調剤薬局事務の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
結婚・出産後も働きやすく、全国どこでも求人があることから女性に人気の職業が調剤薬局事務です。
調剤薬局事務の仕事に興味があるものの、実際の年収については知らない方が多いのではないでしょうか。
本記事では、調剤薬局事務の平均年収や給与体系などについて解説します。
調剤薬局事務の平均年収は250万円~300万円が相場
調剤薬局事務の平均年収は250万円~300万円程度と、全体的に見ても決して高くはない給与水準です。
この背景には、調剤薬局事務が無資格・未経験でも働ける職種であることが大きく関係しています。
調剤薬局事務は専門知識が必要な職業ではありますが、仕事に就くための資格は必要なく未経験でも働けることから代えがきくと考えられ、低い水準に留まっているのが現状です。
その他にも、残業がそれほど多くないために残業代が少額であることや、キャリアを積む前に結婚や出産がきっかけで退職してしまう女性が多く全体的な給料がそれほど伸びないことも理由として挙げられます。
しかし、調剤薬局事務はその働きやすさから人気が高く、就職希望者の多い職種です。
給料を上げずとも人手に困らないことも、調剤薬局事務の給与が低い水準となっている大きな要因でしょう。
調剤薬局事務の年収・給料の構成要素
調剤薬局事務の年収は、「基本給」「能力給」「ボーナス」で構成されているケースがほとんどです。
基本給は勤務年数に比例して徐々に上がっていきますが、能力給は能力の評価内容によって増減するため、入社して間もない段階でも仕事ぶりが評価されれば上げてもらえる可能性があります。
また調剤薬局事務の仕事は毎日同じ作業の繰り返しですので、営業職や販売職のように出来高や売上高によってインセンティブが貰えるといったことはほとんど望めないと考えて良いでしょう。
基本給・能力給・歩合はどれくらい?
調剤薬局事務の基本給は月13万円~16万円程度が一般的です。
ある程度の年数が経過すると、この基本給に能力給が数千円~数万円プラスされ、月収は平均して15万円~20万円となります。
更にこの月収から住民税や社会保険などが引かれ、最終的な手取りは月に大体13万円~18万円になるでしょう。
決して高くはない月収ですので、一人暮らしで生活していくには少し厳しいレベルです。
地方の小さな薬局で、高卒や短大卒の1年目で能力給が付与されていない状態では、手取り月収10万円を切ることも珍しくありません。
歩合給に関しては前述の通りほとんど支給されませんが、稀に調剤薬局で販売している食品や衛生用品を売り上げた実績などが評価されインセンティブが支給される場合もあります。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
ボーナスが支給される場合は、年間で月収の2ヶ月~4ヶ月分程度が目安となります。
金額にすると、およそ30万円~45万円程度です。
ただし勤務先の経営状況によって金額の増減があることはもちろん、薬局によってはボーナス制度自体がないところもあります。
就職先でボーナスの支給を希望する場合は、事前にボーナス支給の実績があるかどうかを確認することをおすすめします。
各種手当てはどういったものがある?
