アニメーターの年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当


アニメの制作に深く関わっている「アニメーター」と呼ばれるお仕事。

そんなアニメーターの給料は、一体どれくらいなのでしょうか。

この記事では、巷では超ブラックなんて呼ばれていたりするアニメーターの年収について詳しく解説していきます。

アニメーターの平均年収は約346万円が相場

アニメーション制作者 実態調査報告書2019によると、アニメーターの平均年収は346万円だと言われています。

2019年度の日本の平均年収が約441万円ですので、比較するとアニメーターの給料は100万円近く下回っていると言えます。

アニメーターと言っても作画監督から原画、動画と細かく分かれており、担当ポジションで給料も天と地ほどの差があります。

もちろん、新人アニメーターからベテランまでいるため、勤めているアニメ制作会社や自分自身の技術によっても給料の差は大きいです。

また、アニメ制作会社に勤めずともフリーランスとしてアニメーター活動している人も多く、その給料もバラバラなのが現状です。

アニメーターの年収・給料の構成要素

アニメーターの年収は、「基本給」「能力給」「歩合」「ボーナス」の構成になっている場合が多くあります。

2000年代初期までは、基本給なしの完全出来高制の給料形態をとるアニメ会社が多く、基本給を貰っているのは全体の40%ほどでした。

しかし、新人アニメーターなど一日に数百円しか稼げないアニメーターも多かったため、最近は基本給+歩合の形をとるアニメ会社が多いです。

基本給・能力給などはどうなっているの?

基本給と言っても、ほとんど稼げない新人アニメーターなどの最低保証の金額しか出ませんので、基本給として貰えるのは多くて月5万円ほどです。

2000年代初期はこの基本給が全くないアニメ会社がほとんどだったので、月収5万円以下という新人アニメーターも多くいました。

逆に能力の高い者は優遇され、大賞を受賞した者などにはアニメーター寮の無料貸し出しやアニメーター講演会などの待遇があります。

賞与(ボーナス)はどれくらい?

アニメ業界では有名大手企業でも正社員契約は少なく、契約社員、派遣社員、アルバイトとして業務委託の契約を結ぶケースが多くなっています。

基本的には正社員契約以外にはボーナスは出ないことが多いため、正社員契約することが必須条件となります。

金額は20代の場合は35万円~50万円程で、40歳を超えると65万円、70万円と年齢と共にボーナスの額も上がっていきます。

各種手当はどういったものがある?

