就職活動生にとって会社を決める重要な要素の一つとして「年収」が挙げられると思います。
会社四季報などに記載の「平均年収」を見ても職種別に記載がないものが多く、自分が一体どのくらいの年収を貰えるのか、気になる方も多いでしょう。
また、総合職と一般職、大卒と高卒など職種や最終学歴で年収が大きく変わるのも事実です。
ここでは、年収の構成要素や業種別での違いなど職種の違いも触れつつ、総合職の年収を徹底解説していきたいと思います。
目次
閉じる2020年現在、総合職の平均年収は約698万円となっています。
これは全産業規模(大企業~中小企業まで)を網羅して、且つ大卒で平均年齢40.5歳の算出結果となります。
毎年国税庁が発表している『平成30年分 民間給与実態統計調査』によると、日本の給与所得者の平均年収は441万円となっており、総合職との差は約257万円となっています。
また、約698万円は前述の通り全産業規模の総合職かつ大卒の平均年収となっているので、企業規模や最終学歴によっても多少変動していきます。
次に企業規模別、最終学歴別の総合職の平均年収を見てみましょう。
大企業(従業員1000人以上)の場合
中企業(従業員300~999人)の場合
小企業(従業員300人未満)の場合
上記の一覧比較で分かることは、年収について企業規模に比例して高くなるということです。
また、最終学歴が大卒か高卒かによって約60万円~130万円の年収格差が生じることも分かりました。
つまり、日系企業に就職する場合は最終学歴が大卒で大企業に就職することが、年収を多く貰える傾向が高いということになります。
総合職の年収は、「基本給」「仕事給」「各種手当」を合わせた月例賃金と、一般的に年2回支給される「賞与」で構成されていることが基本です。
ここでは年収の構成要素について紹介していきます。
基本給は、一般的には個人の能力・資格(役職)・経験・年齢(年齢加給とも)によって算出される給与のことで、月例基本賃金(時間外手当除く)に占める割合は3割~5割と言われます。
仕事給は、個人の仕事の業績に対する評価や、資格(役職)に対する仕事の評価によって算出される給与のことで、月例基本賃金(時間外手当除く)に占める割合は5割~7割と言われ、最近では基本給に比べ仕事給の方にウエイトを置く企業が増えてきています。
一般的に年間定期給与(月例賃金×12ヶ月分)と年間賞与の構成比は75:25となっており、おおよそ3:1の割合となっています。
つまり賞与が年収の4分の1程度を占めることになります。
企業規模別、最終学歴別の総合職の平均年間賞与額は以下の通りになります。
大企業(従業員1000人以上)の場合
中企業(従業員300~999人)の場合
小企業(従業員300人未満)の場合
上記の一覧比較にて、賞与についても企業規模や最終学歴で差が出ていることが分かります。
また、一部の業種などは年3回以上の賞与支給をする企業や直近の業績を直に反映するインセンティブ型の賞与もあり、賞与については年収に与える影響度合いは大きいことが分かります。
手当については、大きく「法律によって定められている手当」と「会社独自で定めている手当」に分類されます。
「法律によって定められている手当」ですが、労働基準法では会社は時間外労働・深夜労働・休日労働をさせた場合には「時間外手当」「深夜手当」「休日出勤手当」を支払う義務があります。
上記の手当はそれぞれが組み合わさることも可能です。
例えば時間外労働を深夜までやった場合、+50%割増し賃金が発生することになります。
一方で、会社独自で定めている手当の一例としては以下が挙げられます。
上記のように会社独自のものは様々な手当が存在します。
ただ、最近は夫婦共働きも増えてきたことから、扶養手当を廃止する企業は多くなってきています。
冒頭に述べた総合職・大卒の平均年収は約698万円という数字は全業種合わせた年収となっていますので、実際には業種によって差が生じています。
まず、詳しい業種を紹介する前に、製造業と非製造業という区分で比較してみましょう。
製造業
非製造業
製造業と非製造業の比較は上記になりますが、製造業の方が非製造業に比べて大卒で約90万円、高卒で約60万円高いことが分かります。
こうして比較してみると、やはり改めて日本という国は製造業が強い国だということも分かりますね。
次に業種別の総合職の年収を見ていきましょう。
初めに水産・食品業界の総合職平均年収を紹介します。
