医療機関のような賃金の相場よりも会社の経営状況に左右されることが多く、一概に比較はできません。
しかしその反面で、勤務先の経営状況などによっては、他の2パターンでは不可能な年収額を貰える可能性もあります。
年収に注目するとこのような違いがありますが、働き方や勤務環境などを考慮すると年収だけでは測れない部分もあります。
放射線技師の年収の決まり方や、年収が高い人の条件・スキル・特徴は?
診療放射線技師としての業務をするだけでなく、働き方を工夫したり新しくスキルを習得したりすることで収入を変化させることも可能です。
また、医療機関内の委員会活動や他に代わりのきかない役割を任せられることで、評価をされる要因にもなり得ます。
評価されるような働き方は、他部署との調整能力や部署内の管理能力などを発揮しながら働くことです。
これは下記で紹介するようなスキルを活かす働き方でもあるので、高評価を受ける可能性があります。
1.マンモグラフィ認定技師のスキル・経験がある
近年、乳がん検診の受診率の向上に伴い、認定資格を持つ診療放射線技師の需要が高まっています。
そのため認定を受けている技師は、基本給や手当で恩恵を受けられる可能性があります。
また転職時にも有利になり、採用されやすくなるだけでなく好条件を勝ち取れる要因にもなります。
2.医療情報技師などの画像情報関係の認定資格取得している
画像のデジタル化が進み、PACSやRISと呼ばれるシステムの導入により、医療機関内でシステム管理の担当者などが必要になります。
その立場に必要な知識などを持つ医療情報技師は有効な資格であるので、医療機関内の業者相手の窓口ともなり欠かせない役割となる可能性もあります。
そうなることは手当がついたり、ボーナスの評価にも繋がります。
これから放射線技師になる人へのアドバイス
診療放射線技師を目指して進学を考えている人、専門学校や大学に通っている人、国家試験に向かって猛勉強中の人と様々いる診療放射線技師直前の人へ向けて伝えたいことがあります。
それは、資格職ということだけの理由で目指すのは良くないということ、医療に興味があることが前提であってほしい職業であるということです。
なぜなら診療放射線技師は、他の医療資格職よりも就職してからの現場で学ぶことで初めて成長できるという感覚が強い資格です。
学校では、放射線機器を使って患者さんに検査を実施することができません。
学生時代に経験できるのは、実習時の数ヶ月だけです。
その経験だけで就職するにも関わらず放射線機器を操作すること、患者さんとの関わりを持つこと、教科書ではない実際の医療現場での検査画像に対応が求められます。
これら全てをいきなり目の前にすることに役立つのが「医療に興味がある」ということです。
詰め込んだ知識ではなく、興味を持って身につけた情報が解決をしてくれます。
そして、単純に装置を操作して画像検査を実施するだけではなく、患者さんに向き合いしっかりと協力を得ること、患者さんの病状や検査目的の理解、それを評価できる画像データを医師に提供することが求められるのが診療放射線技師です。
これを前提としてスキルアップをすることが、今回ご紹介したように収入アップにも繋がります。
資格取得してから、医療機関に働きだしてからが、診療放射線技師としての第一歩です。
さいごに
診療放射線技師の年収について、様々な視点から注目してデータを参考に見てきました。
男女比の割合や年齢によって収入が異なること、50歳代経験30年となる管理職が診療放射線技師における年収のピークとなることなどが分かりました。
また勤務先によっても年収への考え方があり、環境と努力により年収を変化させることも可能となる職種でもあります。
そんな診療放射線技師の理想は、就職した後も定年まで学生時代以上の努力をすること、医療に興味を持ちながら働くことです。
こういった意識が将来の年収アップに繋がる可能性を広げるのです。
最終更新日:2020年1月23日