地方公務員の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
地方公務員の仕事は多岐にわたります。
地方公務員と聞くと、市役所の窓口や警察官、学校の先生をイメージされる方は多いかもしれません。
市役所の職員は日常では事務作業がメインでも、災害が発生した際は避難所の運営や被災証明の発行などの業務にあたらなければなりません。
小さな自治体では地域の行事に参加しなければならない職場もあります。
今回はそのような地方公務員の年収と初任給についてご紹介します。
国家公務員の基本給は全国で同一(地域手当で差が発生)ですが、地方公務員は自治体ごとに基本給や手当が決定されます。
年収が高い自治体もあれば低い自治体もあるので、地方公務員を目指す方はぜひ参考にしてみてください。
地方公務員の平均年収は約630万円(平均年齢42.1歳)
地方公務員の平均年収については、総務省が毎年調査を行っています。
最新の結果は平成31年のもので、それによると平均給与月額は317,775円、手当を含めた総支給額となる平均給料月額は406,201円となっています。
この数字をもとに年収を計算すると、地方公務員の平均年収は約630万円(平均年齢42.1歳)となります。( 平成31年地方公務員給与実態調査結果等の概要:https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei12_02000001.html)
地方公務員の年収・給料の構成要素
地方公務員の年収は基本給、賃貸住宅居住者に支払われる住居手当、平均賃金が高い自治体に勤務する職員に支払われる地域手当、扶養手当から主に構成されます。
ここに、課税や納税を担当する職員に支給される税務手当など、職場によって特別な手当が加算される場合もあります。
基本給・能力給などはどうなっているの?
基本給については、国家公務員と同様に各自治体が定めれる俸給表によって決定されます。
基本的には国家公務員行政職の俸給表をベースに作成されますが、自治体によって差があります。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
賞与(ボーナス)についても、国の人事院勧告を基に各自治体の人事委員会が勧告を行い、それに基づいて決定されます。
令和元年の人事院勧告は4.5ヶ月分のため、多くの自治体は人事院勧告に基づき4.5ヶ月分に定めています。
各種手当はどういったものがある?
地方公務員の手当については、基本的に国家公務員と同様の手当が定められています。
主なものとしては、住居手当、地域手当、扶養手当があり、地方公務員に特有のものとして、生活保護担当者などケースワーカーに支給される福祉手当、動物園勤務者などに支払われる動物取扱業務手当などがあります。
地方公務員の大卒初任給は18万円~22万円
地方公務員の給与は各自治体が定めるため、自治体によって異なります。
基本的には、過疎地の市町村の給与は低く、東京都や人口の多い都道府県庁、政令市の給与は高い傾向にあります。
大卒初任給の場合、東京都では地域手当20%の加算があるため月220,400円、青森県平川市の場合は月180,700円となっています。
地方公務員の業務別の年収を見る
一口に地方公務員と言っても、県庁や市役所で働いている行政職のみならず学校の先生などの教職員、警察官などの警察職など様々な業務があります。
一般的に行政職よりも公安職である警察職や、教員職の方が年収が高い傾向にあります。
一般行政職(平均年齢42.1歳)の場合の地方公務員の年収
先ほどもご紹介しましたが、一般行政職(県庁や市役所の事務を担当する職員)の平均年収は約630万円です。
高等学校教員職(平均年齢44.8歳)の場合の地方公務員の年収
高等学校の教員職の平均年収は約695万円です。
小・中学校教員職(平均年齢42.3歳)の場合の地方公務員の年収
小学校や中学校の教員職の場合の平均年収は約657万円です。
小・中学校教員職の平均年収が高等学校教職員よりも少し低いですが、平均年齢も2歳ほど低いため、同年齢での年収差は今回紹介したものよりも小さくなると思われます。
警察職(平均年齢38.4歳)の場合の地方公務員の年収
警察官の平均年収は695万円です。
地方公務員は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
