言語聴覚士の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
医療や介護の現場で働く「言語聴覚士」という仕事があります。
言語聴覚士は理学療法士や作業療法士と並ぶリハビリを行うセラピストです。
言語聴覚士は1997年に国家資格として制定されたばかりの比較的新しい資格ですが、超高齢社会の日本においてその需要は高まっています。
今回は病院や介護施設などの職場による収入の違いやキャリアアップについて、言語聴覚士の給料や賞与を詳しくご紹介します。
言語聴覚士の平均年収は350万円が相場
就職して1年目は賞与が全額支給されないため、350万円より低くなります。
また、地域によって金額が変わることはあるでしょう。
言語聴覚士の年収は決して高くありません。
ただしそれは、言語聴覚士は国家資格として認定されて日が浅く、平均年齢が低いことも要因です。
平均年齢が上昇すれば平均年収の額も上昇します。
言語聴覚士の年収・給料の構成要素
言語聴覚士は専門職であるため、基本給だけということはまずないでしょう。
この項目では収入の内訳について詳しく見ていきます。
基本給・能力給・歩合はどれくらい?
新卒の場合、基本給は20万円以下のところが多いでしょう。
言語聴覚士の資格取得年齢は様々です。
新卒とみなされるのは資格取得直後にあたります。
よって、一度離職してから言語聴覚士として再スタートをきる場合、初めは同年代より給料が低くなることは覚悟しなければなりません。
一部の大学では言語聴覚士の資格取得が可能であり、他の四年制大学と同じ年齢で卒業できます。
社会人経験の有無を問わず言語聴覚士のスタートを1年目と数えるため、新卒の場合は同年代の他職種と同程度の基本給です。
他の手当てを合わせると、年収はやや高くなることもあります。
能力給とは経験者に付与される手当です。
主に2年ないし3年以上の経験者に付与されます。
よって、言語聴覚士の業界内での転職はリセットされることなくキャリアアップできるシステムです。
1年程度の経験では新卒と同額になることが多いでしょう。
能力給は数千円~数万円まで様々です。
充分に経験を積んだ言語聴覚士の人材を確保する場合は、やや高めになるでしょう。
転職の際に経験を加味されますが、同一の職場で長年勤めたとしても能力給として支給されません。
同一の職場では単純に昇給扱いです。
言語聴覚士において歩合制は稀で、主に訪問看護において導入されています。
病院や有料老人ホームではあまり取り入れられません。
訪問看護の歩合制とは、何件訪問したか、という考え方です。
件数で評価される場合、給料に大きな差が出ます。
単価が高く、勤務時間中効率良くまわり続ければ、病院勤務より収入は良いです。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
職場により賞与はかなり違うようです。
病院だけを見ても大きな差があります。
新卒の場合、一年間の総額が30万円~60万円といったところでしょう。
賞与が支給される回数も異なるので注意が必要です。
各種手当てはどういったものがある?
