弁護士の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
弁護士の年収は、他の職業から見てもかなり高水準です。
その分、長く険しい道のりを経てこなければ、受験資格すら得られません。
弁護士事務所で勤務する場合にも、独特のシステムがあります。
独立して事務所を構えたり、一般に企業に勤めたりする選択肢もあるので、一般の職業とはかなり違いがある仕事です。
弁護士の平均年収は550万円から1150万円が相場
弁護士の年収は、一般的なサラリーマンの年収と比較して、かなり高額な年収を得られます。
平成29年賃金構造基本統計調査によれば、弁護士の平均年収1026万円という数値が出ていることからも、かなり稼げる仕事と言えるでしょう。
ですが、これをそのまま鵜呑みにはできないのが弁護士です。
実際には、年収が200万円を下回る弁護士もいるからです。
上を見れば、1億円を優に超える人もいるなど年収にかなりの違いがあります。
弁護士の特徴として、自営業として開業していることもありますし、法人化している法律事務所に勤めるケースも出てきます。
勤務弁護士も、自分で仕事を取るような歩合制でどんどんこなしていく人もいるため、個人で受け持つ案件数などで年収に大きな差が生まれてくるのです。
自営業の場合には夢もある代わりに、経営が上手くいかないと、サラリーマン以下の年収になるケースも珍しくありません。
弁護士の年収・給料の構成要素
弁護士の給料構成要素は、働き方によって違います。
自営業として事務所を開設しているのなら、個人事業主として売上げと収入がリンクします。
勤務先と個人事業主として契約を結んでいても、売上げと給料が直結するでしょう。
報酬の取り決めも様々あり、歩合での契約となると、仕事の量が増える、もしくは高額報酬の案件を見つけ受任できれば増加します。
勤務弁護士でも、基本給を設定した上で歩合にするケースもあります。
勤務してから数年は固定給というのが一般的で、ボーナスなどの査定を別途受けるケースもあり、そのあたりは様々です。
基本給・能力給・歩合はどれくらい?(勤務弁護士の場合)
勤務弁護士は、入って数年の間は基本給を設定する場合があります。
この基本給は、地域によってかなり大きな差が出るのが弁護士の特徴です。
東京は人も企業も多く、案件の数も多いため、年収もかなり高額になる傾向があります。
大手法律事務所の場合には、入所初年度から1000万円を超えるところも珍しくありません。
弁護士は年齢と共に収入もどんどんと上がる傾向が強く、年収3000万円を超える人も出てきます。
東京でも中堅クラスの場合、大手ほどは貰えません。
それでも、初年度から700万円を超えるところがあります。
ただしその一方で300万円程度という弁護士事務所も数多くあり、受けている案件や規模などによってかなりの差があるのが実情です。
東京以外を見てみると、人口の多いところでは、初年度で500万円程度が中心となるでしょう。
300万円程度で雇いたいという弁護士事務所もあります。
特に弁護士が少なく人手が欲しいというところでも、案件の規模が小さく低賃金という例も少なくありません。
固定給として見ると低くても、歩合で稼げるのも弁護士であり、その年ごとに年収に揺らぎが出やすくなります。
ただ勤務弁護士は、年齢と共に抱えている顧客の数も増えてくるので、年収は必然的に増加していくでしょう。
賞与(ボーナス)はどれくらい?(勤務弁護士の場合)
勤務弁護士のボーナスは、多くの事務所では4ヶ月分程の支給と言われています。
金額は50万円程度から300万円を超えるケースまでとかなり幅広いです。
初年度の年収が500万円と想定すると、月給は大体36万円、ボーナス総支給額が144万円程度の計算になるでしょう。
夏と冬が同じ割合とすると1回のボーナスで72万円支給です。
各種手当てはどういったものがある?(勤務弁護士の場合)
士業として活動する弁護士は、資格手当を支給されることはほぼありません。
法律系資格の頂点として、弁護士は全ての資格の業務を受け持てるからです。
ただし一般企業に勤めるケースでは、弁護士資格を有していることによって手当が出ることもあります。
ほかにも弁理士として登録しているなど付加価値がある場合には支給されますが、自分で営業するための資格というところでは、手当はないというのが実情です。
弁護士(勤務弁護士)の場合の年収を新卒や雇用形態別に見る
弁護士は、年齢や雇用形態によって収入が大きく変化します。
年収の幅がとても大きな職業として個別に見ていくと、その違いが分かるでしょう。
新卒の場合の弁護士の年収
弁護士の新卒は、イソ弁とも呼ばれます。
イソ弁とは、居候弁護士という意味を持つ言葉で、固定給を受け取りながらも経験を積む段階です。
弁護士は、司法試験に合格し資格を取得したからと言って、すぐに第一線で活躍できるわけではありません。
それどころか、長い道のりのスタート地点に立っただけです。
勤務弁護士として法律事務所に所属しても、ボス弁と呼ばれるリーダー格の指示を受けて仕事をします。
