大学教授の年収を徹底解説|給料・賞与(ボーナス)・各種手当
高等教育機関である大学の教育・研究を担う大学教授は、社会的な地位も高く憧れの職業の一つではないでしょうか。
安易に就ける職業でもないので、その仕事の内容や年収についても見えにくいこともあり、様々な職業に従事している方たちの関心事になっています。
大学は企業のように営利を追求する組織ではないので、教授などの職位による身分の保障や比較的安定した収入が得られます。
一般的に大学教授は高収入という印象がありますが、職位や年齢、また担当する授業時間数などによって収入の多寡があります。
今回の記事では、大学で教員や学生を支援する職員として働いていた筆者の視点から大学教授の年収を解説し、「年収の相場」や「年収の決まり方」「様々な手当」についてご紹介していきます。
大学教授の平均年収は1100万円が相場
概ね大学には、年齢や経歴を基にした本俸表があります。
大学教員には、講師・助教、准教授、教授と職位があり、同じ年齢でも教授が最も高い水準の本俸となります。
大学教授の年収の相場は、900万円~1400万円と言われています。
一つのポイントとして、教授にいきなり就く教員はまずあり得ません。
講師・助教、准教授を経て教授になるのが一般的で、45歳ぐらいから50歳前後に教授の職位になることがほとんどです。
今回の年収の相場もこの年齢を想定した額となっています。
大学教授の年収の決まり方
大学教授の年収は、基本的には大学の給与規定にある本俸表(専任教職員本俸表)により決められます。
年齢・経歴から相当する本俸が決められ、本俸の1年分の給与や期末手当、各種の手当を合計した額が年収となります。
本俸ですが、年齢・経歴が増すごとに昇給するので、その額に応じて年収も増えていくことになります。
大学教授の年収・給料の構成要素
大学教授の年収・給与ですが、その内訳は「本俸」「期末手当」「増担手当」「大学院手当」「家族手当や住宅手当」等となっています。
今回は45歳の教授を想定し、年齢・経歴に該当するであろうと考えられる本俸を基に進めていきます。
基本給・能力給・歩合はどれくらい?
「本俸」は、年齢や経歴に相当する額が当てはめられます。
教授で年齢45歳とすると、60万円前後が相場と言われています。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
「期末手当」は企業で言うボーナスに該当し、本俸や諸手当を加算した額に対して夏と冬に支給されます。
年間、4.5ヶ月~5ヶ月分が相場だと言われています。
各種手当はどういったものがある?
手当には企業や官公庁でも支給される家族手当や住宅手当がありますが、企業では見られない大学で支給される特有の手当として「増担手当」と「大学院手当」があります。
「増担手当」は、企業で言う超過勤務手当(残業手当)に近似します。
大学教員は、「教育」という業務において担当時間(義務時間)があり、必ずこの時間に相当する授業科目を担当しなくてはなりません。
一例ですが、大手の私立大学では8時間とされており、概ね講義科目4コマの授業を担当するする必要があります。
この担当時間を超えた時間について科目を持つ場合、1時間につき増担手当が支給されます。
相場としては、5,000円~7,000円と言われています。
担当時間数と大学教員との関係で一つポイントありますが、理系の教員は実験科目や実習科目を担当している場合が多く担当時間も多い傾向が見られます。
「大学院手当」ですが、この手当を説明する前に大学における大学教員の大学院への任用について概要を説明します。
多くの大学が大学院を設置していますが、大学には学部という組織と研究科と言われる組織で構成されています。
大学院は、この研究科に該当します。
一例として、学部としての法学部、大学院としての法学研究科が存在することを意味します。
学部に所属する教授は、学部学生の教育・指導を行うことができますが、大学院生の教育・指導は基本的には行えないとされています。
大学院生の教育・指導を行うことができるのは、研究科に任用、要は採用された教授となります。
大学院は博士課程(前期課程)と博士課程(後期課程)からなり、博士課程(前期課程)は修士課程やマスターコースと同じです。
また、博士課程(後期課程は)は博士課程やドクターコースと同じとなります。
研究科に任用された教授の正式な名称も、博士課程前期課程任用教授、博士課程後期課程任用教授となります。
そこで、「大学院手当」に戻りますが、それぞれの課程に任用されている教員に対して支給されるのが「大学院手当」です。
「大学院手当」の支給額は大学によってもばらつきがありますが、博士課程(前期課程)を担当する場合も博士課程(後期課程)を担当する場合も、15,000円前後が相場とされています。
大学教授年収を雇用形態別に見る
こちらでは、大学教授の雇用形態別に見ていきます。
大学教員の年収は、教授といった職位、また専任か嘱託(非常勤)の違いで年収が大きく変わってきます。
専任の教員で教授職の場合の年収
私立大学で言うところの専任教員は、企業の正社員に相当します。
本俸表に基づく本俸を基本に期末手当や各種手当が支給され、また様々な福利厚生を受けることができます。
年収の相場としては、1200万円~1400万円と言われています。
大学教授が他の大学へ転職をする場合も、実情としては前職の大学の給与や待遇が勘案されることが多いようです。
嘱託講師(非常勤講師)の場合の年収
他大学から依頼(委嘱)を受けて他大学の嘱託講師として講義を担当する教授もいますが、この場合の給与の相場はいくらぐらいになるのか見ていきます。
大学教授で他大学の嘱託講師として出講する場合ですが、週1時間あたり概ね15,000円前後が相場となりますので、1コマ(週2時間)つまり講義科目を1科目担当した場合は30,000円前後となります。
給与面において本務校の所属を持つ専任教員と比較するとかなりの差があり、本務校の所属を持たない嘱託講師のみで生計を立てている大学教員は大学をいくつも掛け持ちしていることが実情のようです。