これまでに説明した通り、地方公務員の年収は各自治体によって異なります。
東京都の場合、50歳部長のモデル年収は約1300万円(東京都人事委員会:https://www.saiyou.metro.tokyo.lg.jp/kyuuyokettei.html)となっています。
モデル年収に記載はありませんが、東京都の場合、一般職員の最高位職は部長ではなくその上に局長がいるため、1300万円以上が支給される可能が高いと思われます。
なお、それなりの規模の都道府県庁や政令市の場合は局長級が一般職員の最高位職となり、人口が少ない県やそれなりの規模の県庁や政令指定都市の場合、東京都ほど高額ではなくても部長レベルであれば1000万円程度の年収が支給されることが一般的です。
地方公務員はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
地方公務員の年収は都市部の自治体ほど高くなる傾向にあります。
地方公務員の場合も、民間給与の高い地域に勤務する場合は基本給に加えて地域手当が支給されます。
東京都の場合は地域手当が基本給の20%支給されるため、基本給が同じ水準の自治体と比較しても自動的に年収が20%高くなります。
また各自治体の中では、早めに上位の役職に昇任した方が年収は高くなります。
昇任するためには上司の推薦が必要ですが、何よりも自身が所属する部局で昇任するポストが空いている必要があります。
本庁に所属している方が区役所などの出先に所属している場合よりも昇任ポストが空いている場合が多いため、本庁勤務が長い職員ほど昇任しやすく年収も高くなる傾向にあります。
東京都庁で働く場合の平均年収は約660万円
東京都庁で働く場合の平均年収は平均年齢40.8歳で約660万円(行政職俸給表一)です。
(東京都人事委員会職員給与関係資料:https://www.saiyou.metro.tokyo.lg.jp/pdf/r1kankoku/r1honbun/r1_04_01_syokujitsu.pdf)
大阪府庁で働く場合の平均年収は約637万円
大阪府庁で働く場合の平均年収は平均年齢41.8歳で約637万円(行政職俸給表)です。
(大阪府人事委員会令和元年職員の給与等に関する報告及び勧告:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/13170/00073130/R01_GAIYOU.pdf)
島根県庁で働く場合の平均年収は約569万円
島根県庁で働く場合の平均年収は平均年齢43.1歳で約576万円(行政職給料表)です。
(島根県人事委員会令和元年人事委員会勧告:https://www.pref.shimane.lg.jp/admin/commission/jinji/kankoku/r1kankoku.data/kossi.pdf)
宮崎県庁で働く場合の平均年収は約570万円
宮崎県庁で働く場合の平均年収は平均年齢42.3歳で約573万円(行政職給料表)です。
(宮崎県人事委員会事務局令和元年職員の給与等に関する報告及び勧告:https://www.pref.miyazaki.lg.jp/jinji-shokuin/kense/gyose/documents/46540_20191002093556-1.pdf)
横浜市役所で働く場合の平均年収は約627万円
横浜市役所で働く場合の平均年収は平均年齢40.5歳で約627万円(行政職員)です。
(横浜市人事委員会令和元年給与に関する報告及び勧告の概要:https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/saiyo-jinji/romu/kyuyo/kako.files/01gaiyou.pdf)
北九州市役所で働く場合の平均年収は約654万円
北九州市役所で働く場合の平均年収は平均年齢44.4歳で約654万円(行政職給料表適用職員)です。
(北九州市人事委員会令和元年職員の給与等に関する報告及び勧告:https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000853436.pdf)
なお、平均年収だけを比較すると横浜市よりも北九州市が高くなりますが、平均年齢についても北九州市が4歳ほど高いため注意が必要です。
地方公務員の年収の決まり方や、年収が高い人の条件・スキル・特徴は?