大手法律事務所では新卒初任給で500万円~1000万円になるケースもありますが、地方では案件をこなし稼ぎ出せる立場にないことから300万円以下も珍しくありません。
イソ弁は実践で使えるレベルではなく、まだまだサポート役でしかないからです。
社会人が転職する場合の弁護士の年収(正社員)
他の職業から弁護士に転職する場合
社会人から弁護士になるのは簡単な道ではありません。
法科大学院で学ぶ必要があり、そこから司法試験の合格を目指します。
法学部での経験がない場合には、更に1年プラスと長い時間が必要です。
一般的に司法試験に合格し、弁護士事務所に就職するのであれば、新卒と同じ扱いです。
ただし、これまでの社会経験を買ってくれれば、アップする要素になるでしょう。
もう一つ、企業内弁護士の選択肢も出てきます。
インハウスロイヤーと呼ばれますが、弁護士として独立して仕事をするのではなく、企業内で働く方法です。
あくまでも正社員としての雇用が中心で、手当なども一般の職と変わりません。
年収自体は、40代前半まで法律事務所に勤務している弁護士に比べて200万円近く安いと言われています。
正社員として会社に勤めているため、法律事務所で報酬を得るよりも低い水準で推移するからです。
しかし、45歳以降になると、インハウスロイヤーのほうが高水準になります。
人事などで整備が進むインハウスロイヤーのほうが、年齢を重ねるごとに安定して伸びていくからです。
管理職クラスになれば、平均年収としても1000万円を超える例も出てきます。
弁護士が他の弁護士事務所に転職する場合
弁護士がほかの法律事務所に転職する場合、自分で道を選ぶ場合と他社から引き抜かれる場合あります。
弁護士も競争の激しい商売であり、他の事務所から引き抜きがかかることは珍しくありません。
相手の事務所の規模にもよりますが、現状よりも高い報酬を条件としてくるでしょう。
能力があり名前も知られてきているのであれば、倍ちかい給料になるケースも出てきます。
自分で転職の道を選ぶ場合、年収が下がってしまうケースも少なくありません。
平均金額は550万円程度と言われている中での転職となるため、自分のキャリアなどがアピールできるかどうかがポイントです。
特に都心部から地方の事務所へ転職するのであれば、キャリアがあったとしても、かなりのダウンになるケースが出てきます。
顧客を持っていると、独立するという大きな選択肢が発生するのが弁護士です。
その中で自ら他の事務所を選ぶというのは、大してプラスにはならないでしょう。
逆に地方から都心部への転職であれば、年収が上がることも考えられます。
パート・アルバイトの場合の弁護士の年収
弁護士として、パートやアルバイトという契約はあまりありません。
しかし、資格取得後に結婚などで職を離れた場合、アシスタント業務などの募集が出てくるケースがあります。
大手事務所の時給で大体1,800円~2,000円程、8時間勤務として計算すると、年収は350万円前後となるでしょう。
ただし、パート・アルバイトの場合は扶養内で働きたい等の希望を持つ方もいる為、一概には言えません。
弁護士は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
前述した通り、弁護士は案件によって収入が大幅に変化します。
イソ弁からスタートして数年後に自分で営業してクライアントを獲得し、成果報酬形式になるのが一般的です。
新人時代はアソシエイト、成果報酬になるとパートナーと呼ばれます。
パートナーになれば、案件次第で大きな年収に繋がります。
自分で報酬を稼ぎ出す立場になるからです。
大手弁護士事務所のような渉外弁護士にもなれば、1億円を超える年収も珍しくありません。
M&Aを専門とする弁護士もかなり高額です。
かなり限定されますが、不可能と言われるような刑事事件を担当し判決を覆してきたような実績があれば、年収も数億円という規模になるでしょう。
全ては案件次第ですので、どこまで営業できるのか、交友関係や実績によっても違いが出ます。
こうした弁護士は、ブル弁(ブルジョワ弁護士)と呼ばれ、かなり特別な存在です。
弁護士はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
年収の高い弁護士には、様々なケースが考えられます。
勤務先次第という面もあるのは、キャリアが重要になるからです。
大手弁護士事務所で働く場合の年収
日本には、四大法律事務所と呼ばれる大手が存在します。
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所
- 長島・大野・常松法律事務所
- 西村あさひ法律事務所
- 森・濱田松本法律事務所
そこにもう一つ
を加えて五大法律事務所と呼ぶこともあります。
こうした大手法律事務所は数百人規模の人材を抱えていますが、かつて所属弁護士は渉外弁護士と呼ばれました。
渉外弁護士は、なんらかの形で外国が関係してくる案件を取り扱う弁護士です。
非常に高額な年収を得られる弁護士として知られてきました。
広義で渉外弁護士と呼ばれてきましたが、ほかにはあまり明確な定義はありません。
外弁法の改正により、海外の大手弁護士事務所が日本に参入した結果、日本国内の案件も増えています。