マルハニチロに代表される水産業界、JT・キリン・サントリー・明治に代表される食品業界、就職ランキングでは常に上位に来る業界ですが、平均年収はどのようになっているのでしょうか。
人気企業ランキング上位の常連である水産・食品業界ですが、全業種平均よりも高い年収となっております。
こういった年収の高さも人気企業の所以なのかもしれません。
次に繊維業界の総合職平均年収を紹介します。
東レ・帝人に代表される繊維業界。
UNIQLOのヒートテックなどのヒット商品のおかげで就職を希望する学生も増加傾向にありますが、平均年収は次の通りです。
繊維業界は全業種平均よりも下回る年収となっており、年収面のみで言えばその魅力はやや落ちてしまうのではないでしょうか。
次に化学業界の総合職平均年収を紹介します。
ノーベル賞受賞で話題となった旭化成・三菱、住友などの財閥系・花王など名だたる企業に代表される化学業界ですが、平均年収は以下の通りです。
化学業界は全業種平均よりも大きく上回る結果となっています。
また注目すべきは大卒だけでなく、高卒の年収も他業界に比べて高いということが特徴となっています。
次にゴム業界の総合職平均年収を紹介します。
ブリヂストン・住友ゴム工業などに代表されるゴム業界ですが、平均年収は以下の通りです。
ゴム業界は全業種平均よりも高い年収となっていますが、年収に占める賞与の割合は少し低い結果となっています。
逆を言えば、その分月例賃金が高いとも言えます。
次にガラス業界の総合職平均年収を紹介します。
個性的なCMで一躍有名となったAGCに代表されるガラス業界ですが、平均年収は以下の通りです。
ガラス業界は全業種平均よりも高い年収となっています。
次に鉄鋼業界の総合職平均年収を紹介します。
日本製鐵・JFEスチールなどに代表され、日本の基幹産業の一つである鉄鋼業界ですが、平均年収は以下の通りです。
鉄鋼業界は全業種平均よりも低い年収となっています。
次に輸送機器業界の総合職平均年収を紹介します。
トヨタ自動車・本田技研工業など日本の産業の代表格である輸送機器業界ですが、平均年収は以下の通りです。
輸送機器業界は全業種平均よりも高い年収となっています。
さすがは日本を代表する業界といったように、年収面も好待遇となっております。
次に電機業界の総合職平均年収を紹介します。
ソニー・パナソニックなどこちらも日本の産業の代表格である電機業界ですが、平均年収は以下の通りです。
電機業界は全業種平均よりも高い年収となっています。
こちらも輸送機器業界と同様に日本を代表する業界といったように、年収面も好待遇となっております。
次に金融・保険業界の総合職平均年収を紹介します。
メガバンク・地銀・生命保険などに代表される金融・保険業界ですが、平均年収は以下の通りです。
金融・保険業界は全業種平均よりも高い年収となっています。
特に、メガバンクは年収面については好待遇となっていますが、AI化が進展する世の中において金融・保険業界の好待遇がいつまで維持されるかはよく見極めた方が良さそうです。
次に陸運業界の総合職平均年収を紹介します。
JRなどの鉄道会社に代表される陸運業界ですが、平均年収は以下の通りです。
陸運業界は全業種平均よりも低い年収となっています。
意外な結果だと思う人は多いかもしれませんが、データにはJRだけでなく物流会社なども含まれているため、相対的に低くなっていると思われます。
ただ、特に人手不足問題が深刻な物流会社においては、今後は年収面の改善がなされると予想もできます。
次に情報・通信業界の総合職平均年収を紹介します。
NTT・KDDIに代表される情報・通信業界ですが、平均年収は以下の通りです。
情報・通信業界は全業種平均よりも高い年収となっています。
通信業界は安定的で人気が高い企業も多いです。
国内の通信インフラに関しては大きなシェア変動はなく、成長性はあまり見込めない業界ではありますが、情報についてはこれから伸びが期待できる業界でもあるため、相対的には今後も期待できる業界と言えます。
最後にサービス業界の総合職平均年収を紹介します。
日本郵政・旅行代理店など様々な有名企業がある業界ですが、平均年収は以下の通りです。
サービス業界は全業種平均と同等の年収となっています。
サービス業界は人気企業ランキング常連ですが、意外にもそこまで年収は高くないという結果でした。
前述の通り非製造業に比べて製造業の方が年収は高いということが業種別に見てもお分かり頂けたかと思います。