調剤薬局事務で支給される手当には「資格手当」「通勤手当」「残業手当」「皆勤手当」などがあり、中には繁忙期のみ支給される「多忙手当」というものを支給している調剤薬局もあります。
貰える手当の種類や金額に関しては勤務先の調剤薬局でそれぞれ異なりますが、調剤薬局事務として月収をアップさせたいのであれば資格手当を狙うのが確実です。
資格手当を貰うための資格については後述しますが、どの資格を取得するにしても、勤務先で事前に資格手当が貰えるかどうか確認することを忘れないようにしてください。
調剤薬局事務の年収を新卒や雇用形態別に見る
ここからは、調剤薬局事務の年収を新卒の場合と中途採用の場合、パート・アルバイトの場合に分けて見ていきます。
新卒の場合の調剤薬局事務の年収
まずは新卒で調剤薬局事務員として採用された場合の年収です。
新卒といっても短大・専門学校卒と大卒とでは年収が異なるため、2つに分けて見ていきましょう。
短大・専門学校卒で調剤薬局事務として就職した場合の目安としては、基本給が13万円×12ヶ月、プラス賞与が年間40万円程度と考えると、年収は196万円となります。
大卒で就職した場合だと基本給が15万円×12ヶ月、プラス賞与の45万円で、年収はおおよそ225万円です。
もちろん居住地域や就職する薬局によって金額は変わりますが、大体この程度と考えて間違いないでしょう。
社会人が転職する場合の調剤薬局事務の年収(正社員)
次に、一般企業で勤務していた社会人が調剤薬局事務に転職した場合の年収を見てみます。
無資格で未経験であれば、前項で述べた新卒採用の年収とほぼ同等になります。
一般企業と比べると年収が低くなる可能性が高く、昇給のスピードも落ちるため、一般企業と同じ程度の給与を求めている、もしくは年収アップを目的としている場合は調剤薬局事務へ転職することはおすすめできません。
医療事務関係の資格を保有している、または医療事務の経験がある場合は、能力に応じて月収に数千円~数万円がプラスされる可能性が高いです。
資格を持っていることで給与が大幅にアップするというわけではありませんが、未経験で調剤薬局事務の仕事を希望するのであれば採用面・給与面ともに優遇される資格を取得しておくのが良いでしょう。
パート・アルバイトの場合の調剤薬局事務の年収
調剤薬局事務でパート・アルバイトとして働く場合、時給は地域によって変動しますが平均は800円~1,200円程度です。
パート・アルバイトとして働く場合でも時給は低く、住んでいる地域の最低賃金程度となります。
時給制のため年収は勤務時間によって大きく異なりますが、ここでは一例を挙げてみましょう。
例えば時給900円で1日4時間働き、週に4日入るシフトを52週続けたとすると、年収は74万8,800円です。
ボーナスがない分正社員と比べると更に年収は落ちますが、時間の融通がききやすく働く場所も選ばないことから、調剤薬局事務のパートは女性人気が高いのが現状です。
給料は安いものの働き手は充分に確保できているため、平均時給のアップを望むことも難しいと考えられます。
調剤薬局事務は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
調剤薬局事務という職種においては、最高年収を目指したとしてもそれほど高い額を望むことは難しいです。
東京に住む男性であれば年収400万円程度まで上げることは可能ですが、女性の場合は最高でも330万円程度が限度となります。
調剤薬局事務員全体をまとめる事務長や管理職クラスであればもっと上を目指せる可能性がありますが、そういった役職では人材育成や経営などの職務に携わることになるため、調剤薬局事務とは仕事内容も全く異なってくるでしょう。
仕事内容が変わっても構わないのであれば、事務長や管理職に就くことでより高い年収を目指すことが可能です。
調剤薬局事務はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
調剤薬局事務の給与水準は低いですが、勤務先によっては多少の年収アップが見込める場合があります。
ここでは年収が高くなる可能性のある勤務先をご紹介します。
大手チェーン薬局で働く場合の年収
全国的に店舗を展開しているチェーン薬局や大手ドラッグストアに併設されている調剤薬局などは、月収やボーナスが他の薬局より高い傾向にあります。
したがって、調剤薬局事務として年収アップを目指すのであれば、こういった大手へ転職するのも手段として有効です。
しかし昨今、チェーン薬局に対する厳しい調剤報酬改定が続いている側面もあります。
大手とは言え必ず安定しているとも限らないため、調剤報酬改定の内容によっては給与が減少することも頭に入れておく必要があるでしょう。
調剤補助業務を任せてもらえる薬局で働く場合の年収
