中学校教師の年収を徹底解説|給料・初任給手取りや年収の決まり方
都道府県など公立中学校教師は公務員です。
「公務員」というキーワードに付随するイメージが強いためか、教師の年収については「高い」と見られることも多い様に思います。
しかし、残業や休日出勤は当たり前で、未来を担う子供たちの大切な学校教育を導く教師としての労働の対価としては「当然」「まだ低い方だ」と言った言葉も関係者からは聞かれます。
では、その実態はどのようになっているのでしょうか。
中学校教師の年収について詳しくご紹介します。
中学校教師の年収の内訳とその実態は??
中学校教師と一口に言っても、公立中学校と市立中学校とでは、平均年収も異なります。
ここでは、内訳の分かりやすい「公立の中学校教師」の実際の年収事情を見てみます。
公立の中学校教師全体の平均年収
公立中学校教師の平均年収は約335万円~408万円、月収換算で30万円~34万円程です。
これは基本となる「給料月額」に「教職調整額」「地域手当」「義務教育等教員特別手当」を合算した金額になります。
公立の中学校教師の稼働時間、残業時間
勤務時間は一週間当たり38時間45分(一日当たり7時間45分)とされています。
しかし実際は、中学校教師の勤務時間は、授業が終わった後も続きます。
顧問をしている部活の指導をし、生徒が帰宅した後に、授業や行事の準備、事務作業、職員会議などを行わなければなりません。
テスト前後などは特に残業が続きます。
教師の残業時間は、「教職調整額」に含まれており、深夜まで授業準備をしたり、テストの点付けを休日に行っても、残業代は支給されません。
いわゆる「みなし残業代」というもので、基本給の4%です。
2006年に行なわれた「教員勤務実態調査」によると、中学校教師は毎日2時間程度の残業と30分程度の持ち帰り仕事があるという結果があり、このデータを参考に、手当を除いた大卒の初任給を単純計算で時給に換算してみると、995円になります。
上記の点だけを見てしまうと、想像していたよりずっと安いと感じてしまう方も中にはいるかもしれません。
しかし、公立中学校の教師は基本的に年功序列なため、勤務年数に比例して年収は上がっていきます。
教師という職業に関しては、生涯年収を基準に考えることもまた重要なのかもしれません。
雇用形態別の中学校教師の年収相場はどのくらい?
公務員の年収については公開されているので、各自治体のHPを見れば、教師の年収について知ることができます。
「新卒」「中途採用」「常勤」「非常勤」の中学校教師それぞれの年種相場についても見ていきましょう。
新卒で中学校の正職員となった場合の年収相場
初任給は大卒の場合、税金などを除いた手取りで月収にして20万円程となり、民間の大卒サラリーマンと大差はありません。
平成25年4月1日から適応されているA県中学校教諭の初任給を紹介すると、大卒の場合は月収にして約24万円、短大卒では約22万円となります。
この基本給と教職調整額などを含むものに、「扶養手当」「住居手当」「通勤手当」「期末・勤勉手当(いわゆる賞与)」などが、条例に基づき支給されます。
平均年収としては約300万円~350万円程でしょうか。
中途採用で中学校の正職員となった場合の年収相場
中学校教師は公務員ですので、いわゆる「年齢給」で支給されますが、自治体によって、前職の給与からプラスがある場合とそうでない場合の両方のケースがあります。
そのため一概には言えません。
常勤の中学校教師の年収相場
非正規雇用中学校の非正規雇用職員の平均年収262.8万円に対し、正規雇用では406.4万円と、正規雇用と非正規雇用では年収に100万円以上の差があります。
ある市の臨時的任用教師の例を紹介すると、基本給は月収にして17.5万円円〜25.7万円の時がありました。
これに加えて「扶養手当」「住居手当」「通勤手当」の支給があったようです。
非常勤の中学校教師の年収相場
産育休や病欠の教師の代わりや、小規模校、地域特性を出すために特定の教科に力を入れている学校などで、非常勤講師が募集されます。
教科のある時間だけの給与となり、1時間(50分授業)につき、2600円程度です。これに、「通勤手当」が付与されます。
市によっては「授業準備時間」という時間が有給で付与されることもあり、1週間に3~9時間の授業では、準備時間は1時間、10時間以上で準備時間が2時間などと決められています。
「テスト作成時間」が付与されることもありますが、3クラス分のテスト作成と点付け、成績処理に対して1時間のみであったりと、1時間2600円という金額は決して高いとは言えないのが、非常勤講師の現状です。
中学校教師の年収の決まり方
教師の年収は「級」と「号」によって決まります。