ただ、紹介した数字はあくまで“平均”ということは注意しておかなければなりません。
また、企業によっても公開しているデータの前提が違うことが多いのも事実です。
例えばある企業では役員・管理職を含めた全社員のデータ平均を示しているものもあれば、一方で役員・管理職を除いた社員のデータ平均を示している企業もあります。
平均年収を見るときは、こういったようにデータの前提が大きく異なる可能性があるということを理解して見なければなりませんので、ご注意ください。
ここまでは総合職の平均年収を解説してきましたが、気になるのはやはり平均年収というより、最高でどれくらいまで年収を上げることができるかということだと思います。
結論としては、「どの役職に就くか」ということで大きく変わります。
極端に言えば大企業の社長になればその分年収も高くなります。
日本で一番稼いでいるソフトバンク社長“孫正義”の年収は約90億円とも言われています。
やや現実離れした数字になりますが、大企業社長・役員の年間報酬(年収)は数千万円~数億円程度になっています。
ただ、社長や役員というのは一握りの社員だけがなることのできる役職でもあるため、現実的な役職前提で解説していきます。
企業の組織体制によって少し違いますが、一般的には部長職とは役員を除くと会社内の最高役職にあたります。
部長の平均年収は以下の通りになります。
大企業は平均年収で1000万円を超えています。
しかも記載の数字はあくまで平均となっており、標準偏差を11%程度と仮定すると大企業の部長職の年収は約1031万円~1286万円程度となります。
企業規模別の課長職の平均年収は上記の通りです。
大企業は平均年収で約900万円を超えています。
また部長の時と同様に標準偏差を11%程度と仮定すると、大企業の課長職の年収は約812万円~1013万円程度となります。
企業規模別の係長職の平均年収は上記の通りです。
大企業は平均年収で約700万円弱といったところです。
またこれまでと同様に標準偏差を11%程度と仮定すると、大企業の係長職の年収は約615万円~767万円程度となります。
いかがでしょうか。
大企業の部長職となれば大台の年収1000万円も見えてきます。
年収1000万円稼ぐことを目標としている人にとっては、大企業を選択した方が確率的にはチャンスが多いでしょう。
ただ注意して頂きたい点としては、部長職の平均年齢がいずれも50歳を超えているという点です。
多くの日系企業の場合、終身雇用・年功序列の賃金体系を取っていますので、年収1000万円を超えるのは会社人生終盤期になってからという見方もできます。
20代~30代で年収1000万円を目指したいという方には日系企業への就職はおすすめできません。
外資系や起業などをした方が可能性としては高くなるのも現実です。
ここまで、総合職の年収について企業規模別や業種別という観点で紹介してきました。
想像以上という方、思ったよりも少ないと思った方、それぞれいるのではないでしょうか。
最初にお伝えした通り、一般職や高卒に比べ、大卒で総合職に就くことが年収面では一番有利になります。
年収面だけで判断するならばそのような判断をするのがベストではありますが、そもそも大事なことは年収だけでなく、ワークライフバランスの取れた働き方であったり、やりがいの持てる仕事か否かであったり、様々な要素があります。
また、平均年収が高いということは企業のデータによっては時間外労働で発生した時間外手当も加算されているものもあり、長時間労働を強いられる可能性もあることは留意してください。
更に、今回お伝えした内容はあくまで現状の賃金体系前提の話になりますので、今後世の中が年功序列型の賃金体系ではなく成果報酬型の賃金体系にシフトしていけば、総合職の平均年収なども大きく変わってくることでしょう。
皆さんへのアドバイスとしては、年収が高いという理由だけで総合職を選ぶのではなく、自身の将来の目標(○○のような社会人になりたい)に対してそれを達成する手段としての総合職を選択するような考え方でいてほしいと思います。
仕事でもそうですが、目的と手段をきちんと理解できている人は自ずと評価も上がり、年収も高くなる傾向があると思います。
ぜひ世の中にあるランキングに惑わされずに、本質を見極めて自分自身の成長に資する環境がある企業を選んでいただけたら幸いです。
最終更新日:2020年5月20日
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