アニメーターは基本フリーランスの契約が多いため、各種手当を受けるのにも正社員契約を結ぶ必要があります。

残業手当や深夜手当などが支給されるアニメ会社も少なく、正社員でなければ健康保険や年金なども自分自身で加入する必要があります。

しかし離職率も高く、若手アニメーター不足が懸念されており、近年は正社員契約をして若者を育てようという動きも見られます。

アニメーターの仕事内容別の年収を見る

1本のアニメ制作だけで、数百人という人が関わっているアニメ業界において、アニメ―ターにも様々なポジションがあります。

同じアニメーターの中でも、作画監督・原画・動画など、各ポジションによって給料も大きな差が出てきます。

動画マンの場合の年収

原画の中割の絵を描く、アニメーターの基本である動画マンの平均年収は、2019年度の統計で約125万円です。

動画マンというのは新人が最初に就くポジションで、動画1枚あたり約200円が相場です。

1日20枚~40枚が平均的な仕事量ですので、動画マンの給料を日給にすると4,000円から10,000円の換算となります。

しかし新人動画マンなど、1日1枚しか書けなかったという日には、アニメーターの日給200円なんてこともよくあります。

原画マンの場合の年収

原画マンはアニメ制作の作画における重要ポジションの一つで、アニメの動きのキーポイントとなる絵を描いていくポジションです。

2019年度の原画マンの平均年収は、原画担当が約334万円で、原画の補助をする第二原画担当になると約131万円になります。

平均して約3年から5年ほど動画マンを務めると、キャリアアップして原画を担当することができます。

動画マンと違い枚数単位ではなくカット単位での歩合ですので、各カットによって必要な原画の枚数も変わってくることが多いです。

相場としては1カットあたり3,000円~5,000円が一般的で、ベテラン原画マンは1日に15カット以上描ける人もいます。

作画監督の場合の年収

作画監督とは原画マンや動画マンをまとめる立場で、あがってきた数百枚という絵を違和感なく繋げて1本の映像にしていくポジションです。

各ポジションの細かい作画指示をしながら全体のペースなどを見渡して、スムーズな作画作業ができるように管理する重要な役割です。

劇場版などの規模の大きいアニメ制作の場合は、更に総作画監督とよばれるアニメシリーズ全話の作画を監督するポジションがあります。

2019年度版において作画監督の平均年収は約538万円で、総作画監督になると平均年収788万円になります。

作画監督も歩合制による報酬の場合がほとんどで、アニメ1話で25万円ほどと言われています。

そのアニメのターゲット層や予算、作画監督の人気度や過去作品の売り上げ、放映時間帯によっても変わってきます。

1話あたり50万円以上になる作画監督もいますし、劇場版になると1本あたり最低350万円になることもあります。

アニメーターは、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?

アニメーターとして働くならば、最終的に目指すべきはやはりアニメーターのトップでもある総作画監督です。

新人の内はまともに生活も送れないような超低給料ですが、スキルと経験を積み上げてることでキャリアアップすることは夢ではありません。

アニメ1話あたり50万円以上貰えるようになり、劇場版も任されるような総作画監督は年収1000万円以上の人もいます。

最高年収は5000万円という人もいますが、年収1000万円を超えるアニメーターは業界に10人もいないと言われています。

年収が高いアニメーターは、作画監督や総作画監督も超えて劇場版などの映画監督デビューをしている人も多いです。

スタジオジブリ創設者の宮崎駿も30代まではアニメーターとして活躍していましたが、今では映画監督に転向し、年収1億円を超える超大物になりました。

アニメーターはどういった勤務先だと年収が高くなるか?

アニメーターにも多くの就職口があり、大手から中小のアニメ会社、他にも専門スタジオやフリーランスなど働き方は様々です。

勤務先によって給料も大幅に変わってきますし、同じ勤務先でも契約体制によって差が出ることがあります。

専門的な学校や、独学ででもアニメーションの勉強をしていると、更に良い勤務先へ就職することも可能です。

大手アニメ制作会社で働く場合のアニメーターの年収

アニメーターの就職口として一番多いのがアニメ制作会社で、特に大手の制作会社は倍率が50倍100倍になるほどの人気です。

大手アニメ制作会社はテレビ局や映画会社と直接繋がっているケースがほとんどで、企画から放映まで全て会社内で行っています。

そのため有名アニメーターの下で働けるなどのメリットが多く、著名作品に関わると給料面でも他より高くなります。

年収が高い会社の一例としては、「東映アニメーション株式会社」が挙げられます。

東映アニメーションは年間300億円以上を売り上げる上場企業の超大手アニメ会社で、アニメーターの平均収入は毎年700万円以上で、給料面においては他のアニメ会社よりも高い水準を持っています。

中小プロダクションで働く場合のアニメーターの年収

大手アニメ制作会社とは違い、主にアニメ制作の部分だけを元請けで担当するのが中小プロダクションです。

複数話同時に作られる大手が制作しきれない分を、代わりに制作することが多いです。

従業員が10人以下の会社が多いですが、技術を見がいて大手入りしたい人にオススメな勤務先です。

中小プロダクションの中でも特に大きい会社として「京都アニメーション」が挙げられます。

低賃金が多い中小プロダクションの中でも、平均年収400万円と他の企業に比べると年収は高めになっています。

専門スタジオで働く場合のアニメーターの年収

大手アニメ制作会社も中小プロダクションも制作を全て自社で行いますが、専門的に元請けをする専門スタジオへの勤務もあります。

アニメーターであれば、作画の専門スタジオで勤務すれば様々な契約会社から作画の作業のみ受けることができます。

勉強も兼ねて作画に集中できるという面では、将来的に役立つ技術が得られることは間違いありません。

有名アニメ会社「京都アニメーション」の作画下請けとして長く関わっている「アニメ工房婆娑羅」などが、専門スタジオにあたります。

平均年収300万円台と、規模の小さい会社が多い専門スタジオの中では高給なのが特徴です。

フリーランスで働く場合のアニメーターの年収

アニメの制作会社やスタジオに所属せずに、個人で作画作業をするフリーランスの働き方もあります。

アニメ制作は詰め込んでスケジュールを組んでいるので、足りない部分を外注やフリーランスに依頼することが多々あります。

フリーランスの場合は自宅でコツコツと作業しているアニメーターも多く、時間を有効に活用できるというメリットがあります。

完全出来高制の給与体制が多いですが、1週間で500枚以上の絵を描き上げた、年収450万円を超えるフリーランスアニメーターも多く存在します。

アニメーターの年収の決まり方や、年収が高い人の条件・スキル・特徴は?