調剤薬局事務の仕事は患者さんから処方箋を受け取ってお薬代を計算する受付業務がメインとなりますが、調剤室に入って薬剤師のサポートを行う調剤補助業務を任される場合もあります。
調剤補助業務は受付業務よりも医薬品の知識が必要となり、お薬を扱うことから責任も重くなるため、誰にでも任せられる仕事ではありません。
調剤薬局事務としてスキルアップし調剤補助業務に携われるようになった際には、別途手当を貰える可能性があります。
調剤薬局事務として年収をアップさせたいと感じたら、調剤補助業務を任せてもらえないか上司に相談してみましょう。
薬局によってはそもそも調剤補助業務が調剤薬局事務の仕事内容に含まれていない場合もあるため、その場合は別の薬局へ転職することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
調剤薬局事務として年収をアップさせたい人がやってほしい4個のこと
ここからは、調剤薬局事務として年収をアップさせたい人がやるべき4個のことを解説します。
一つ一つは小さな行動に思えますが、積み重ねれば大きな差になってくるはずです。
社内で年収が高い人にアドバイスを貰う
同じ会社で働く人の年収を把握することは難しいですが、給料を多く貰っていそうな人で考えてみると何人か思い浮かぶのではないでしょうか。
調剤薬局事務として収入を上げたいと感じたら、社内で年収が高い人にアドバイスをもらうという方法もあります。
会社にはそれぞれ独自のルールがあり、評価される内容も異なっているもの。
実際に同じ会社内で高く評価されている人からアドバイスをもらうことで、思ってもみなかった情報が舞い込んでくるかもしれません。
資格取得
調剤薬局事務として年収をアップさせるためには、先ほどもお伝えしたように資格手当を貰える資格を取得するのがおすすめです。
手当を貰うための資格としては、「調剤報酬請求事務専門士1級」や「登録販売者」などが挙げられます。
「調剤報酬請求事務専門士」とは調剤報酬請求に関するエキスパートのことで、調剤報酬の改定と同じく2年毎の更新が必要になります。
「調剤報酬請求事務専門士」の資格は3級~1級まであり、1級の合格率は約15%~20%と難易度が高いのが特徴です。
資格手当を貰うことが目的であれば1級まで取得する必要はないかもしれませんが、調剤薬局事務としてキャリアアップしたいのであれば挑戦しておきたいところですね。
登録販売者は、ドラッグストアなどで一般用医薬品を販売できるようになる資格で、調剤薬局事務員として培った医薬品の知識が活かせます。
合格率も43%前後とそれほど難しくないため、調剤報酬請求事務専門士よりもチャレンジしやすいと言えるでしょう。
コミュニケーション能力を上げる
コミュニケーション能力を上げるという方法も、調剤薬局事務で年収をアップさせるために有効な選択肢です。
調剤薬局事務員には患者さんたちに元気を分け与えてあげられるような明るさが求められるため、医薬品の知識やパソコンスキルだけでなくコミュニケーション能力の高さも評価に大きく関係します。
また個人経営の小さな薬局などでは経営者との距離が近く、経営者の評価がそのまま給与に繋がることも多いです。
したがって、経営者とのコミュニケーションも重要になってきます。
患者さんとはもちろん、上司や経営者とも良好な関係を築けている調剤薬局事務員は評価が上がりやすいということを心に留めておきましょう。
今の職場で成果を出す
調剤薬局事務として長年勤務していると、少しずつではありますが給与も上がってきます。
はじめは給与が安い割に仕事内容が大変だと感じてしまうこともあるかもしれませんが、可能な限り頑張って続けてみてはいかがでしょうか。
今の職場で長く勤めていれば効率良く動けるようになる上、能力が評価されて給与もアップするはず。
縁があって就職した職場ですので、少しずつでもコツコツと成果を出すことを目指しましょう。
これから調剤薬局事務になる人へのアドバイス
調剤薬局事務は給与の高い職種ではないため、高い年収を目指す人にはおすすめできません。
しかしその分残業は少なく、仕事内容もそれほど難しくありませんので、他の仕事に比べてストレスは少なめです。
それほど稼げなくても良いから自分のペースで仕事をしたいという人や、ライフスタイルが変化しても働きたいという人には、調剤薬局事務は向いていると言えます。
給与の低さだけにとらわれず、この仕事の良いところにもぜひ目を向けてほしいです。
さいごに
調剤薬局事務の給与体系や、平均年収についてお伝えしてきました。
調剤薬局事務の給与水準は決して高いとは言えませんが、働きやすさの観点からはおすすめの職業です。
調剤薬局事務の仕事に興味がある方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
最終更新日:2019年10月23日