「級」というのは職務における責任の大きさや仕事の難易度などによって分類されます。
管理職にならない限りはずっと同じ「級」のままということです。
「号」というのは習熟度や職務経歴年数などによって変わってきます。
年収の上がり方は「級」が変わらない限り、毎年1万円ずつ昇給する仕組みとなっています。
では、公立中学校と市立中学校の教師では、どのような違いがあるのでしょうか。
また、年収にも響いてくる賞与や福利厚生・残業代・交通費等はどうなっているのでしょうか。
公立中学校教師の場合の年収の決まり方
地方公務員法24条 によると、「6 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。」とあり、これを給与条例主義といいます。
各都道府県、市町村の条例により給与を定めます。
公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法3条(教育職員の教職調整額の支給等)では「1 教育職員(校長、副校長、教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の100分の4に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。 2 教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。 」と、定められています。
残業代に代わる「教職調整額」についても、給料月額のの4%が「教職調整額」として給料に上乗せされている、と法律にあります。
私立中学校教師の場合の年収の決まり方
私立中学校の場合、法人によっても、地域によっても、小学校や高等学校との連携があるのかなどによっても、様々な特色がある場合が多く、一律のことは言えませんので、ここでは例を紹介します。
某県にある私立中学校・高等学校で募集している「専任教員」の給与は、経験や能力などを考慮した上で決定されます。
この学校では「年俸制」を導入し、年間375万円〜600万円の給与に加えて、交通費は月に2万円までの支給とされています。
業務内容は、中学校及び高等学校のクラス担任、教科指導、生活指導、大学進学指導、生徒募集活動、進路指導、クラブ活動等です。
この学校は中高一貫校であり、採用には「大卒以上」と「中高両教員免許を取得している者」という条件があります。
賞与や昇給制度はどうなっているの?
正職員の教師の場合は必ず年2回の賞与があります。
それに加えて昇給制度も整っており、定期的な昇給があります。
賞与の基本額は、月給の2か月相当額、年2回です。
残業代はきちんと出る?
残業代は、残念ながら支給されません。
先にも述べているように、残業代は「教職調整額」として、一律に支給されています。
交通費や福利厚生は?
整っていると言えるでしょう。
交通費は、通いやすい地域でなければ、住居手当付きで、引っ越します。
常勤、非常勤にも健康診断があります。
もちろん、有給休暇も付与されていますが、土曜、日曜参観日の振り替え休日などを使い切ることも難しい状態では、なかなか有休は取れていないというのが現状のようです。
中学校教師で年収を上げるためにやるべきこと
公立中学校は、年功序列なので、こうしたら必ず年収がアップする、というものはありませんが、例としていくつか紹介してみます。
今の勤務先でできること
スキルアップを図る
時間外労働をなるべく減らすために、省けるものは省いたり、メーカーの教材を利用するなどの工夫や、パソコン入力を速く正確にできるようにしていくなど地道な努力で、いわゆる「みなし残業」を減らし、自由時間を増やします。
それによって勤務時間に割り当てられる対価が上がる計算となります。
同じ県で長く勤める
教師は、5年間で基本給が約57,000円UPしていきます。
平均すれば、毎年11,400円ベースアップしたということですので、「年功序列」の強みを最大限に活かす方法としては、「辞めない」ことです。
思い切って転職する
何度も述べるように、残業代がなく、長時間労働と責任の重さが指摘されるのが教師という職業です。
仕事があまりにもつらく、解決策がないようであれば、転職も1つの選択でしょう。
転職先の選び方1:私立中学校を目指す
私立中学校の中学専任教員の年収は先述の通り学校によっても差が大きいです。
私立中学校の求人情報を見る限りは年収330万円~600万円が相場です。
公立中学校教師の平均年収が約335万~408万円ですので、私立に転職したからと言って、年収が必ずしも上がるわけではありません。
募集条件を見るのはもちろん、今の学校に不満があれば、面接などで、現状を超える条件を探していることを伝えてみてもいいかもしれません。