言語聴覚士にはおよそ2万円程度の資格手当が付きますが、基本給に含まれて記載されている場合もあります。
他の職業と同様に、役職が付いて支給されるのが役職手当です。
言語聴覚士は資格取得者が少ないため競争相手が少なく、就職して数年で役職が付く可能性があります。
一部の医療機関や介護施設では言語聴覚士の夜勤があるようです。
夜勤は生活リズムが崩れやすいため一定の負担を負うことになりますが、その分手当てを厚くしている病院もあります。
病院は福利厚生が充実しているところが多く、住宅手当や通勤手当が比較的高額です。
基本給以外の収入も大きいため、充分に調べてから就職することをおすすめします。
言語聴覚士の年収を新卒や雇用形態別に見る
ここでは、言語聴覚士の年収を新卒や雇用形態別に見ていきます。
新卒の場合の言語聴覚士の年収
新卒1年目の場合、年収は300万円~350万円程度でしょう。
上述した通り、1年目は賞与が全額支給されないため、2年目以降はプラス10万円~20万円程度になります。
社会人が転職する場合の言語聴覚士の年収(正社員)
他職種や他業種から転職した場合は新卒扱いです。
言語聴覚士の経験を経た場合は経験者として給与面でも優遇されます。
専門職であるため、有用な人材であることが伝わればある程度のキャリアアップも期待できます。
言語聴覚士として収入を増やすために最も考えられるのが転職です。
一度仕事を覚えてしまえばどこへ行っても言語聴覚士がやることは変わらないため、待遇の良い職場を探すと良いでしょう。
パート・アルバイトの場合の言語聴覚士の年収
非正規雇用の言語聴覚士の時給は1,500円~3,000円程度です。
他のアルバイトと比べるとかなり高額ですが、訪問看護の場合、移動時間や書類作成時間がどこまで加味されているか確認してから就職することをおすすめします。
実質の時給としては1,500円~2,000円程度が多いです。
非正規であっても、労働時間が長ければ正社員に近い収入が得られます。
また、非正規の年数も経験年数として数えられるのでキャリアアップが望めます。
産休や育休で正社員でなくなったとしても、その後パートなどを経てキャリアアップできるのもこの仕事の魅力です。
言語聴覚士は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
最大で600万円台の求人を見たことがありますがごく稀です。
順調にキャリアアップして役職が付いたとしても、おそらく最大で600万円台が限界でしょう。
言語聴覚士の収入は医療保険や介護保険により成り立ちます。
一日に言語聴覚療法が実施できるのは480分程度で、それ以上保険点数が付きません。
よって、収入の上限が決められているのです。
一部、加算というシステムがあり別途収入が得られますが、それほど多くないため勤め先への貢献度は常に一定と言えます。
勤め先への収入を極端に増やせない以上給料も上がらないため、皆同じような給料になるのです。
言語聴覚士はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
言語聴覚療法を実施できる職場は数多くありますが、それぞれ給料が異なるため紹介します。
病院で働く場合の年収
病院で働く場合、上述した通り一日に取得できる医療保険の額が決まっているため、どの病院でもほぼ一定の給料です。
しかし、実際に患者さんのスケジュールを全て思い通りにするのは難しく、急変や新患などで予定が変わり、毎日上限までリハビリを実施することはありません。
次々と新患の入ってくる都市部の病院では満床であることが多く、収入が安定します。
一方、人口の少ない地域では収入が安定しません。
また、言語聴覚療法は入院患者の一部にしか実施されないため、偶然、言語聴覚療法対象者が多い時と少ない時があります。
入院患者だけでなく外来患者のリハビリも可能ですが、これらを上手く組み合わせた経営の上手い病院であればある程度の収入が見込めるでしょう。
1年目の年収は300万円~350万円程度です。
有料老人ホームや介護老人保健施設で働く場合の年収
有料老人ホームや介護老人保健施設で働く場合、給料に大きな差が出ます。
介護施設では、言語聴覚療法対象者は一部です。
対象者が少なくなれば当然給料も少なくなります。
一方で、言語聴覚療法に力を入れている施設においては充分な収入が見込めるでしょう。
給料が多い職場ではその分求められることが多いため、介護施設で働く場合は、その施設における言語聴覚士の役割をしっかりと見学させてもらうことをおすすめします。
巨大な施設に言語聴覚士が1人しかいないということもあるので、そういった場合、仕事を過剰に押し付けられる可能性があるので注意が必要です。
デイサービスで働く場合の年収
デイサービスは一日中個別のリハビリを実施することはありません。
患者さんというよりお客様と接する感覚が強く、評判が悪いと利用者が減ります。
よって、全国展開している施設や人気の施設は給料が高い傾向にありますが、評判が悪いと賞与が出ない可能性もあります。
訪問看護ステーションで働く場合の年収
訪問看護ステーションは需要が高いのですが、働き手が少ないため引く手数多です。
人材確保のため給料もやや高めに設定されています。病院と比べて月収が5万円~10万円程度高くなります。
働き手が少ないのは、相手の自宅まで運転しなければならないことや相手の家で訓練しなければならないこと、そして周りに頼れる人がいないので自分自身で解決しなければならないことなどが要因として挙げられます。
1人でやっていく方が性に合うという方は、給料の高い訪問看護がおすすめです。
言語聴覚士の年収の決まり方や、年収が高い人の条件・スキル・特徴は?
