大学教員の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
大学における教育や研究を担う大学教員ですが、社会的なステイタスも高く、大きな信頼と期待を寄せられる職業の一つではないでしょうか。
容易に就ける職業ではないので、その仕事の内容や年収についても透明度が低く、様々な職業に従事している人たちからも関心が持たれています。
また、職業選択を控えている大学生からも、安定性や自由度の高い働き方について憧れの職業となっています。
一般的に大学教員は高収入という印象がありますが、大学教員の職位や年齢、また担当する授業時間数などによって収入の差があります。
こうした点を踏まえて今回の記事では、大学教員や学生を支援する職員として大手の私立大学に勤務していた筆者の視点から大学教員の年収を解説し、「給与の構成」「賞与(ボーナス)」「各種手当」についてご説明していきます。
大学教員平均年収は700万円~800万円が相場
大学には、給与規定に年齢や経歴、職位を基本にした本俸表があり、支給される月給や賞与が決められます。
また、大学教員には、助教・講師、准教授、教授といった職位があり、同じ年齢や経歴年数でも教授が最も高い給与水準となります。
大学教員は、助教・講師から准教授、更に教授へと昇進していき、年収も職位がステップアップすると同時に上がっていくこととなります。
こうした職位に相当する教員全ての年収を平均化すると、大学教員の年収は概ね700万円~800万円が相場と言えるでしょう。
大学教員の年収の決まり方
大学教員の年収は、基本的には大学の給与規定にある本俸表により決められます。
年齢・経歴から相当する基本給(本俸)が決められ、本俸の12ヶ月分の給与や期末手当、各種の手当を合計した額が年収となります。
大学教員の年収・給料の構成要素
大学教員の年収・給与ですが、その構成としては「基本給(本俸)」「賞与(ボーナス)」があり、これに各種の手当が付加されます。
主な手当としては、「増担手当」「大学院手当」「役職手当」「家族手当」「住宅手当」「通勤手当」等が挙げられます。
それぞれについて解説していきます。
基本給・能力給などはどうなっているの?
基本給(本俸)は、本俸表における年齢や経歴、職位に相当する額により決められます。
大学教員は基本的に講師・助教から始まると考えられますので、初任給については25歳で助教に採用されたと仮定すると月25万円前後の額となり、様々な控除後手取りとしては月20万円あたりとなるのではないでしょうか。
また、大学は企業のように営利を追求する組織ではないので、能力給というような制度や給与体系はありません。
基本給(本俸)ですが、年齢・経歴が増すごとに昇給するので、年度はじめにあたる4月には一律に基本給が上がることになり、その額に応じて年収も増えることになります。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
賞与(ボーナス)は、基本給(本俸)や諸手当を加算した額に対して夏と冬に支給されます。
年間で4.5ヶ月~5ヶ月分が目安となる大学が多いです。
企業では業績や景気の動向によりボーナスが減額されるような場合がありますが、基本的に大学教員は景気によって賞与(ボーナス)が左右されることはありません。
賞与(ボーナス)とは別に、大学では一時金といった制度を設けている場合があります。
これは、大学(当局側)と教職員組合との間で長年にわたって調整が行われてきた労使に関わる経緯のある給付ですが、毎年双方との間で交渉がなされ協定が結ばれます。
大学によっては制度の有無がありますが、概ね基本給(本俸)の1ヶ月程度の支給となることが多いようです。
各種手当てはどういったものがある?
大学教員の手当には、企業や官公庁でも支給される「家族手当」「住宅手当」「通勤手当」がありますが、企業や官公庁とは異なる大学で支給される独自の手当として「増担手当」と「大学院手当」があります。
また、大学教員が就く役職として、学長や学部長、機構長など様々な役職に対する役職手当があります。
大学固有の手当である「増担手当」と「大学院手当」について少し詳しく解説しましょう。
「増担手当」は、企業で言うところの超過勤務手当(残業手当)に近い手当です。
大学教員は、「教育」という業務において担当時間(義務時間)があり、必ずこの時間に相当する授業科目を担当しなくてはなりません。
例示として、大手の私立大学では8時間とされており、概ね講義科目4コマの授業を担当しなければなりません。
この担当時間を超えた時間について授業科目を持つ場合、1時間につき増担手当が支給されます。
相場としては、おおよそ5,000円から7,000円と言われています。
理工系や医療系の教員と人文科学系や社会科学系の大学教員について担当時間数を比較すると、前者の教員は実験科目や実習科目を担当している場合が多く、担当時間数も多い傾向が見られます。
「大学院手当」についてですが、この手当を説明する前に大学における大学教員と大学院への任用について概要を説明します。
多くの大学が大学院を設置していますが、大学には学部という組織と研究科という組織で構成されています。
大学院は、この研究科に該当します。
例えば、学部としての経済学部、大学院としての経済学研究科が教学組織として存在することになります。
学部のみに所属する大学教員は学部学生の教育・指導を行いますが、大学院生の教育・指導は基本的には行いません。
大学院生の教育・指導を行うことができるのは、研究科に任用された大学教員となります。
大学院は博士課程(前期課程)と博士課程(後期課程)からなり、「大学院手当」もそれぞれの課程を担当することに対して支給されます。
「大学院手当」の支給額は大学によりますが、博士課程(前期課程)を担当する場合も博士課程(後期課程)を担当する場合も、15,000円前後が相場とされています。
大学教員の雇用形態別の年収を見る
こちらでは、大学教員の年収について雇用形態に分けて見ていきます。
大学教員の年収は、教授や准教授、講師・助教といった職位、また専任か嘱託(非常勤)の違いで年収が大きく変わってきます。
専任の大学教員で助教の場合の年収
若手の大学教員という視点から、30歳の助教を例として雇用形態としての専任、嘱託(非常勤)について年収例を明示します。