大手弁護士事務所では案件も獲得しやすく、企業の案件などを中心に年収数億円になるような弁護士も出てきます。
新卒で弁護士を目指すのであれば、大きな目標となるでしょう。
外資系弁護士事務所で働く場合の年収
2003年の外弁法の改正から、日本国内に海外の法律事務所が数多く参入してきました。
弁護士事務所は、外資系と言っても資本関係があるとは限りません。
海外の法律事務所と提携している状態で、経営は国内資本でも、外資系法律事務所と呼ばれます。
国内外の案件を取り扱う中、国際的なM&Aや金融案件などが大規模な案件を多く扱うことになるでしょう。
海外の法律に基づくアドバイスなども行います。
初任給で年収1000万円を超えるのは珍しくなく、一般的なレベルです。
五大法律事務所よりも高額年収となってきました。
- ベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業
- モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所 伊藤 見富法律事務所
- 外国法共同事業・ジョーンズ・デイ法律事務所
- ホワイト&ケース法律事務所
などがありますが、ほかにもかなり多くの法律事務所が参入しています。
入所の実績が5年以上になると年収2000万円も珍しくありませんが、長期的に見ると日本の大手弁護士事務所とそこまで変わりません。
司法試験合格からすぐに独立して働く場合の年収
弁護士は、自分がどこまで稼げるかによって年収に違いが出てきます。
弁護士事務所に所属しながらも、個人事業主のような契約形態の場合にも営業して顧客をつかむ稼ぎ方次第です。
そのほかに、自分で事務所を建てて独立するという方法も、高額年収を目指す方法と言えるでしょう。
ソクドク弁と呼ばれますが、司法試験合格と同時に即独立してしまうという方法があります。
非常にリスクのある方法ですが、能力に自信がありコネクションがあるのなら、初年度から大きな年収が得られる可能性はあります。
中には、固定した事務所などを持たずスマホで連絡を取り活動する、スマ弁と呼ばれる弁護士も出てきました。
デメリットは、先輩などの姿を見て経験を積む時間がないことです。
これが逆に年収を悪化させる要因ともなるため、慎重な選択が必要でしょう。
法律事務所から独立して働く場合の年収
法律事務所に勤めながら将来の独立を目指していく方法も、年収アップを目指せます。
多くの弁護士がこの道を選択しますが、全ては顧客次第です。
良い顧客が見つかるのであれば、かなりの年収が期待できます。
逆に顧客が見つからないと、年収が300万円を切るようなケースも珍しくありません。
これから弁護士になる人へのアドバイス
これから弁護士を目指し、高額年収を狙うのであれば、大手法律事務所か外資系法律事務所への就職が良いでしょう。
数多くの弁護士を抱え、高額年収も目指せます。
その後、独立するとしても、多くの道が見えてくるでしょう。
なりたいからと言って、こうした大手法律事務所に簡単に就職できるわけではありません。
海外の案件を取り扱う渉外弁護士として、英語が話せコミュニケーションを取れるのは絶対条件です。
契約書などは全て英語で書かれ、日常的な内容も英語で受け答えする仕事です。
間違った理解に繋がれば、それだけで大きな問題にもなりかねないため、相当な英語力を身につけなければいけません。
法律事務所が実施しているサマークラークでも、優秀であると認められる必要が出てきます。
もちろん、参加していなくても応募できますが、ロードマップとしては大きな差が出るでしょう。
優秀と認められたら、法律事務所のほうから声もかかります。
司法試験の成績も重要ですので、普段から努力を重ねていかなければいけません。
司法試験に合格するだけでも、かなりの時間と労力、加えてお金も必要です。
それ以上の勉強をし、実力を身につけることが、弁護士として大事な道になるでしょう。
逆に、経験も積めずコネクションもない状態で自分の夢を叶えようとしても、難しい側面があります。
年収300万円を切るような弁護士がいるのも、それだけの案件を確保できないためです。
勉強漬けの毎日を過ごしてようやく合格できるような司法試験の世界では、社会を知らずに苦しむ例も少なくありません。
ほかの仕事と掛け持ちで弁護士を続ける人もいます。
合格するまでに、生活の大半を勉強の時間が占めてしまうでしょう。
社会という経験も積めずに失敗するというケースもありますので、幅広い見識を身につけることが弁護士として必要です。
さいごに
弁護士の年収は、どのような法律事務所で働くのか、立地条件なども含め、その内容で大きな差が出てきます。
弁護士資格として法律系資格の頂点を極めるだけではなく、その先にどのような道があるのかを認識していかなければいけません。
司法試験が新しくなり多くの弁護士が生まれてきた中、必然的に条件の良い就職先の競争も激しくなったからです。
もし、しっかりと将来を見据え能力を高めていられるのであれば、夢のような年収を手にできるでしょう。
それだけの魅力もある仕事です。
最終更新日:2020年2月17日