貿易事務の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・手当
貿易事務という仕事をしていると言うだけで、「専門的な仕事だから給与をたくさんもらっていそう」とか「どんどん年収が上がっていきそう」というイメージを持たれることがあります。
果たして、実際のところはどうなのでしょうか?
また、貿易事務の仕事をしていて昇給は期待できるのでしょうか?
できるとしたら、その為にはどうしたらいいのでしょうか?
この記事では、現在貿易事務の仕事をされてる方、またこれから貿易事務の仕事を目指して勉強される方も気になる「貿易事務の年収相場」「貿易事務の年収アップ方法」について詳しく探っていきます。
※貿易事務の仕事内容に関しても、最後に簡単にまとめましたので、気になる方はそちらもご覧ください。
貿易事務の年収相場はどのくらい??
輸出貿易事務という仕事に就いているけど、今の自身の給与は多いほうなのか、他社と比べてあまり貰えていない方なのか、他の事務職と比べての年収は高いのか、低いのかと疑問に思う時もあるかと思います。
また、これから貿易事務の仕事を勉強して企業で頑張りたい!と張り切っている方もいるでしょう。
大手企業に勤めた方がやはり年収も高いのか、キャリアを積んで転職した方が良いのか、迷ってしまうこともあるかもしれません。
年代、経験年数、企業の規模によっても違いますが、一般に貿易事務の年収は他の事務職より高めと言われています。
ここでは、雇用形態別に分けた貿易事務の年収相場について見てきましょう。
貿易事務で正社員の場合の年収相場
貿易事務として正社員で働いた場合の平均年収は、380万円~600万円です。
勤続年数等によって幅はありますが、一般的な事務職の平均年収を大きく上回ります。
未経験でも経験者でも目指すのは正社員でしょう。
毎月安定した給与が支給されますし、何と言っても賞与があります。
社会保険も保障されている上に、昇給も期待できます。
貿易事務として企業に就職するならば、正社員という働き方がベストでしょう。
貿易事務で契約社員の場合の年収相場
貿易事務として契約社員で働いた場合の平均年収は、320万円~450万円です。
契約社員は、企業と直接契約して年間や期間を決めて仕事をしていきます。
何年も何十年も同じ企業で継続して契約する場合もありますが、経営状態によっては契約完了になったりすることもあるので、安定的な就業形態ではありません。
賞与もないことが多く、あっても正社員より少ないことが一般的です。
ただし、専門的な仕事の為慣れてスムーズにこなせるようになってきたら、まだ仕事に不慣れな契約社員よりもメリットが多いこともあり、任される仕事も多くなってくるでしょう。
貿易事務でパートの場合の年収相場
貿易事務としてパートで働いた場合の平均年収は120万円~140万円です。
パートの場合は契約と違って期限は設けられていないことが多いので、長期で働ける場合も多いです。
1日の労働時間が短かったり残業がない場合があるので、子育て中等で早く帰りたい人には有難い働き方かもしれません。
ただし、「年収を上げたい」「バリバリ働きたい」という人には物足りないでしょう。
貿易事務で派遣社員の場合の年収相場
貿易事務として派遣社員で働いた場合の平均年収は280万円~360万円です。
派遣社員の場合、有期雇用で働くという点では契約社員と似ているところがありますが、大きく違うのは契約相手が実際に働く企業先ではなく派遣会社であることです。
仕事の内容や勤務時間などは企業で働く人とほぼ同じですが、あくまでも派遣会社から「派遣」されて働いているという心構えを持っていないと、何かトラブルや困ったことがあった時に、派遣元と派遣先である企業両方に迷惑をかけてしまうことになりかねません。
仕事内容はほぼ同じでも契約社員の年収の方が少し上なのは、企業と直接契約をしている分必要な経費がかからないからだと思われます。
ただし、企業にとって経験の豊富な人を募集し、面接し、契約するのは非常に手間も時間も経費もかかることなので、急ぐ場合は派遣会社に依頼することが多いです。
貿易事務の年収の決まり方
新卒採用された時点で経験豊富な人はまずいないので、貿易事務未経験者の場合の年収は、一般的な事務仕事と同じか少し多いくらいでしょう。
「少し多いくらい」の理由としては、未経験でも高校卒業程度の英語の能力が必要であったり、英語が苦手な人は貿易事務の仕事自体が難しかったりするので、他の事務仕事より導入の部分で多少専門的な仕事とみなされるからです。
もちろん、入社する時点で英検やTOEICなどの英語能力で認められることもありますし、最終学歴の違いによっても年収に差が出てきます。
学部や学科によっても配属される部や係が変わってくるので、多少なりともその金額に差が生まれます。
また、現在は少しづつ差が縮まってきていますが、男女間でも差があるのはどの仕事にも言えることではないでしょうか。
では、基本給以外の賞与・手当・福利厚生などはどうなっているのでしょう。
賞与
正社員であれば、賞与はしっかりと支給されることが多いのが貿易事務です。