私立大学で言うところの専任教員は、企業の正社員に相当します。
本俸表に基づく基本給(本俸)を基に期末手当や各種手当が支給され、また様々な福利厚生を受けることができます。
月給としてはおおよそ35万円で、年収の相場としては700万円前後となります。
嘱託講師(非常勤講師)の場合の年収
他大学から依頼(委嘱)を受けて嘱託講師として授業を担当する場合、給与の相場はいくらぐらいになるのか見ていきます。
大学教員で他大学の嘱託講師として出講する場合ですが、週1時間あたり概ね15,000円が相場となりますので、1コマ(週2時間)つまり講義科目を1科目担当した場合は、月額約30,000円となります。
給与や諸手当、社会保険などにおいて本務校の所属を持つ専任教員と比較するとかなりの差があり、本務校の所属を持たない嘱託講師のみで生計を立てている大学教員は、大学をいくつも掛け持ちしていることが実情のようです。
大学教員は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
大学教員にも職位に関係なく定年があり、私立大学では65歳定年が一般的です。
しかし、研究科(大学院)に任用されている大学教員の場合、教育や研究において「余人をもって代えがたい」と判断される場合には、教授会や研究科委員会での決議によって定年が延長されることがあります。
定年延長は1年ごとの更新となりますが、70歳まで延長することが可能です。
65歳時点での給与や待遇が変わることはないので、70歳まで定年延長を続けることができる大学教員は生涯における年収が大きく増えることとなります。
教授を例に取ると定年延長の期間は、65歳の基本給(本俸)の額のままとなりますので1200万円前後となり、年収としてはこの額が最高額と言えます。
大学教員はどういった条件だと年収が高くなるか?
設置主体の差は?
給与水準について、一般的に国公立大学よりも私立大学の方が高く、年収についても高い傾向にあります。
私立大学でも学生数や学部数など大学の規模の違いにより基本給(本俸)や手当の額に差がありますが、大手の有名大学では高い水準を維持しています。
学部や研究分野の差は?
学部や研究分野について、年収に対する大きな差はありません。
また、特別な手当などが支給されるなど待遇の差はありません。
研究業績の差は?
大学教員が執筆する論文や国内外での学会発表、社会に対する研究成果の貢献度など研究評価の公開、こうした評価制度を大学の情報発信の一つとしていることがありますが、研究評価に対する特別な手当などが支給されることはありません。
また、文部科学省や他の研究機関などが設けている競争的研究費を獲得して行うような研究がありますが、こうした研究に対する評価についても大学教員個人の研究評価となり、これに対する手当などが支給されることはありません。
大学教員は大学院教員に任用されることで大学教員としてのステージが上がり、また大学院手当が給与に加算されることで年収が増加することに繋がります。
大学教員で年収をアップさせる3つの方法
授業科目の担当時間数を増やす
大学の教員には義務時間として担当時間がある点と担当時間を超える時間については増担手当が支給される点を前に説明しました。
担当する授業科目を増やし、担当時間数の増加により増担手当をより多くするという方法があります。
しかし、教員の教育に対する負担が大きくなり、研究に割り当てる時間が持てなくなるため得策ではありません。
また教育内容を高いレベルに維持することが困難となり、教育の質を担保できないという状況も生じてきます。
大学院教員に任用される
博士課程(前期課程・後期課程)の大学院生を指導する大学院教員に任用されることで大学教員としての教育や研究の指導領域が広がり、大学院手当が給与に加算されることで年収が増加することになります。
学部長や主任などの役職に就く
大学には、学部長や所長、センター長、主任などの多くの役職があります。
この役職には役職手当が支給され、就任している月数分支給されることになりますので、年収についても上がることになります。
大学教員で年収が高い人の条件・スキルは?
大学教員で年収が高い人は、やはり専任教員として同じ大学に長く勤めている点が挙げられます。
勤続の年数により基本給(本俸)も毎年上がっていくので、基本給(本俸)を基本としている給与体系では年収も上がることとなります。
国家資格を持っていることでそれが給与に反映されるということはなく、また特別な手当が支給されることもありません。
研究業績に対する給与や待遇面への反映、企業で言う能力給のような制度はありません。
しかし、研究業績を上げることで、教員から研究科(大学院)の博士課程(前期課程・後期課程)が指導できる大学院教員に任用され、大学院教員になることで大学院手当が支給され、年収のアップに繋がる可能性があります。
これから大学教員になる人へのアドバイス
大学教員は、社会的な地位も高く、高い年収も確約されている非常に魅力ある職業です。
大学教員というと研究者のイメージが強いですが、研究に専心するだけでなく教育者としての職責も負い、安易な気持ちで就けるものではありません。
まずは大学院に入学し、高度な専門知識や技量といった卓越した能力を修得し、博士の学位を取得する必要があります。
助教として専任教員に採用が決まったとしても、教授へステップアップしていく道のりは遠いものと覚悟する必要があります。
研究業績を上げるために論文の執筆や国内外での学会発表、教育においては魅力ある授業の展開や学生の指導とやりがいのある仕事ですが、背負う責任の重さを認識しておかなければなりません。
また、学部といった組織内の人間関係にも気を配り、バランスの取れた調整力も必要です。
自分が専攻する研究に生涯をかけ、また人を育てるという教育にも身を投じられる方は、大学教員を目指されてはいかがでしょうか。
さいごに
今回は大学教員について、主に年収という視点から解説しました。
大学教員への道のりは険しいものがありますが、非常にやりがいが感じられ、社会からも信頼と期待を集める魅力的な職業です。
これから大学教員という職業を目標とされる方は、この記事を参考の一つとしていただけければ幸いです。
最終更新日:2020年4月23日