大学教授は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
大学教員にも教授などの職位に関係なく定年があり、私立大学では65歳定年が一般的です。
しかし、研究科(大学院)に任用されている教授の場合、教授会や研究科委員会での決議によって定年が延長されることがあります。
定年延長は1年ごとの更新となりますが、70歳まで延長することが可能です。
給与や待遇面においても変わることがないので、70歳まで定年延長を続けることができる教授は生涯における収入が大きく増えることとなります。
ただ、本俸は65歳のままで定年延長されるので1400万円前後となり、年収としてはこの辺りが最高額と言えます。
大学教授になるには
高等教育機関である大学において教育・研究を担う大学教授ですが、教育者として高度な知識を学生に授け、また研究者(学者)としてその業績を社会に還元するという極めて重要な職業となります。
社会における地位も高く、様々な分野から期待される職業とも言えます。
こうした点を踏まえると、まず大学院に進学し、このような専門且つ高度な知識や技量といった卓越した能力を修得する必要があります。
理系の大学教員の採用については、博士の学位を取得していることが前提条件となっていることが多いです。
大学院の博士課程(後期課程)に進学し、更に研究を深め博士の学位を持つことが必要となります。
大学には、助教・講師、准教授、教授と言った職位があり、いきなり教授で採用されることはまずあり得ません。
助教から始まり、研究業績を積み一段ずつ段階を経て教授に近づいていくこととなります。
職位が上がることを昇任と言いますが、助教・講師から准教授、更に教授へと昇任していくにも教授会や研究科委員会において研究業績の審議が行われ、決定されます。
その後、大学の最高議決体での了承を経て正式な決定がなされます。
大学教授になるには、一足飛びではなく、これまでの研究業績の積み重ねが極めて重要となります。
また、職位が上がることで、年収のアップに繋がることは言うまでもありません。
大学教授はどういった条件だと年収が高くなるか?
設置主体の差は?
一般的に国立大学よりも私立大学の方が年収は高い傾向にあります。
私立大学でも学生数や学部数など規模の違いにより本俸や手当の額に差がありますが、大手の大学では概ね高い水準の傾向にあります。
学部や研究分野の差は?
学部や研究分野について、年収に対する大きな差はありません。
研究分野の専門性に対しても、手当などが支給されることはないです。
研究業績の差は?
大学教授が執筆する論文や国内外の学会での研究発表、社会に対する研究の貢献度など研究評価に対する評価制度を大学の情報発信の一つとして構築していることが多いですが、研究評価に対する手当などが支給されることはありません。
また、文部科学省からの研究費を獲得して行うような研究に対する研究評価も、大学教授個人の研究評価には繋がりますが、これに対する手当などが支給されることはないでしょう。
大学教授では、博士課程(前期課程・後期課程)を指導できる大学院教員になることで大学院手当が加算され、年収が増加する可能性は考えられます。
大学教授で年収をアップさせる方法
授業科目の担当時間数を増やす
大学の教員には義務時間として担当時間がある点と、担当時間を超える時間については増担手当が支給される点を前に説明しました。
担当する授業科目を増やし、担当時間数の増加により増担手当をより多くするという方法があります。
しかし、教員の負担が大きく、また研究に割り当てる時間が持てなくなるため得策ではありません。
また教育の質を担保できないという状況も生じてきます。
主任や長などの役職に就く
大学には、学部長や所長、センター長、主任などの多くの役職があります。
この役職には、役職手当が支給されます。
就任している月数分支給されることになりますので、年収につきましても上がることになります。
大学教授で年収が高い人の条件・スキルは?
大学教授で年収が高い人は、やはり専任として同じ大学に長く勤めている点が挙げられます。
勤続の年数により本俸も順に上がっていくので、本俸を基本としている給与体系では年収も上がることとなります。
国家資格を持っていることでそれが給与に反映されるということはなく、年収が増えることもありません。
研究業績に対する直接的な反映、企業で言う能力給のような制度はありません。
しかし、研究業績を上げることで教授から研究科(大学院)の博士課程(前期課程)や博士課程(後期課程)に任用されることもあり、大学院教員になることで大学院手当が支給され、年収のアップに繋がる可能性があります。
これから大学教授になる人へのアドバイス
大学教授は社会的な地位も高く、年収も1000万円を超えるような非常に魅力ある職業です。
大学教授と言うと研究者のイメージが強いですが、研究に専心するだけでなく教育者としての職責も負い、安易な気持ちで就けるものではありません。
まずは高度な専門知識や技量といった卓越した能力を修得し博士の学位を取得するため、大学院に入学しみっちりと学習や研究をする必要があります。
助教として専任教員に採用が決まったとしても、教授に到達する道のりは遠いものと覚悟が必要です。
研究業績を上げるために論文の執筆や国内外での学会発表、教育においては魅力ある授業の展開や学生の指導とやりがいはありますが、背負う仕事は数多くあります。
また、学部など組織における人間関係にも気を配らなければなりません。
研究に生涯をかけて専心でき、人を育てるという教育にも身を投じられる方は、大学教授を目指されてはいかがでしょうか。
さいごに
大学教授について年収という切り口からご説明しましたが、主に私立大学の教授に対する一般的な視点からの考察ですので、国立大学とは若干の違いもあるかと思います
大学教授への道のりは険しいものがありますが、非常にやりがいが感じられる職業です。
これから大学教授という職業を目標とされる方に、参考の一つとしてお読みいただけければ幸いです。
最終更新日:2020年2月4日