とは言え、為替相場の変動などに影響される職業でもあるため、「このくらいは必ず貰えます」と一概には言えないのもまた事実です。
残業手当
残業手当に関しては、正社員より派遣社員が有利になることもあります。
派遣社員は残業手当の支給の保証がされているのに対し、正社員の場合には、企業に
よっては給与を年俸制とし残業手当を支給しないところや、残業手当支給対象時間に上限を設けているところもあるからです。
その場合、毎月の額面は決まっており、どれだけ残業しても、それが給与に反映されることはありません。
その他の各種手当・福利厚生
これは企業によって大きく異なる部分でもあるのですが、大手の企業ともなると「資格手当」「住居手当」「家族手当」などがつくところもあります。
昇給制度に関しても勤続年数に応じて設けられているところも少なくありません。
貿易事務の年収を上げるためにやりたい6つのこと
貿易事務の仕事はある程度慣れてきたら、専門的な仕事をしていることに気がつきます。
そこで満足する人はそれまでですが、中には面白くなってきてもっと知りたい、もっと勉強したいと思い始める人もいます。
それがいつのまにか年収アップに繋がっていくこともあります。
具体的にどのようなことをしたら年収に反映されるのか考えてみましょう。
「貿易実務検定」の資格を取る
どの仕事においても、資格ほど明らかで分かりやすい武器はないかもしれません。
貿易事務の仕事もまた然りです。
中でも「貿易実務検定」は、日本貿易実務検定協会が運営している資格で、輸出入の貿易に関わる全般的な実務に関してエキスパートを目指す人に向いています。
レベルもA級からC級まであります。
専門用語だらけですが、商社で働く人から海貨業者、海運業界で働く人がよく取る資格です。
貿易の流れから通関、港湾や航空、為替、保険の知識、また商業英語に至るまで幅広い知識が必要となります。
簡単な資格ではありませんが、貿易事務という仕事をするにあたって有利になる資格です。
「通関士」の資格を取る
非常に難しい資格ですが、輸出入の貿易実務に携わる経験豊富な人からは、勉強して「通関士」になりたい、と希望する声をよく聞きます。
通関士は財務省認定の国家資格になるので、この資格があると税関への申告・申請から許可・承認を受けるまでの手続きが一通りできるようになります。
中小企業の商社では通関士の資格を持った人はあまり見かけませんが、大手企業になると通関士として働く人もいます。
その存在感は大きく、年収に関してももちろん上がります。
英語のスキルを伸ばす
輸出の通関業務は国内で行われる作業ですが、書類のほとんどを英語で作成しなくてはなりません。
英語の記述に慣れることも必要ですが、自ら英語の勉強をすることも、より仕事にプラスとなるでしょう。
積極的に英検やTOEIC、国連英検など英語の資格を目指したり、英会話のレッスンを受けたりして英語の能力を上げるのも年収アップに繋がります。
特に海外の顧客から開かれてくる信用状(L/C)は何が書いてあるのか最初は分からず戸惑いますが、分からない単語を調べて自分の知識として貯めていくと仕事も早くなります。
L/C の知識を持つ
上の項目でも触れましたが、「L/C」 とは信用状のことで、輸出をする際に海外の顧客から商品の代金として銀行を通して開かれてくる書類のことです。
初めて信用状を見ても暗号が書かれているようで何が書いてあるのか分かりづらいですが、決済方法や、顧客が必要とし輸出側が提出する書類が一つ一つ記入されており、書類に記入する文言についても細かく書いてあったりします。
その通りに書類を作成しなくては銀行は受け取ってくれません。
その信用状を読み込むことも初めは大変かもしれませんが、経験を積んでいくと自分の知識として蓄積させてていくことができ、仕事もより迅速且つ正確になります。
また、信用状の内容が分からないときに信用状の辞書のような本があります。
国際商業会議所が発行している「信用状統一規則(UCP)」と呼ばれる本で、国々の法律の違いによって起こるトラブルを避けるために定められた信用状の国際ルールです。
通常は銀行の外国為替の信用状担当者が保管していますが、企業に配られることもあります。
職種を変える
貿易事務とは通常輸出入通関や銀行の買取書類の作成の仕事を指すことが多いですが、仕事の流れがわかってきたら事務職から営業職に変更すると、かなりの年収アップとなるでしょう。
営業事務としての貿易事務の仕事も含まれるもののメインは海外の顧客相手の仕事なので、海外出張や電話のメールのやりとりなどを通して商品を売るのが一番の目的になります。
また、海外との取引なので、英会話は必須です。
貿易関連の仕事は好きだけど事務職が合わない、と思うときは考えてみてはいかがでしょう。
転職する
ある程度経験と知識を備えてきたら、転職することで今までより年収が上がることがあります。
今まで経験してきたことがしっかりと身についていれば、専門的な仕事故に自身を売り込むことが出来ます。
貿易事務は商品によっても書類の内容が変わってくるので、出来るだけ様々な商品を扱っている方が知識としても役に立ちます。
