一般職の年収は、総合職の年収と比較した際に大きな差があります。
平均年収で比べても2倍以上の差が生じてしまいます。
なぜ一般職の年収は、総合職に比べて大きく下回ってしまうのでしょうか?
そのような疑問を解決するために、今回は一般職の年収について、年収の構成要素や業種別での違い、職種の違いなどに触れつつ、徹底解説していきたいと思います。
※この記事で扱う一般職の各種年収データについては、平均年齢が20代となっています。
これは一般職の多くが結婚・出産を機に退職や休職をしている人の割合が高いため、比較的若い年齢層の年収データとなっていることを前提に読んでください。
目次
閉じる2020年現在、一般職の平均年収は約324万円となっています。
これは全産業規模(大企業~中小企業まで)を網羅して、且つ短大卒で平均年齢25.0歳の算出結果となります。
一方、高卒で平均年齢23.3歳の場合、平均年収は約311万円と短大卒と比べて約13万円安い結果となっています。
次に企業規模別、最終学歴別の一般職の平均年収を見てみましょう。
大企業(従業員1000人以上)
中企業(従業員300~999人)
小企業(従業員300人未満)
企業規模や最終学歴の違いによって若干の年収差は生じますが、総合職と比べると企業規模や最終学歴によって平均年収の大きな差は生まれないということが分かります。
総合職の平均年収は約698万円と、一般職の平均年収のおおよそ2.2倍の水準となっています。
また国税庁がまとめた『平成30年分 民間給与実態統計調査』によると、日本の給与所得者の平均年収は441万円となっていることから、一般職の平均年収は世の中の平均年収よりも117万円も低くなっていることが分かります。
総合職に比べ一般職の平均年収がここまで低いのはなぜか?という疑問が出てくると思います。
実はこの差を明記している企業は多くありませんが、一般的に考えられている差は「転勤の有無」や「職務責任の範囲の違い」などが挙げられます。
そのようなことから、一般職は総合職に比べて昇給や昇格のペースも遅くなっているために年収に差がついていると言えます。
また、一般職の多くが女性であることが多く、女性特有のライフステージの変化(結婚・出産など)も年収が上がりにくい要因になっていると考えられます。
一般職の年収は、「基本給」「仕事給」「各種手当」を合わせた月例賃金と、一般的に年2回支給される「賞与」で構成されていることが基本です。
一般的に給料構成に関しては総合職・一般職ということに大きな違いはありませんが、「各種手当」で若干の差がつきます。
それでは年収の構成要素について紹介していきます。
基本給は一般的には個人の能力・資格(役職)・経験・年齢(年齢加給とも)によって算出される給与のことで、月例基本賃金(時間外手当除く)に占める割合は3割~5割と言われます。
仕事給は一般的には個人の仕事の業績に対する評価や資格(役職)に対する仕事の評価によって算出される給与のことで、月例基本賃金(時間外手当除く)に占める割合は5割~7割と言われ、最近では基本給に比べ仕事給の方にウエイトを置く企業が増えてきています。
一般職の給料は総合職と比べて仕事給に差が生じることが多いため、年収や給料が安く抑えられているというわけです。
一般職の年間定期給与(月例賃金×12ヶ月分)と年間賞与の構成比は80:20となっており、おおよそ4:1の割合となっています。
つまり賞与が年収の5分の1程度を占めることになります。
企業規模別、最終学歴別の一般職の平均年間賞与額は以下の通りになります。
大企業(従業員1000人以上)
中企業(従業員300人~999人)
小企業(従業員300人未満)
手当については、大きく「法律によって定められている手当」と「会社独自で定めている手当」に分類されます。
「法律によって定められている手当」ですが、労働基準法では会社は時間外労働・深夜労働・休日労働をさせた場合には「時間外手当」「深夜手当」「休日出勤手当」を支払う義務があります。
上記の手当はそれぞれが組み合わさることも可能です。
例えば、時間外労働を深夜までやった場合、+50%割増し賃金が発生することになります。
一方で、会社独自で定めている手当の一例としては以下が挙げられます。
ただし、総合職と違って一般職は上記全ての手当が支給されるとは限りません。
例えば住宅手当は、基本的には転勤の可能性がある総合職に支給されるケースが多くなっています。
一般職は基本的に勤務地が限定され、且つ自宅から通えることが採用条件になっていることが多いため、支給対象外となっています。
同様に役職手当や職種手当についても、ない場合が多いと考えて良いでしょう。
冒頭に述べた一般職・短大卒の平均年収が約324万円という数字は、全業種合わせた“正社員”の平均年収となっています。
雇用形態としては正社員の他にも契約社員や派遣社員といったものがあり、雇用形態によっても当然年収に差が生じてきます。
ここでは雇用形態別の平均年収の実態を詳しく解説していきます。
雇用形態が正社員の一般職の平均年収は次の通りです。
雇用形態が契約社員の一般職の平均年収は次の通りです。
正社員と契約社員との差は賞与があるかないかという点が大きな違いです。