アニメーターは技術職でもあるので、スキルが高かったり経験値がある人は優遇されます。

持っているスキルによってはアニメーターとして任される仕事も違ってくるため、年収も大きく変わります。

それでは、アニメーターには一体どのようなスキルが必要なのでしょうか。

1.画力や空間認識能力がある

絵を描くアニメーターとしては当たり前ですが、画力がある人は優遇されます。

特にアニメーション専門学校や有名な美術大学出身の場合は、就職で大きな企業に入れる可能性も高まってきます。

そして、もう一つアニメーターとして必要になってくるスキルが、空間認識能力です。

キャラクターの位置や姿勢、形や全体の間隔バランスなどを理解できる人は必然的に画力も高いです。

二次元でいかに立体的に絵を描けるか、アニメになった際のバランスなどを感覚的に把握できる人はキャリアアップも非常に早いです。

2.デッサンやトレースなどの専門スキルがある

画力があるのはもちろん、アニメーターとしてはデッサンやトレースなどの技術も必要不可欠です。

絵で映像を動かすという仕事上、より滑らかに繋げられるかという点がアニメ制作では重要になってきます。

そういった意味では、画家では美しい背景美術は書けてもアニメーターにはなれないのです。

作った絵を繋げて不自然な動きにならないよう、前後の絵と見比べる力も必要になってきます。

3.コミュニケーション能力が高い

アニメーターは一人で黙々と作業を続けるイメージが強いですが、そんなことはありません。

一つのシーンを何十人というアニメーターたちが分担しながら創りあげていくのです。

原画マンはどんな絵を求めているのか、リテイクを受けてどこを修正すべきなのか、全てコミュニケーション能力が必須です。

特に納期前のバタバタとした社内では、お互いの作業を把握していかに迅速に対応し合えるかが肝になってきます。

お互いの絵の癖や特徴も理解し合ってスムーズな制作ができる人は、総作画監督まで登り詰めるのもそう遠い話ではありません。

4.とにかく我慢強さがある

どんなに有名美術大学を卒業してスキルが高い人でも、会社設立でもしない限りは新人研修から始まります。

大手のアニメ制作会社に入ったとしても、前述した通り新人の給料は雀の涙ほどなのです。

そこからどれだけ忍耐強く我慢して、キャリアアップのチャンスをつかめるかは自分次第です。

低賃金で過酷な環境に我慢できずに、1年も経たない内に辞めていってしまう若者が非常に多いのが現状です。

我慢強く継続して見つけたチャンスをもぎ取る力が、アニメーターに一番必要なスキルなのです。

5.集中力がある

我慢強さとも似たところがありますが、集中力というのはアニメーターにとっても大切です。

特に新人は、簡単な絵に何度もリテイクを受けることもあります。

そこで動揺せずに慎重に自身のダメなところを手直しすることができる人が、上に行ける人間です。

微妙に動くだけの細かい絵を何枚も何枚も同じクオリティーで描けるか、これも集中力があってこそできることです。

これからアニメーターになる人へのアドバイス

アニメーターの仕事は想像以上にキツいと言われています。

実際にアニメ―ターを辞めていく若者も多いですし、新人の内は生活をするのも大変です。

しかし、この職に就く人たちは、自分の好きなアニメや絵を仕事にし、多くのファンのために絵を描けるという喜びを原動力にしているのです。

技術職なので、きちんと腕を磨ていけば若い内から高いポジションにもキャリアアップできます。

自分の腕を信じて耐えて努力を重ねれば、すぐに才能を開花させることができるでしょう。

さいごに

いかがでしたか。

アニメ制作は理想と現実のギャップが激しい職業の一つです。

しかしその反面、アニメには世界中のファンの夢が詰まっています。

アニメーターという職業は、そんなファンの夢を叶えられる大事な職業です。

是非目指してもらえたら嬉しいです。

最終更新日:2020年6月9日

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