私立中学校の場合、系列校が多くない限りはほとんどが転勤はありません。
生徒は毎年変わっていきますが、職場の人間関係は変化がないので、一度難しくなってしまうと、働きづらくなる可能性があるというリスクも伴います。
転職先の選び方2:異業種を選ぶ
年2回の賞与は魅力的ですが、教師という職業にこだわらない方は、異業種への転職も年収アップの可能性があります。
高齢世代にとっては、教師が「聖職」だった時代もあり、教師の経験があることは、一目置かれるというメリットもあります。
反対に、「先生」なのにこんなことも分からないのか、と思われてしまうリスクも無くはありません。
部活動の顧問をする
中学校には、課外活動として部活動があります。
部活動の顧問になった場合は拘束される時間が大幅に増えます。
特に運動部の大会引率や練習試合などは、授業のない土日にありますが、手当は学生のアルバイト並みのごく僅かなものです。
部活動顧問に従事する教師の環境については「ブラック部活」という言葉が世間に浸透してしまったほど、社会的問題にもなっています。
部活動に対する休日手当てがあるので、年収にプラスがあることは確かですが、労働に見合っているかは個人の受け取り方次第になりそうです。
年収をアップさせるための求人の選び方
「年収アップ」ということに重きを置いた場合、転職する際に気を付けたいポイントはどのようなものでしょうか。
他職種と給与体系が異なる公務員ですが、年収を上げる方法は0ではありません。
年収相場が今よりも高いところを探す
ある民間塾の調べによると、幼稚園を含む小・中学校教師の都道府県別平均給与(月収換算)のランキング(職員数の平均値)は、
1位・・・東京都 41万8,149円
2位・・・福島県 41万7,099円
3位・・・岩手県 40万7,605円
と続き、最下位は奈良県の37万0032円でした。
基本給に地域差があるということに加えて、都道府県によって地域手当額にかなりの差があることが要因です。
地域手当が最も高いのは東京都となっています。
その金額は70,623円です。
次いで大阪府がランクインしており、金額は38,800円です。
やはり主要エリアでは地域手当が高く設定されています。
これは、物価の違いや住居費などの差を配慮しての結果のようです。
公立中学校で教師を続けたくて、今勤めめている都道府県の給与体系に不満がある場合は、違う都道府県に目を向けてみるのも一つの選択肢かもしれません。
この働き方は、こんな人におすすめ!
正職員
「絶対、教師!」という強い意志を持っている方におすすめです。
先に述べたように、業務内容は多岐にわたり、時間外労働が多く、責任も重く、決して労働環境が良いとは言えません。
しかし、生徒たちの成長を身近に実感できる、大変やりがいのある仕事でもあります。
また、休日の部活動などの為にプライベートな時間は少ないので、「仕事は生きがい、趣味も仕事」くらいに、働くことが好きな人が向いていると言えるでしょう。
常勤
期間付きの常勤(臨時的任用職員)は、将来他にやりたいことはあるけど今は教師の経験を積もう、という方におすすめです。
例えば、「海外留学したい」とか「数年後に結婚しその地を離れることが決まっている」などです。
常勤講師は、賞与は正職員より少ないですが、生徒に対する責任は同じようにあり、学校によってはクラス担任を受け持つこともあります。
しかし、期限つきで、目標もしっかりしていれば、仕事へのモチベーションアップにも繋がるでしょう。
非常勤
子育てしながら、または早期退職後の方におすすめです。
実際、教員免許を取ったものの、大学卒業後は子育てに専念していた、という方は非常勤講師に多いです。
勤務時間は基本的には、教科の時間のみなので、保育所の送り迎えに時間を合わせることもできます。
教師を退職したけれど、非常勤として声がかかったという先生も多くいます。
教員採用試験に不合格となり、次の年の採用を目指すという方も、常勤よりも勉強時間を確保しやすい、非常勤がおすすめです。
1校だけですと多くて週に3日ほどの勤務なので、近隣校との掛け持ちができれば、年収としてもある程度は確保できます。
まとめ
職業選びをする際は、「自分がどういう生活をしたいのか?」「どんな仕事が良いのか?」「どれくらい給料が必要なのか?」「労働時間はどれくらいが良いのか?」などと自問し、優先順位をつけることや譲れないものを知っておく必要性があります。
中学校教師の働き方や年収、その内訳を知ったうえで、教師を目指すのか、他の業種を検討するのかは、まさに「ワーク・ライフ・バランス」を考えることにつながるでしょう。
最終更新日:2019年6月27日