雇用形態が派遣社員の一般職の平均年収は次の通りです。
派遣社員は時給制が多く、一般職の派遣の場合だと地域によって若干の差はありますが時給1,000円程度となっています。
但し、2020年4月に施行された同一労働同一賃金の考え方に基づいて、派遣社員の時給の中に賞与にあたる財源分を加味して支払う企業も増えてくることが考えられますので、派遣社員の待遇は少しずつ改善されてくるでしょう。
一般職での就職を検討している方で気になるのは、一般職であれば最高でどれくれいの年収まで目指せるのかという点だと思います。
結論としては「平均年収を大きく上回る可能性は低い」ということです。
理由としては大きく二つあります。
一つ目は、一般職は限定された職務範囲の仕事であることや転勤がないということで、総合職に比べて昇給や昇格のスピードが遅いという点です。
また二つ目は、女性の場合は結婚や出産などのライフステージの変化を機に退職するケースや、社会復帰したとしても時短勤務で働くケースが多くなり年収という面ではむしろ下がる傾向があります。
ただし、長く続けられれば一定の年収アップは可能です。
総合職や一般職に関わらず平等に上がる賃金として挙げられるのは年齢加給と言われるものです。
上げ幅は年齢によって異なりますが月額5,000円~10,000円程度、毎年加算されていくのでこの点において長く続けられた場合は一般職でも年収は上がっていくと言えます。
次に、業種別に見てどういった勤務先であれば年収が高くなるのか紹介していきます。
まず、詳しい業種別を紹介する前に、製造業と非製造業という区分で比較してみましょう。
製造業
非製造業
製造業と非製造業を比べると製造業の方が年収は高いことが分かります。
ただその差は短大卒で約14万円、高卒で約3万円とそこまで大きな差はありません。
更に上記データを比べた際に分かる点としては、製造業の方が賞与は高く、非製造業の方が月給は高いということも一つの特徴と言えるでしょう。
次に、業種別の一般職の年収を見ていきましょう。
初めに、水産・食品業界の一般職平均年収を紹介します。
マルハニチロに代表される水産業界、JT・キリン・サントリー・明治に代表される食品業界、就職ランキングでは常に上位に来る業界ですが、平均年収はどのようになっているのでしょうか。
水産・食品業界の一般職の平均年収は全業種平均年収よりも高く、給与水準としては高い業界だと言えます。
また水産・食品業界は女性の採用割合も多く、制度面も含めて働きやすい環境が整っている企業が多いことも特徴の一つです。
次に化学業界の一般職平均年収を紹介します。
ノーベル賞受賞で話題となった旭化成・三菱、住友などの財閥系・花王など名だたる企業に代表される化学業界ですが、平均年収は以下の通りです。
化学業界の給与水準は短大卒・高卒共に一般職の平均年収と同等の水準となっています。
次に電機業界の一般職平均年収を紹介します。
ソニー・パナソニックなどこちらも日本の産業の代表格である電機業界ですが、平均年収は以下の通りです。
電機業界の給与水準は短大卒・高卒共に一般職の平均年収より若干低い水準となっています。
次に金融・保険業界の一般職平均年収を紹介します。
メガバンク・地銀・生命保険などに代表される金融・保険業界ですが、平均年収は以下の通りです。
金融・保険業界は一般職の採用人数も他の業界比べても多く、受験する人も多いと思います。
ただし、給与水準は一般職の平均年収よりも低くなっている点については把握しておきましょう。
最後にサービス業界の一般職平均年収を紹介します。
日本郵政・旅行代理店など様々な有名企業がある業界ですが、平均年収は以下の通りです。
サービス業界は一般職の採用人数も多く人気の業界ですが、平均年収に関しても全業種平均よりかは高い水準となっています。
また短大卒・高卒とで平均年収差はほとんどないということも特徴の一つと言えます。
いかがでしょうか。
業種別の平均年収を紹介しましたが、想像通りの業界や意外だった業界もあったのではないでしょうか。
ただ全般的に言えるのは、一般職の平均年収は業種による大きな差は総合職に比べてほとんどないとないということです。
ここまで一般職の年収について企業規模別・雇用形態別・業種別という観点で紹介してきました。
現状、一般職の給与水準は決して高いものとは言えないのが現実です。
そういった年収面を比べて総合職にするか一般職にするかを決めかねている方も多いことでしょう。
確かにお金の面だけの判断であれば、比べようもありません。
これから一般職を目指す方へのアドバイスとしては、「どういった働き方が自分の人生を豊かにするのか」という判断軸で物事を考えてみてください。
また、ご自身の得意不得意もきちんと見極めた上で職種選択をしなければ、反って不幸になることもあります。
「ずっと仕事するつもりはないから」、「転勤が嫌だから」という理由だけで判断するのではなく、一般職という職種に何を求めるのかを考えた上で、自分に合った環境のある企業に入ってほしいと思います。
最終更新日:2020年5月21日
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