地方公務員の年収は俸給表によって決まります。
1.上級職で入庁する
地方公務員の試験は一般的に上級職、中級職、初級職など、大卒程度、短大卒程度、高卒程度と試験が分かれていることがほとんどです。
入庁時の初任給でもそれぞれの枠で差がありますが、上位職への昇任についてもより上位の試験枠合格者が優先されます。
多くの自治体では上位職に昇任するために現在の職位の最低年限が定められていますが、上級職が最も短く、初級職が最も長く設定されています。
また、局長や部長などの幹部については上級職の職員でほとんどの枠が埋まり、その他の級から幹部になれる可能性はかなり低い実態があります。
2.誰とでもそつないコミュニケーションがとれる
地方公務員は日々様々な立場の人と接します。
市民、議員、業者の方々のみならず、庁内でも様々な職の職員がいます。
職員や議員さんの中にはかなり難しい性格の人もいるため、そういう人とも上手く付き合える人が評価される傾向にあります。
また、幹部については首長の意向が強く反映されるため、どんな時でも自分の意見を貫くような、一見公務員として正しいと思われる人が評価されず、首長のやりたいことを上手く実現できるような人が抜擢される場合が多々あります。
3.なんとなく皆が納得できる理由を考えられる
地方公務員は市民の方々と日々接し、議会対応などでは議員さんとのやりとりもあります。
中には業務の説明を行ってもなかなか納得してくれず、先方の持論を延々と聞かされる場合も多々あります。
そんな時も場を上手くとりもち、なんとなく相手が納得するような所謂口が上手い人はスムーズに業務を進められます。
地方公務員の年収査定で大事なのは、人事評価者(直属の上司)の評価を高めること
公務員の年収は俸給表(役職)でほぼ決定され、一定期間の頑張りや結果が賞与に反映される割合はほとんどありません。(半年ごとの人事評価で賞与が増額される省庁や自治体もありますが、全ての勤務先にあてはまる訳ではありません)
特に地方公務員は国家公務員と比較して、昇任の段階(主任、総括主任など)が細かく設定されています。
昇任するためには直属の上司の推薦が必要になるため、推薦を得られるだけの評価を得ることが最も重要になります。
また、部長級など幹部の人事については知事や市長など首長(政治家)の意向が強く反映されるため、現場での能力のみならず、人に気に入られることが重要になります。
本来は良くない話ですが、首長の政策に正論で異を唱えた幹部が左遷されることはままあります。
自分の得意分野を磨く
地方公務員は3年~4年おきに人事異動があります。
地方公務員の仕事は多岐にわたるため、これまでいた職場の知識が次の職場ではまったく使えないという場合がほとんどです。
課長や係長、時には部長でもそれまで全く経験したことがない仕事につき、0から勉強しなければならないことが日常茶飯事です。
しかしながら、文章能力やコミュニケーション力、パソコンスキルなど、異なる職場でも使える能力、基本的な仕事の能力はどこの職場でも通用します。何か一つでも自分ができることを磨いておくと、どんな職場でも一定の評価を得ることができます。
上司が何を求めているか考えてみる
先ほども説明しましたが、地方公務員の年収は役職によって決まり、上位職への昇任は上司の評価を基に決定されます。
どれだけ頑張っていても、どれだけ能力が高くても、上司に評価されなければ何も変わらない、理不尽な評価もよくあります。
人事評価に全く興味がない上司もおり、そもそも昇任の推薦をしない上司もいます。
しかしながら、少しでも昇任の確率を高めるためには上司の評価を上げることが近道です。
そのためには、自分の上司が部下に何を求めているのか、日々の業務の中で感じ、少しでも反映することが重要です。
これから地方公務員を目指す人へのアドバイス
地方公務員は地元で働くのか、進学先の大学がある自治体で働くのか、全く縁もゆかりもないけれど自分が働きたい自治体で働くのか、選択肢は沢山あります。
給料についてはこれまでもご紹介した通り自治体によって差があるため、給料にこだわる場合は平均年収の高い自治体を目指した方が近道だと思います。
また、首長の性格や方針によって職場の仕事のやり方や雰囲気ががらっと変わってしまうことが、自治体にはよくあります。
マスコミを通して見る首長は立派で住民受けが良くても、組織の中での評判はかなり悪く、職員が次々と辞めるような職場も中にはあります。
独学で地方公務員を目指す方も、希望する自治体で働いている人から中の雰囲気を聞くことは重要です。
公務員予備校の中には、講座を受講していなくても面接練習などは別料金で対応してくれるところや、卒業生で現職の人と話をする機会を作ってくれるところもありますので、ぜひ活用してみてください。
さいごに
地方公務員の年収について説明しました。
地方公務員は能力のある職員に高い給料を払うというよりも、平均年収を高く維持する傾向があります。
県庁や政令市などそれなりに平均年収の高い自治体では、特に出世しなくても50歳程度になると800万円程度の年収になることはよくあります。
国家公務員は人事評価に基づきボーナスに上乗せがありますが、地方公務員ではあまり導入されていません(自治体によります)。
頑張った人とそうでない人の年収にあまり差がなく、若手はやる気を失ってしまう場合もあります。
また、霞ヶ関の官僚は長時間労働が状態化していることはご存知でしょうが、地方公務員も災害発生時や議会が紛糾した際などは、1ヶ月~2ヶ月全く休みがないこともよくあります。
自分自身がなぜ地方公務員として働きたいのか、地方公務員として自分の人生で何を実現したいのか、地方公務員を目指す際によく考えてみることをオススメします。
最終更新日:2020年5月25日