ただし、慎重に考えなければいけないのが、大手企業から中小企業への転職は出来ても、逆はなかなか難しいことです。
年収も大手企業の方が保証されていることも多く、中小企業は為替相場の変動などでリストラの危険もあるので、現在大手企業に勤めている場合は、本当に転職が必要なのかじっくりと考えて見定めた方が良いでしょう。
しかし、中小企業で働くと様々なことが経験できるので、大手企業のように流れ作業の一部分の仕事しかさせてもらえないわけではなく、全体の流れも実務もよく理解できるというメリットもあります。
私はこれで年収が上がりました。年収アップの体験談。
経験を活かして転職した
私の経験ですが、短大を卒業したばかりで何も分からず、ただ英語に関係する仕事をしたいと思って貿易事務を選びました。
英文タイプの専門学校に通い、タイピング技能検定も受けて、一応はタイピングと英検の資格を履歴書に書くことが出来ましたが、自信は全くゼロでした。
未経験で小さな商社に採用され、そこで初めて輸出の書類の作り方を教えてもらいましたが、失敗ばかりで、信用状に関しても分からないことだらけでした。。
「英文科を出ているんじゃないの?」と辛辣なお言葉を頂いたこともありましたが、そんな失敗が逆にもっと頑張らないと、と自分を奮起させることに繋がったと思います。
その後何度かの転職を経験しましたが、その度にそれまでの経験を活かして少しづつ年収も上がっていきました。
時には、円高の煽りで会社が経営困難になり、貿易事務を代行業者に任せるので営業に変わってみないか、というお誘いを受けることもありましたが、営業職よりも輸出船積の事務作業が好きだった私は悩んでいました。
ちょうど同じ時期に知人を通して貿易事務員を探していると言う話を聞き、面接に行くと是非来て欲しいと言って頂きました。
人生でこんなこともあるのかとタイミングの良さには驚きましたが、かなりの年収アップに伴い、仕事の責任も重くなりました。
仕事の量もかなりあり残業続きでしたが、その頃はとにかくまだまだ貿易事務の仕事をしたいという気持ちが強く、辛いと思ったことはあまり記憶にありませんでした。
今思うとまだまだ修行中という気持ちが強かったのだと思います。
様々な商品や会社を経験して、年収アップだけでなく、貿易事務の経験や知識もいつの間にか身につき、自身のスキルアップにも繋がりました。
その後、派遣会社で働くこともありましたが、貿易事務の仕事は他の事務の仕事よりも時給が高かったので、この仕事を選んでよかったと思いました。
貿易事務のおおまかな仕事内容
「貿易事務」という仕事は、国内から海外へ輸出または輸入する際に必要な書類を作成し、手続きをする事務作業が主です。
直接海外の顧客とやりとりする営業または営業事務の仕事、国内の取引先との事務作業、輸出入する際の通関業務の仕事など細かく分かれますが、一般に貿易事務というと通関書類や銀行決済に必要な書類を作成する業務を指すことが多いようです。
輸出と輸入の書類を比べると、輸出する側が準備する書類の方が輸入する側より複雑で多種あり、手間がかかります。
一般的に商品を買う側より売る側の方が手間がかかるのと同じことですね。
輸出通関書類は主にINVOICE(送り状)、 PACKING LIST(梱包明細書)、 船荷証券を発行する際に必要なSHIPPING INSTRUCTION(船積指示書)などがありますが、船積する商品によって他にも提出する書類が増えてきます。
輸出通関書類は一般に企業の輸出担当が作成しますが、大手企業になると社内に資格を保有する「通関士」が存在するので、社内で通関手続きがほとんど行われることがあります。
さらに船舶も企業でが所有する場合があるので、大手になればなるほど必要な作業を自社で賄うことができ、他社に手数料などの必要経費を支払わなくても良くなるようです。
中小企業の商社などでは輸出通関書類を作成したら、「乙仲」と呼ばれる海貨業者に渡して通関業務をしてもらいます。
また、商社側の人員削減で通関書類も乙仲が代行して作成・手続きすることも増えてきたようです。
まとめ
私も知らない昔の話になりますが、今から半世紀以上前、為替相場が$1=¥360で安定して続く時代がありました。
大きな為替変動もあまりなく、日本は「輸出天国」と呼ばれた時期がしばらく続いていました。
高度成長期の真っ只中で生産すればするだけ海外へ輸出し、円安のメリットで生産者も貿易企業も成長がうなぎ上りの時期のことです。
貿易事務の仕事もたくさんの人手が必要で、多くの労働者が従事していました。
と言うのも、現代のようにパソコンもなく、電動タイプライターがようやく普及していたかどうかの時代。
FAXももちろん無く、全てを手作業で行っていた時代のことです。
そんな時代から今日まで、貿易事務の在り方も随分と変わってきました。
しかし、専門性の高さは変わらず、多忙ながらも常に誇りをもって働ける職業です。
この記事を通して、貿易事務の仕事を理解し、また、貿易事務の仕事に興味を持ってくださる方が増えれば何より嬉しいです。
最終更新日:2019年6月26日