言語聴覚士の就職先として最も選ばれるのは病院です。
病院の給料はどこもあまり変わらないでしょう。
年収を大幅に増やしたい場合は、病院以外に転職するか計画的に病院を転職しなければなりません。
この項目では収入を増やす具体的な情報を紹介します。
1.キャリアが長い
最も単純な収入を増やす方法は長年勤めた経験を武器に転職することです。
キャリアを積んだ言語聴覚士は貴重な存在であり、いくらでも転職先を探すことができます。
3年程度のキャリアがあれば微増は期待できますが、7年~8年以上のキャリアがあれば即役職に就ける場合もあるため、収入を大幅に増やせる可能性も高くなるでしょう。
2.計画的に転職する
転職のタイミングも重要になります。
転職する際の退職金も重要で、通常2年~5年の勤務で退職金が受け取れるようになります。
退職金が受け取れるようになってから転職することも大切です。
また、賞与の区切りとなる時期に退職すれば、転職前も転職後も満額受け取れる可能性があります。
賞与のタイミングで転職する人が多いため、同時期に求人が増えて転職しやすいです。
逆に言えば、求人の少ない時期があるため、自分を安売りしないためにも求人数の多い時期に転職することをおすすめします。
3.自分の名前を売る
言語聴覚士は専門職であるため、業界のスペシャリストを目指すのも一つの手です。
有名になれば書籍の出版やインターネット上の活動、講演会の開催なども実施できます。
全国的に名前が売れるのはごく一部の人のみですが、こういった活動は夢物語ではありません。
言語聴覚士は歴史の浅い職業です。
また、重要性を認知する人が徐々に増えている現在において、有料の講演会は各地で実施されています。
講演できるほどのキャリアを積んだ人自体が少ないため、ある程度の経験を積んだら誰に声がかかってもおかしくないのが現状です。
4.病院以外で勤務する
病院の仕事のみで収入を増やそうと思っても限界があります。
大幅に収入を増やしたい場合は介護施設に転職するのも一つの手です。
最近ではリハビリスタッフがデイサービスの管理者となることがあります。
デイサービスは高齢者に楽しんでもらうことや活動的になってもらうことが主の目的です。
よって、一日中リハビリすることはありませんが、主に施設の利用時間によって料金が発生しているため、リハビリを実施していない時間でも送迎や昼食の提供、レクリエーションの手伝いでも収入は得られるのです。
利用者が施設を一日利用する場合、一日の利用料と加算という追加の料金を支払うことになります。
リハビリを実施すると追加料金が発生するため、ある程度リハビリスタッフがいた方が経営状態が良くなるのです。
よって、リハビリによる加算が取れる言語聴覚士も重宝され、管理者として充分な収入を得て働くことも可能なのです。
言語聴覚士の年収査定で大事なのは経験年数
言語聴覚士として活発に活動し、ある程度信頼が得られていれば他の医療施設や介護施設から声がかかることもあります。
いわゆる引き抜きです。
しかし、通常は経験年数のみで給料を設定します。
経験年数が長いほど高い収入が見込めるでしょう。
これから言語聴覚士に就く人へのアドバイス
これまで見てきた通り、言語聴覚士の収入は、働いた量と直結しています。
医療保険や介護保険が使える訓練やサービスを提供できる量が多いほど収入は上がるのです。
よって、給料が多いほど仕事量も多いのが一般的です。
さいごに
言語聴覚士の収入は平均レベルです。
決して多くありませんが、業績によって賞与が大幅に減らされることは少ないため収入は安定していると言えます。
理学療法士や作業療法士と比べて言語聴覚士の役職者が少ないのは事実ですが、国家資格として認定されてまだ20年程度しか経っていないですし、言語聴覚士は絶対数が少ないのが現状です。
よって、決して不遇な扱いを受けていることはありませんし、今後は社会的地位も向上していくと思われます。
一度資格を取得すると更新の必要がないため、ある程度の収入を持続できるのが言語聴覚士の強みです。
最終更新日:2019年12月18日